自分はセブンガールズの公開の頃、映画の宣伝について勉強をした。
とにかく公開に向けて、興味を持つようなそんなことを色々と仕掛けていく。
どこの層に届けるのかきちんと決めて、そこに正面から向かう。
メディアを使用したり、話題性を自分から創っていったり。
そのために必要なリリースはどんな文面で、どんな資料が必要なのかまで。
徹底的に調べて、色々な方面に連絡して、そして結局は玉砕することばかりだった。
それはそれで間違いだったとは思っていない。
それを知っておくこと、それをすることは大事なことだ。
ただ商業に乗っている映画と、そもそも根本的にセブンガールズは違うのだとつくづく思った。
勉強して理解したことを実行したところで、大きな映画の話題性には太刀打ちがつかない。
キャスト発表第二弾!がニュースになり、有償でのSNS配信の予告編は数十万再生される。
それはやり続けるけれど、そこに固執していたら、このまま上映が終わると危機感があった。
だとしたらもうその向こう側にあるのはたった一つだった。
勉強したこと以上に自分の中にあるもの、元々よく知っているもの。
劇団運営をしてきて、バンドもやってきて、今日まで蓄積された自分たちの持っているもの。
それをもう前面に出していくしかないんじゃないのかなぁと思っていた。
小さな劇団や、バンドが出来ることはたった一つ。
「感謝」しかない。
なんだそれ?と思われるかもしれない。
大きな映画だって、感謝を大切にしているはずだ。
けれど、その距離感の違い。
目の前のお客様に何か持って帰って欲しい、楽しんで欲しい。
そうやって続けてきた自分の経験値から来る「感謝」はもっとずっと壁が薄い。
ある意味ではSNSが発展していて、距離感が変わってきたという追い風もある。
自分たちが出来るのはもう「感謝」以外にないじゃないかと思っていた。
でももちろんただ感謝したところで、それは伝わるものじゃない。
伝わるかもしれないけれど、わかりづらいし、そこから先がない。
じゃあ、どうやって感謝すればいいのかな?というのが自分の最初の考え方だった。
「映画の中の1シーンを衣装を着て生で再現する」
これを伝えた時、正直、反対意見も多かった。
プロデューサーからは衣装だけでもいい気がしますとアドバイスがあった。
監督は映画のクオリティに及ばないならマイナスにならないか?と言われた。
実際にお願いする役者にも、あの時の自分になるのは無理だとかなり言われた。
正直に言えば、全部、そう言われるんだろうなぁと最初から思ってたことばかりだった。
普通に登壇して、普通に話をすればいいじゃないかというのが念頭にあるのだから。
でも自分の中では追い込んでいた。
UPLINK渋谷アンコール上映、決まっているのは1週間のみ。
自分たちの持っているものは「感謝」のみ。
その「感謝」を形として目に見える形に出来なければ、1週間で終わるだろうと確信していた。
最終的に、監督にはどうしても再現がダメなら自分は延長できると言い切れない、やれば延長できる!と言い切った。
それでもやめろというなら、自分はもう何も考えないですしなんか別の事考えてくださいと伝えた。
なぜならその時点で自分以上にどうやって延長していくかイメージして考え尽くしている人はいないと思ってたからだ。
そして1週間しか決まっていなかったけれど、絶対に延長できるとそこに至る過程で自信を持っていた。
少なくても映画館の年末イベントが始まるまでは。
当然、皆、お客様に感謝していた。
でもそれだけじゃ、何かが足りなかった。
それを形にしたら。
きっと、それに応えてくださるお客様が現れる。
何か一つプレゼントをすれば。
それをきっと受け取ってくださるお客様がいるはずだ。
感謝を形にして、それを受け取ってくださる方がいて、それが伝わっていく。
まるで大手の映画に出来るわけがない宣伝の形。
自分たちが舞台で、バンドで、やり続けてきた当たり前のお客様とのやりとり。
その予想が確信に変わったから、いくつもの反対意見を押し切って決めた。
そういう強引なことをすれば自分の信頼が薄くなるし、嫌がられるかもしれなかったけれど。
そんなことよりも上映期間を1日でも長く続けられる方が自分にも皆にも大事なんだと信じていた。
自分が嫌われる分には別になんの問題もない。
自分はそういう覚悟をした時に、臆するような人間ではありたくない。
危ない橋だと思う。
いくら考え尽くしたところで、映画館側の都合で上映が終わることだってあるのだから。
本当に自分のイメージ通りに行くかどうかなんてわからない事ばかりなのだから。
そうやって初日を迎えて。
映画の1シーンの再現を衣装を着て演じた。
舞台俳優だからお客様に芝居を届けることをずっとやってきた。
形になった。
これが伝われば、これを受け取ってくださる方がいれば。
間違いなく他のどんな映画の宣伝よりも強い強いメッセージになると信じていた。
その日の夜。
舞台挨拶で演じた再現シーンが、SNSに動画でアップされた。
目の前で役者さんが生で芝居をしてくれた!と書かれていた。
もちろん、大きな話題になんかならないけれど。
セブンガールズという映画の元々持っているあたたかさが「感謝」という形で世に出たと思った。
実際にそれを観て足を運んでくださった方がどれぐらいいるのかはわからない。
けれど、そこに暖かい雰囲気を感じてくださった方は間違いなくたくさんいらっしゃった。
見てくれ!という強いメッセージではなく、観に来てくださった方に感謝するというメッセージ。
自分たちに残された、最後の宣伝できるポイントだった。
初日のお客様からの一言一言で。
監督の考え方も変わった。
自分からあのシーンが良いんじゃないか?と提案までするようになった。
監督も、舞台挨拶でありながら、お客様と演者の距離感がぐっと近寄ったことを感じたのだと思う。
再現に音楽をかけたい、ピアノを弾いて欲しい、そうやってどんどんプレゼントを良くしていった。
そして、お客様も連日のようにSNSで、たくさんたくさん応えてくださった。
信じられるだろうか?
自分たちのような小さな映画が年末のイベントまで3週間もの間、あのUPLINK渋谷で上映出来たんだよ。
まるで当たり前のことじゃない。
パルムドールの作品や、カメ止め!、話題作と3週間も並んでいたのだから。
知っている人ほど・・・それこそ配給さんやプロデューサーさん・・・ほど、3週間上映出来る事はありえないと口にした。
連日、新しいお客様との出会いがあった。
連日、感謝を伝えて、繰り返し来てくださる方が、一人ずつ増えていった。
さすがに三週間目には少しお客様の数は減ってきたけれど、最終の二日間はもう一度来場者数が増えていった。
年末のイベントがなければ、ひょっとしたらもう少し上映出来たんじゃないかなんて言われたりもした。
UPLINK渋谷での三週間は大きな大きな成果になった。
間違いなく、その後の上映が決まったのはこの期間上映出来たからだ。
同時にそれだけの期間上映したことで、知名度も上がっていったからだ。
これも奇跡なんだって思っている。
この奇跡の一番素晴らしいことは。
これが起きたことは、誰の手柄でもなかったという事だ。
皆が元々持っていた「感謝」の気持ちを最大の効果が出るようにしたわけで。
そして来場してくださったお客様がたくさんたくさん「応えて」くれたわけで。
そんなやり取りに、UPLINKさんが粋な計らいをし続けてくださったわけで。
その連鎖は誰のおかげでもなく、シンプルにあたたかな交流そのものだった。
お見送りでは、いつだって、たくさんの笑顔がロビーに溢れることになった。
それ以降の上映ではもう一度、舞台挨拶はトークに戻したけれど。
この3週間がベースになったと思う。
舞台挨拶に立つ役者たちは、皆、感謝の形を用意した。
よくある、自分はこんなことをしました!というトークだけで終わることはなかった。
自分が目立ちたい!みたいなトークももちろんなかった。
来てくださった方が、何か一つだけでも持って帰ってもらえるように。
小さな笑顔や、小さな希望をそっと手渡せるように。
「感謝」することが一番の自分たちのスタイルになった。
そりゃあさ。
大手の映画には、「感謝」という武器だけでは太刀打ちできないよ。
全国上映してさ、たくさんの人に届けたいのに。
広告代理店もなければ、資本もないのだから。
個人商店が巨大企業に挑めるわけがないのだ。
でもさ、愛されるパン屋であればいいじゃないかって、おいらは思ったんだよ。
その噂が全国に広がる可能性だって、なくはないって、おいらは思ったんだよ。
今、上映期間が終わって。
終了とアナウンスをしているのに。
たくさんのたくさんのお客様が再上映希望を色々な場所でしてくださっている。
それは通常の映画作品のファンというものとももしかしたら違うのかもしれない。
自分だってもう一度スクリーンで観たい作品はあるけれど。
こんな風に熱烈に応援するなんてことは考えられない。
自分の中でこれはもう映画を越えてしまっているんじゃないかという気すらしている。
セブンガールズという作品の持つ暖かさが、そのままお客様と関係者の間の暖かさになっている。
こんなに胸を張れることはないよ。
こんなに人間らしい映画上映なんかないよ。
自分たちからの感謝が止まることはない。
きっといつまでも感謝する。
例え、このBLOGが終了したとしてもだ。
いよいよ最終章の振り返りも、あとわずかになった。
どうにもこうにも感謝してもし足りない自分は一体どうしたらいいのだろう?
映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
上映期間終了 皆様ご来場ありがとうございました。
■SNS
Twitter:https://twitter.com/7girlsmovie
紹介記事
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