デビッド・宮原の台本はシリアスなシーンで突然コメディが入ったりする。
それを指して、音楽の吉田トオルさんは、いつもなんでこうなるかなぁと苦言。
そんな台本を演じてきて、今日までステージに立ち続けてきた連中はやっぱり同じようにシャイな奴らだ。
シリアスな場面を迎えれば迎えるほど、照れくさくなって、ふざけたくなる。
集合した瞬間から、どこかふざけたくなる。
いつものように高橋をいじり、自分が歌うパートを忘れたと発言する。
控室に移動しても、それは同じ。
いつもの控室よりもずっとうるさいし、ずっとふざけている。
あーでもない、こーでもないと、ずっと笑っている。
そのまま終映近くなって、ロビーで待機している時も。
ふざけあって、ちゃかしあって、20秒前だと言われてもしゃべり続ける。
前日までのイベントで、男たちはマイクを握れば、面白いことも言わなくてはいけないと思っていた。
時には真面目なことも口にするけれど、全て真面目ということはなかった。
理由はたった一つ、照れくさいからだ。
セブンガールズという映画で手に入れたいくつもの思いを口にするのは難関だからだ。
今日はふざけないで真面目にねと、事前に言っても、なんかあったらわかんねぇなぁなんて口にして。
いや、お前がそうなったら、突っ込んじゃうよ!なんて会話をしていた。
自分の中で、今晩だけはそうはならないよと、確信に近いものは持っていた。
全員が、無視できない、大事にしていることを自分が先に口にしてしまえば。
そこで、ふざけることなんか誰も出来ないことを知っていた。
だから初めての夜になった。
うちの誇るべき男たちが、こうして映画への思いを口にした夜は。
恥ずかしいはずだ。本当は。
でも、ふざけることが出来ない領域の話だった。
恥ずかしいけれど、真面目に口にした。
この映画を製作したことは、ふざけることが出来ない自分たちの誇りだから。
こんな夜は初めてで、こんな夜はもうやってこないかもしれない。
信じられないことが起きた。
前日わずか3席しか予約が入っていなかったのに。
自分たちが確認できた最後の人数以上のお客様がそこにいた。
それも、今年の映画納めと言っていらっしゃった方が複数人、映画納めを延長して再度来てくださった。
もうしばらく会えないなぁと思っていた方が、目の前で涙を拭いていた。
そして、信じられないほどの拍手を頂いた。
彼らは縁の下で動き回っていたのに、一瞬で英雄になった。
会場を出ても、その拍手が鳴りやむことはなかった。
ロビーに出ると、ご新規のお客様が握手をしてくださった。
一瞬、そのまま帰るか躊躇してから、映画館のスタッフにパンフレットをと口にしていた。
自分の中でわけがわからないほど嬉しかった。
まったく不器用だから、何かを届けようとしても、こんな形にしかならない。
そんな形でも、届く。
それは何よりも嬉しいことだ。
歌手じゃないんだから、一生懸命歌えばいいさと思っていた。
そんな形でも、届く。
それは何よりも嬉しいことだ。
映画館を出て駅まで歩きながら。
郁子のピアノも終わったんだなぁと考えていた。
そう。
出演者たちの登壇はこれでおしまい。
残りの二日間は、監督と自分。
自分はもちろん出演者でもあるけれど、やっぱり実行委員長として立つつもりだ。
今頃、男たちはゆっくりと今日をかみしめている。
女優たちだって、昨日をかみしめているように。
さて、お祭りはおしまいだ。
ここまでのイベントはお祭りだった。
そして明けて翌日からは、お祭りではない。
映画「セブンガールズ」の核心に迫る。
水曜サービスデーは、初めて監督が一人で登壇する。
映画「セブンガールズ」という作品の核心に迫ってくれるはずだ。
サービスデーだから、映画ファンの当日券もあるかもしれない日だ。
むしろ出演者たちが観たいと口にしている。
そんな機会は滅多にないから。
普通の映画だったら、監督一人のトークショーなんてよくあるようだけれど。
うちは、出演者がサービス精神旺盛だからどうしても一人にならなかった。
あえて、一人の日を創らなければ実現しない日だ。
現代に生きるあなたに。
「セブンガールズ」という作品の持つ意味を届けてくれる。
明日はスタッフとして。
むしろ一番シャイで、一番真面目に話すことが苦手な監督の登壇のカメラマンだ。
UPLINK渋谷での上映は残り2日になった。