2016年10月25日

クランクイン

まだ薄暗い空の下、自転車を飛ばすと、徐々に朝が広がっていった。

いよいよ待ちに待ったクランクインを迎えた。
ついに、今までの全ての準備が、実際に映像になっていくのだ。

テスト!と助監督が言えば、テスト!と、あちこちで声が上がる。
本番!と助監督が言えば、本番!と、あちこちで声が上がる。
こんな声が上がる日が来るなんて。

これは、もう、とっくに夢の中なのだ。
無我夢中とはこのことなのだ。

今、映画を撮影している。
当たり前だ。
その準備をしているのだから。
だとしても、これは、なんなのだろう?
いつもの仲間がパンパン小屋で芝居をして、それが撮影されていく。
モニタを観れば、そこはもうすでに映画の世界。

美術と衣装と、そして芝居がそこにあるだけで、世界観が出来ていく。
これは、魔法なんじゃないだろうか?
映画の世界で働いている人にとっては既に日常なのかなぁ?

何よりも驚いたのは、スタッフワーク。
セブンガールズスタッフジャンパーを着たスタッフさんが右に左に動く。
照明のチェンジ、撮影部のチェンジ、そのスタッフワークの速さだ。
一度なんか、室内から室外にカメラが移動するときに、走っていた。
信じられないスピードで、スタッフワークがきびきびと進んでいく。
他の映像現場でも、ここまで早いというのは見たことがない。
今回のスケジュールをわかっているからこそ、最短でやってくれている。

結果的に、スケジュールを巻いた。

巻くということ自体も、助監督さんが驚いていた。
通常、その日の撮影スケジュール以外のシーンを撮影したいとなれば、色々と準備が必要だ。
けれど、誰も何も言わずに、明後日の予定のここを次にやらせてくださいと言える現場なんてありえないそうだ。
助監督さんに、欲を出してもう1シーンやるべきだと思いますか?と聞かれて。
おいらは、やりましょう!と即答していた。
その即答出来るのも、スタッフワークを見ていたからこそだ。

おいらたちは、プロの俳優だと思っている。
俳優をやって、飯を食えているのがプロだという人もいるけれど。
おいらの基準はそういうところにない。
おいらたちは、お客様からお金を頂戴して芝居をしているのだ。
飯云々ではなく、芝居を売っているのだ。
だからこそ、おいらたちは、プロでなければならない。
そう思って今日までやってきた。
だから、現場で急なスケジュールの変更があろうが、当然、即答でやると答えるのだ。
そんなこと当たり前だろ?と思っているのだ。

だからこそ、プロの仕事をするスタッフさんたちに。
プロの俳優として答える義務がある。
最短の時間で、気持ちもすべてピークに持っていく。
これは、きっと、覚悟の話だ。

おいらは、とにかく、楽しかった。
映像の現場で芝居を思う存分することが、楽しかった。
気持ちが動いて、それが、記録に残っていることが夢のようだった。
こんなに楽しかったか。映像。
舞台もとんでもなく楽しいんだけどな。
映像も、負けずに楽しいんだなぁ。

わくわくする。
なんというか、わくわくする。

早く、動く映像を皆様に見せたい。
おいらは、モニタの後ろで思った。
カメラの向こうには、モニタがあって、スクリーンがあって、皆様がいる。
おいらたちが、プロだと自負できるのは、皆様のおかげなんだ。
届けないといけないんだ。
映像はパーツで進んでいくけれど。
そういう気持ちはパーツではなくて、継続してそこにある。

明日も早い。
今から、楽しみでしょうがない。
あそこは、もう、おいらにとっては、家のような空間になってきた。
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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 00:16| Comment(0) | 撮影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月26日

撮影二日目

ロケ地まで自転車を飛ばす。
空は曇天。
午後過ぎたあたりからポツポツ降り始めた。
撮影に支障をきたすほどではなくて良かったけれど。
自転車は置いていくしかなかった。
雨で風邪をひいて迷惑をかけるわけにもいかない。
翌日は快晴の天気予報だ。暑くなるなんて噂もある。

今日も順調に進んだ。
予定していたシーン数よりも多く撮影できた。
明日やる予定のシーン数は予定よりずっと少なくなった。
このまま巻いていけば・・・そう思える。

今日もモニタを何度か覗いたけれど、本当に素晴らしい映像だった。
そこはまさに昭和で、そこに人が生きていた。
これを繋げて、整音して、編集して、映画になるのか。
今、その最高の素材たちが集まりつつある。

予定の変更もあるから2種類の衣装を重ね着して待機していた。
結局、1種類も当たらずに、違う衣装に着替えることになったけどね。
でも、役者側でもこのスタッフワークのテンポを崩したくない。
仕事にはやはりテンポというものがあって、それを役者たちは肌で感じている。
最高の演技を最高のテンポで出していく。
それが、これからの日々の目標になっていく。
だから、事前準備だって必要だと思っている。

今日も最後の撮影はおいらのシーンになった。
関係ない俳優たちは既に帰宅して、スタッフさんとおいらと相手役だけの時間。
誰からも、小野寺君、デラサン、と話しかけられない成瀬になれる時間。
スタッフさんも、成瀬さんと呼んでくれる時間。
自分の中にすぅっと成瀬がおりてきて、目の前の真知を見た。
相も変わらず、ばつが悪そうに、ヘタクソな笑顔で真知を見た。
やっぱり、真知にしか見えない。
そんな時間が、なんというか、愛おしい。
もう二度とそのシーンを演じる時間はやってこないけれど。
あの時に動いたおいらの感情は、カメラに残っている。
そのことが嬉しい。
舞台と違う映像の楽しみ方をおいらは、どんどん感じている。
もっと、楽しみたい。
明日はもっともっとだ。

もっとプロの俳優でありたい。
スタッフさんが信頼するような俳優だ。
この人のシーンは大丈夫。そう思われたい。
もっと、自分の目指す場所を高く設定しないとだ。
そして、撮りたいと思われるような俳優になるんだ。
魅力的な俳優になるんだ。

こんな最高の環境、どこにもないんだ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 00:00| Comment(0) | 撮影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月27日

撮影三日目

前日の雨で自転車を置いて行ったから、初めて電車とバスで向かう。
当たり前だけど体力的には断然こちらのほうが楽なのだと知る。
とは言え、自転車があれば、最後の交通手段に迷うこともない。
可能な限り、自転車で移動になるだろう。

撮影三日目ともなれば、すでに移動から撮影まで、慣れが入ってくる。
当然、慣れには良い部分も悪い部分もある。
舞台をいつもやっているから、そこの部分はすでに考えてあった。
舞台は、やはり慣れていく。
初日は緊張して、二日目に弛緩することを、二落ちと言ったりする。
張り詰めた何かがいつの間にかなくなってしまうのだ。
けれど、お客様にとっては、基本的には常に一回目の観劇だ。
クオリティが著しく下がるようでは、申し訳が立たない。
ただ、良い面もある。
舞台の構造を理解し、セットの構造を理解し、段取りを理解していくことだ。
初日に迷って、わからなくなったことまで、全て、体に落ちてくる。
どこにいれば、本番に映り込まないとか、次のシーンの準備だとか、一段、クオリティが上がる。

おいらは、2シーン先まで考えて行動している。
その上で、スケジュールの変更もありえると想定していた。
だから、小道具の配置など、事前にチェックだけしておいた。
狙いやアングルも、少しずつ見えてきて、あ、ここは動かすな・・・というのを直感できるようになってきた。
自分の出番の前にはセット裏に待機して、前のシーンが終わると同時に板付きする。
とにかく、一歩先を読むことで、間をあけない。
そういう細かい努力がないと、この短い期間での撮影は厳しい。

疲れがピークに達するであろう、本日の夕食。
劇団前方公演墳より、ケータリングの差し入れを入れた。
先週から予約しておいた「もうやんカレー」だ。
なんと、もうやんカレーが、出張してきて店を開いてくださる。
それも、カレー2種類、タンドリーチキン、サラダ、お米はキヌア五分づき、牛筋、じゃがいもなどなど。
ランチの食べ放題メニューがそのまま現場に出現する。
クラウドファンディングに書いたように、基本的に劇団員は手弁当で撮影に挑んでいる。
そのままでは、いつまでもスタッフさんと食事を共にする機会がない。
だから、1度だけでも、差し入れを入れる。
もちろん、映画の予算ではなく、劇団員で集めたお金でだ。

もうやんカレーは劇団にとっては思い出の深い場所だ。
最初の稽古場のそばに、まだそこまで有名じゃないもうやんカレーはあった。
だから、劇団員の数名は何度も通っている。
釣りが好きな連中の最後のしめは決まってもうやんカレーだった。
歴史があり、思い出があり、温かいケータリング。
あとは、皆が喜んでくれるだろうか?という心配だけだったけれど。
思いのほか、皆様に楽しんでいただけた。
スタッフさんもだし、出演者もあたたかい食べ物に飛びついた。
出演者からの差し入れなのに、出演者のほうが喜んでいるようでさえあった。
製作スタッフさんは、つねに映像の現場にいるような方なのに。
もうやんカレーの出張なんてまったく知らなかったという。
これは、すごいです。たぶん、僕、どっかで使わせてもらいます!と言われる。
あまり、もうやんのケータリングはまだ知られていないのかもしれない。
きちんと、探して、みつけて良かったなぁと思う。
現場の空気が、良くなったり、テンションが上がるのであれば、感無量だ。

食べ終わってから、撮影再開。
布団で寝ているシーンは、女優たちが実に楽しそうだった。
このシーンならずっと撮影を続けられるなんて言っている。
劇団員の女優陣で温泉でもいったら、あんな感じなのだろうか?
もちろん、そんな機会は今までに一度もない。
18年間、一度もない。

そして、本日の最後の撮影もやはりおいらだった。
三日連続で、最後の撮影。
現場から、必要のない役者が順番に帰って行って、最後は3人だけ残る。
いつものように、にぎやかな空間がスタッフさんの声だけになっていた。
逆に言えばじっくりと撮影できる。

ナレーションをオンリーで録音した。
監督のすぐ隣で。
監督は、何度も音楽のレコーディング現場でディレクションもしている。
目を閉じて集中して、おいらのナレーションをチェックした。
的確な指示が入る。
それにすぐに答える。
更に入る。
また、すぐに修正する。
声だけの収録だから、誰もが黙って静かな空間に、おいらの声だけが響く。
指示があって、その場で変更できるかどうか、まるで試されているようだけれど。
別に試されているとも感じずに、監督を信じて、自分なりに一発回答を出したつもり。
久々のデビッド・宮原との録音作業に、しばし、感触を思い出す。

ロケ地を出た時間はすでに22時。
前日に置いて行った自転車にまたがり、ひきつるふくらはぎをかばいながら長い坂を下りていく。

ここで撮影できる時間はもう限られている。
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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 05:40| Comment(0) | 撮影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月28日

撮影四日目

撮影四日目はクライマックスの連続。
様々な登場人物のピークの撮影を終了していった。
残すところは、山場はあと一つ。そして、細かいシーンだ。

完全ではないけれど、ほぼほぼのクライマックスを本日目指している。
書かれているものを全て撮影するのは難しいんじゃないかと思えるほどの数。
でも、これは数が多いだけで、短いシーンが連続する。
全員が撮影現場に集中していれば、あっという間に進んでいくだろう。

昼には、美術監督の杉本さんから差し入れがあったり。
夕食に、製作スタッフからの粋な現場製作豚汁が出たり。
温かさを感じながら、この撮影は続いています。

立ち回りの撮影も続きました。
舞台とは違って、血糊を使ったり、つなぎが難しかったり。
男どもは、エキサイトしていました。
何がどう映っていたのか、実際の映像をみないとわかりませんが・・・。
というのも、映像チェックなどはしないまま進んでいます。
監督は音を聞き、チェックモニタをにらんでOKを出しています。

ちなみに2カメでの撮影であり、サブカメラまでは確認できません。
サブに、どんな映像が隠れているのかは、編集までのお楽しみになっている。

さて・・・
現代シーン以外は本日中にクランクアップを目指しています。
特に日中のシーンがあるので、日中が勝負です。
衣装を着替えるのも、早替えでの対応になるでしょう。

総力戦。
全員で戦うつもりで挑みます。

パンパンたちは、着替えの段取りなども多いので、なるべく何もやらせずに。
出演しているやつには、なるべく集中させてあげて。
スタッフ仕事をしているけれど、本分は役者だからです。
役者にものを頼んでしまうけれど、おいらは、全員のことを役者としてみている。
それだけは、徹底しようと思っていて。
役者たちがやりやすいほう、思っているほうに進めばと狙うばかりです。

さあ、目指せ、クランクアップ!
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 05:27| Comment(0) | 撮影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月29日

撮影5日目

このロケ地で撮影する分の全てを撮影し終えた。
その全てが規格外。
信じられない奇跡のような撮影だった。

スタッフさんの誰もが、シナリオの分量・・・厚みに絶句した。
そのシナリオのページ数を見るだけで、通常の倍のページ数があると口にした。
さらにその1ページ当たりの行数が通常の映画の倍あるから、結果的に4倍ということだ。
それを1か月とか2か月とか撮影期間があるわけではなく。
たったの5日で撮影するというのだから、本来はありえないだろうといわれる内容だ。
・・・というか、ほぼ全てのスタッフさんが、たぶん、無理なんだろうなと思っていた。

それをほぼほぼ完走した。
5日で、撮れ高が150分以上。シーン数にして100シーン以上。
そうカット数に関してはもう、まったくわからないほどの数。
これを映像の世界の人に話せば、ほとんどの人が信じないのではないだろうか。
そもそも、誰もが無理だろうと思っていた撮影だ。

それをするためのオーガナイズをしていったおいらは、本当にドキドキしていた。
こうすれば出来ないはずはないという、予測のもとに計画を進めていった。
監督から撮影方法のアイデアが出て、それでも不可能な分量をどうこなしていくのか。
総力戦で挑むしかない。
その中でも、自分が先頭をきって、やれることをやっていくしかない。
走り回って、確認して、チェックして、伝達して。
そして、芝居がぶれないように、今、この人には何も頼まないというのを決めて。
それでも、このスケジュールの完走をするのは厳しいと予測されていたはずだ。

それがなぜ出来たのか。
やっぱり、スタッフさんたちのチームワークだと思う。
縦横無尽に走り、きびきびとセッティングしては撮影していく。
映像の現場には職人がたくさんいた。
職人たちが仕事をしやすいように・・・それが今回おいらが目指したことだ。

ラストカット。
OKの言葉が出て、スタッフさんにありがとうございました!と自然に出てきた。
そして、涙ぐんでしまった。
あのパンパン小屋の裏を走り回る日々が終わった瞬間だった。
この予算、この期間、この登場人物の数、このシナリオの分量。
それなのに、クオリティを下げることはしない。
そういう戦いだった。

加藤Pが撮影現場に来ていて、泣けたなんていう。
役者が布団に入って撮影本番をしていたら。
カット、OKの言葉と同時に自分で布団をたたみ始める。
同時に、次の俳優がスタンバイを初めて、手の空いている俳優が次のシーンの美術の化粧を始める。
そんな光景を見たことがない、ありえないと口にした。
しかも、それが連続していくのだ。
次から次へとシーンが進んでいく。
スタッフさんのセッティングの間に、出来ることを全てやっていく。
おいらは、でもそれは、出来上がった映画には映らない裏ですもんね・・・と言うと。
いや、映画は絶対に現場の雰囲気が出ますから。
そう、言ってくださった。

この映画は、情熱で出来ている。

いよいよあのパンパン小屋を解体する日がやってきた。
なんにもないただのスペースに戻ってしまう。
少しだけ寂しいけれど、あのパンパン小屋は映画の中にだけ残ればいい。
プロデューサーはもったいないから、なんとか残せないかと言ってくださったけれど。
残す場所なんかない。
あの鏡台も、あの茶箪笥も、あの暖簾も、あの畳も。
まるでうたかたの夢のように消えていく。

今まで何度も感じてきたことだ。
劇場にセットを組んでは、壊していく。捨てていく。
それでも、この短いながらも濃い日々をすごしたパンパン小屋を壊すのは、感慨深いだろうなぁ。

絵空事。

そうさ。
こんなのは、絵空事さ。

楽しい楽しい絵空事さ。
夢みたいな妄想さ。

それを、実現しただけのことさ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 08:31| Comment(0) | 撮影 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする