稽古場に到着する。
イベントの稽古をする。
上映期間は27日まで。
今日のイベントを含めても3つ。
監督と自分のトークイベントは合わせる必要ないから。
それぞれ登壇するメンバーが違うから時間調整が難しい。
稽古場は一つ、稽古する内容は3つ。
丁寧に時計を見て、調整する。
この時間まで明日のイベント、次はこの時間まで。
・・・とは言え、そう簡単にはいかない。
合わせる時間と、それぞれ個々に練習する時間を入れ子にしていくのが効率的だけれど。
なかなかそうはならなかった。
とにかく、時間がかかると想像していたけれど、やっぱりそうなった。
本当は自分は夕方には稽古場を出てチラシを配りに行きたかったのだけれど。
結局、それは取りやめにして、最後まで練習の時間調整をすることにした。
先週、チラシを撒く予定で稽古場に行かなかったことで、いくつか反省点があった。
このまま稽古場を出たら、同じ反省をすることになるぞという予感があった。
きちんと時間いっぱいまで仕上げようと、考え方を切り替えた。
任せて出ることも考えたけれど、完成させることを選んだ。
それでも、もしチラシを配って、一人でお客様が増えていたとしたらと考えてしまう。
まだセブンガールズを知らない人はたくさんいるから。
行けるときは行きたい。
その一人が、ただの一人じゃない可能性だってあるのだから。
そんな心残りがありつつ、結果的にイベントの稽古はして良かった。
今日に芝居の稽古も事前に流れを決められたし、クリスマス両日の歌もまるで違うアレンジになった。
どの日にお客様が来てくださっても楽しんで頂けると自信を持つことが出来たのは大きい。
たった一人のお客様でも呼びたいけれど、呼んだお客様に楽しんで頂けなければ意味がないのだから。
一応、仕上がったはずだけれど、もちろん本番当日は稽古とは違った緊張感もあるからわからない。
それでも、やっぱり自分たちは稽古をして、なんぼなのだと思う。
それぞれ、感動するポイントが違うイベントになりそうで、それも良かった。
稽古場から登壇メンバーと移動する。
渋谷の街は、想像通り信じられない人出で、カオスだった。
109の前の交差点まで、スクランブルになっていた。
この渋谷に通う日々ももうすぐ終わってしまう。
その数日間を、走り抜けないといけない。
渋谷という街について考えながら、映画館に向かった。
支度して、時間になって、イベントが始まった。
自分はカメラを持って客席入り口後方から、すっと中に入った。
その視線の先に、かつての劇団員が目立たないように座っていた。
自分が演じる成瀬凛太朗を最初に演じた仲間だった。
スクリーンを眺めながら、固くハンカチを握っていた。
ハンカチで顔をぬぐった。
その横顔を観ただけで、熱いものが込み上げてきて堪らなくなった。
彼は劇団での活動だけじゃなくて、自主映画の活動も活発にやっていた。
出演もしたし、カメラマンだってやった。
映画を創って上映することは、彼の夢だった。
自分だけじゃない。
何人ものたくさんのたくさんの夢を一緒に背負って、セブンガールズは映画になった。
その思いは全てエンドロールに込めてある。
監督に、それだけはエンドロールに載せたいとお願いした部分だ。
やっと、観てくれたなぁと思うと、頭が真っ白になった。
まだ観ることが出来ていないかつての仲間たちの顔が浮かんだ。
あの時、miniDVのカメラで、撮影したり、編集したり、上映会をしたり。
なんだか楽しかった。
ちゃんと配給を通して、UPLINK渋谷で上映を出来る日が来るなんて。
あの頃は、想像すらしなかった。
「映画」は夢だった。
練習したイベントはちゃんと練習通りに、思った通りに進行した。
コメントをしながら目頭が熱くなる出演者がいて、その両側にいる女優が支えた。
セブンガールズという映画は、仲間たちが支え合う物語だ。
でも、それは映画の中だけじゃない。
主題歌の歌詞にある「みんな助けてくれる」は、映画の中だけにとどまらなかった。
たくさんの仲間が、たくさんのお客様が、みんなが助けてくれたからこそ完成した映画だ。
そのことこそ、この映画の根幹にある。
今日も、初めて映画に来てくださった方から、素晴らしい言葉を頂いた。
必ずもう一度来ると約束してくださるお客様がいた。
毎上映で、そんなお客様に出会うことが出来ている。
作品が持つ力はきっと、その作品性や物語性だけではないのじゃないだろうか?
この映画のコマとコマの間には、目に見えないものがみっしりと詰まってる。
そして、その目に見えないものは、人肌のように暖かいものだ。
アンコール上映で人気だった、映画のシーンの生再現の最終回が終わった。
明日は華やかに女優たちが並ぶ。
クリスマスイブに、足を運んでくださった皆様に、プレゼントをお届けする。
喜んでもらえるといいなぁ。
そこに、暖かさを感じていただけるといいなぁ。