2016年04月17日

仮の城

テレビに映し出される警察の背中に、広島県とか高知県とか。
全国の警察が集まっているのだとすぐにわかる服を着ている。
自衛隊も、陸海空、全ての舞台が被災者への救出作業に当たっている。
給水車が走り、炊き出しが出ている。

セブンガールズという作品が、再再演の時に思わせたのがここだ。
東日本大震災からの復興と、敗戦からの復興が、微妙にリンクしていった。
終戦直後、日本の救出作業をしていたのは、占領軍だったけれど。
戦後復興と震災の復興はもちろん全く毛色が違うと言えるけれど、前に進むという意思は同じ。
去年の10月に演じた時に、ああ、今、演じる意味のある作品だとつくづく思った。

その映画化の製作期間にまさかの震災だった。
本格的な復興に入った時期にこの映画は公開されるのかもしれない。
2度の大きな震災から、復興して、東京五輪に繋がっていく姿は。
敗戦から復興して東京五輪に向かっていった日本人の精神性と重なる部分も出てくるだろうと思う。
そう思うと、この作品を製作する意義がまた一つ増えたんだと気付く。
思いを込めて、今、自分にやれることをする。
この映画製作がもしかしたら、誰かの小さな希望になるかもしれないのだから。
まだ撮影にも至っていないけれど、そういう思いも込めないと、おかしいよなって思う。
大きな大きなテーマをまた一つ背負うことになった。


ゼロから。
マイナスから。
スタートする。
その象徴がバラック街だ。

バラック街の写真をWEB検索すると、圧倒的に海外の写真が多く出てくる。
今もあるスラムだ。
そのスラムが日本にはもうわずかしか残っていないコトがどれほどすごいことか。
日本国内で生きていたら気付かない。
震災の時に避難した仮設住宅なんか、スラムに比べたら天国だ。
その仮設住宅からの転居もどんどん計画されて実行されている。
もちろん、まだまだ仮設住宅に住んでいる方もいらっしゃるけれど、一生、住むつもりの人なんか僅かなはずだ。
スラムは、一生、バラックで済むだろうと考えている人が殆どなのだから。
バラックから抜け出す。
仮設住宅から出ていく。
日本人は、それがまるで普通だよと、当たり前に、そこを目指す。

小学校を卒業して、中学に入る前の春休み。
おいらは、初めて海外旅行に行った。
・・・と言っても、豪華な旅行とかではない。
世界中を当時旅していた従兄弟が卒業記念に行ってみるか?と誘ってきた。
それで、二人で、ツアーとかではなく香港まで行ったのだ。
まだ中国返還前の香港だった。

ツアーではないから、自分で行きたい場所を探さなくちゃいけない。
ネットもなかったから、本屋で立ち読みを繰り返して、香港を調べた。
何が食べたいとか、何で遊びたいとか、そういうのは不思議と思いつかなかった。
どこを見たい、何を観たい、そればかりが頭をよぎった。

当時の九龍城も見たかった。
指輪をして歩いていたら指ごと持っていかれるよと言われるようなスラムだった。ほぼ迷宮だった。
さすがに、そこは従兄弟に止められたけれど。
警察が来た瞬間に無人になるような深夜のマーケットは行った。
屋台が所狭しと並んでいて、やかましくて、貧しかった。
おいらは、どういうわけか、中国にもいきたいと言ったようで。
香港からバスに乗って、中国にも入った。
国境では機関銃を持った軍人がいて、そこでパスポートを提出した。
香港からだから、南京の地方の中国をバスで回り、田舎や都市を巡った。
日本とは明らかに違う土塀の建物で、たまごをトンネルに座り込んで売っているおばさんがいた。
ミミズクを捕まえて、喜んでいるお兄さんがいた。
たった13歳のおいらは、たくさんのショックを受けて帰国した。

日本人というのはちょっとおかしな精神性を持っているとよくわかったのだと思う。
島国育ちの日本人は、世界の人々の中でも、非常に体裁を気にする民族だ。
世界中の人が日本の街を清潔な街と言うのが良く分かる。
見た目も大きく、気にしているから、ぼろぼろのバラック街なんて残るわけがない。
ただそれは、あくまでも体裁なのだと思う。
見た目は普通でも、ここから抜け出せない、ここで生きていくしかない。
そういう場所にいる人はこの日本にも案外多いんじゃないかなぁと思う。
心のスラムなんてかっこいい言い方をするつもりはないけれど。
学歴、性差、人種、障害、資産格差。
ありとあらゆる差別を、この国では、巧妙に消しながら生きていくことが普通だ。
それが、全て、実際に目で見えてしまう海外での体験は、その後のおいらの人生に影響を与えたと思う。

そこから、這い上がるのは、あとは、自分次第だぜ。
そういう厳しさも、この国の国民性は持ってる。

その代わり、そこまでは、協力をする。
誰かが手を差し伸べる。
これ以上ないほど、全体が規律をもって弱者に当たる。

テレビの影響画面には、全国の警察官が映ってる。
倒壊した家屋に人が残っていないか、一軒一軒声をかけている。
震災から何日も経っていないのに、あっという間に全国から集まってる。
まず、生活の基盤が持てるまでは、全員が助ける。
恐らくきっと、あの土砂崩れや地震で壊れた村も街も。
数年たてば、あっという間に新しい建築に溢れる。
それが、日本人の底力だ。
そしてきっと、仮設住宅も避難建物も姿を消す。

セブンガールズは、そんな仮設の建物で流れる物語だ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 15:35
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