下北沢トリウッド最終日
ああ、これで現在発表できる上映が終わってしまう。
そういう日だった。
けれど実は数日前に確認をしていた。
最終日までに何か告知できることとかないでしょうか?と。
返ってきた答えは「残念ながら」という言葉だった。
もちろん、当たっている映画館があることは知っていたけれど。
時間がかかりそうだというのもわかっていた。
その時、自分の返信は
「金曜ギリギリまで待ちます」だった。
だから今日一日。
何回、メールの送受信ボタンを押したかわからない。
LINEを何度開いてみたかわからない。
スマフォか短く震えるたびに、即確認をした。
それでもやっぱり何の連絡も来なかった。
映画館には当たっているのだから後日発表だっていいのかもしれない。
それでも最終日に応援してくださる方々に何かを届けたかった。
いつものように下北沢に向かう。
スマフォを握りしめて。
打ち合わせをしている間も実は心ここにあらずだった。
例えギリギリでも連絡があれば、発表方法をその場で決めなくてはいけない。
それでもやっぱり何もなかった。
下北沢トリウッドに到着した時。
トリウッドの担当者様が、配給の担当さんが客席に来ていると教えてくださった。
一瞬で心臓が破裂しそうになった。
何かあるかもしれない。ないかもしれない。
わからないけれど、わからないけれど。
配給さんが来ていることを監督に伝えようか悩んで、何も言えなくなった。
期待させて何もない可能性だってある。
勝手に自分が思い込んでいるだけだからだ。
最終日の登壇は笑顔で進んだ。
とても最終日とは思えないような明るさを持っていた。
しんみりなんかしたくないという自分たちの思いだ。
それでいいと思っていた。
カメラを構える自分のすぐそばに配給の担当さんがいたけれど、目を合わせてくれなかった。
なんで目を合わせてくれないのだろう?
どんな意味があるだろう?
そんな疑問を打ち消しながらシャッターを押し続けた。
スマフォを最後に確認してから、時間の合図を送る。
30分もゆっくりと話せるイベントは下北沢トリウッドならではだった。
その最後の数分が迫っていたからだ。
3人が立ち上がろうとしたとき、ふいに影が動いた。
配給担当さんがそのまま客席通路を進んで監督にメモを渡した。
横浜ジャックアンドベティ、5月上映決定が発表された。
登壇メンバーも、お客様も、一斉に喜んだ。
見学に来ていた女優は既に泣きじゃくっていた。
おめでとう!といういくつもの声が重なっていた。
終わらなかった。
セブンガールズはまだ終わらなかった。
平成が終わった後も上映が続くとわかった。
喧噪の中、いつ決まったのか聞きに行った。
決定して情報解禁がOKとなったのが当日の夕方だった。
いつも自分に最初に連絡が来るから、今回は最初に監督にという配給さんとプロデューサーのサプライズだった。
ロビーは活気にあふれていた。
お客様も出演者も、誰もが笑顔で、誰もがおめでとう、ありがとうと口にしていた。
横浜に近いお客様は目に光るものがあった。
下北沢の打ち上げに行く。
配給の担当さんが今宵のスターだ。
この担当さんはセブンガールズを心から応援してくださっている。
映画館で何度も観ていただいているし、プライベートでご友人にセブンガールズを勧めてくださったりもする。
下北沢トリウッドが決まったのも、この担当さんの思いからだった。
実際に配給を担当してくださる方がここまで作品を愛してくださるのはミラクルだ。
感謝という言葉では表現が出来ない。
仕事という範囲の外でセブンガールズに時間をかけてくださっている。
多くのお客様にも言われたけれど。
登壇した金子透にも聞かれた。
「小野寺も知らなかったの?」
知らなかったよ。信じていたけれど。本当にさっき決まったんだってよ。
そう答えた。
そこでお客様に聞かれたときは、すごいですねぇ!と感心されたのだけれど。
金子透の返しは違っていた。
「お前は諦めないなぁ」
今日までに何かが決定する可能性なんか数%だったかもしれない。
それでも自分は確かに幕が閉じる瞬間までスマフォをポケットの中で握りしめていた。
自分が作品の力を信じないでどうする?
監督も出演者も自分のことになると、大丈夫か?と自問自答をする。
表現に関わっている人はそんなものだ。
だからこそ自分だけは、この作品の力を信じ切る。
そう決めている。
程よく美酒に酔って帰りの電車に乗る。
金曜の夜。
ラッシュアワーのようにぎゅうぎゅうの満員だった。
ふと一人になった時、急に泣けてきた。
暖かくなった頃。
あのTシャツを着たお客様が溢れている客席を想像してしまったからだ。
帰宅してHPやSNSの更新をした。
下北沢トリウッドの上映がこうして終映した。
足を運んでくださった皆様、下北沢トリウッド様、ファッションコラボをしてくださった原宿シカゴ様。
2週間という短い期間でしたが、ありがとうございました。
ここでしか出来ない日々を過ごすことが出来ました。
あの距離間で、あの洋服で、あんな話が出来る機会はもうないかもしれません。
素晴らしい2週間でした。
下北沢という街と。
その日々に。
感謝を込めて。