2018年11月25日

山のほとりの小川沿いの映画館

母の実家が代々木上原にあった。
祖父母の家のすぐそばには、富ヶ谷小学校。
母が通った小学校だ。
子供の頃、祖父母の家から渋谷まで行くときは、代々木八幡駅の目の前の道をまっすぐに歩いていくと渋谷に出た。
さすがに何度も何度も渋谷に行ったわけではなかったけれど、祖父母の家から渋谷に行くときは歩いた。
宇田川遊歩道を歩いたこともあったけれど結局この道が一番多かったと思う。
富ヶ谷から神山町、宇田川町を結ぶ一方通行の一本道だ。
紅白で有名な井の頭通りの富ヶ谷交差点近くの信号を渡ると、そこからが神山町。
今は、「奥渋谷」ののぼりが風に揺れている。
記憶が確かなら、子供の頃は、奥渋谷なんて言葉はどこにもなかった。
神山町から宇田川町に入ってすぐに、UPLINK渋谷がある。
一階には、Tabelaというレストランが入っている。
ここもUPLINKが運営している飲食店だ。

UPLINKを通り過ぎてまっすぐ行くと、東急本店の前に出る。
左側がセンター街で、右側が道玄坂。
すぐそこはもう渋谷の中心地だ。

子供の頃に歩いた道というのは、なんとなく土地勘がある。
代々木公園、NHK、宇田川遊歩道の位置、東急ハンズ。
渋谷はどんどん景色の変わっていく街だし、ましてや今は、東京五輪に向けて工事が多い。
それでも基本的な道は変わっていないし、かつて川だった宇田川遊歩道はそのまま地下に川が流れている。
UPLINK渋谷の周りに、チラシやポスターを撒きに行ったのだけれど。
頭の中になんとなく地図が出来ていた。
ああ、UPLINK渋谷は、自分の記憶と重なる場所にある映画館だったのだなぁとやっと気付く。

待ち合わせ場所のUPLINKに到着するなり、挨拶に行った。
以前にチラシもポスターも郵送しているけれど、アンコール上映が決定してからは送っていない。
配給から、多少は渡されている可能性もあったけれど、一応、確認をする。
トイレの前のチラシの棚を見たら、やっぱりチラシがなかった。
持って来た大量のチラシとポスターを納品する。
UPLINKに足を運んでくださった方が、チラシを持っていけるように。
足りなくならないようにしないとなぁ。
毎回、舞台挨拶をするメンバーは棚をチェックするべきだ。
UPLINKの素晴らしい所は、その強烈な映画館についたファンだと思う。
UPLINK会員は、1000円で映画を観ることが出来る。
映画館が選ぶ映画を信じている方や、近所に縁がある方、そういう人たちが会員になっている。
ここでしか観れない映画もあるから、映画ファンでも会員がいるはずだ。
2回当日券で観るなら会員になった方が安くなる。
そういう皆様がチラシを手に出来るかできないかというのは重要なことだ。
上映前に予告編が流れて気になった方もいらっしゃるかもしれない。
どこにチラシを置けるかもわからないけれど、一番重要な場所はここだ。

その後は二手に分かれて、映画館を中心にチラシを置いていただけるお店を探す。
飲食店、雑貨店、書店、美容院、古着屋さん、アンティークショップ、花屋さん。ライブハウス。
まったくもって頼もしい仲間たちがどんどん店に飛び込んでいく。
神山町通りから、NHKの方に抜けて、ぐるっと回る。
宇田川遊歩道からセンター街に向かって、そこから東急ハンズの周り、袋小路になったお店に向かう。
その頃には二手に分かれていたグループも一つになって。
陽が落ちた頃には持って来たチラシはほぼ全て配り終わった。
そこで解散をした。

近所のお店にチラシを置いて何の意味があるの?と思う人もいるかもしれない。
意味なんかないかもしれない。効果なんかないかもしれない。
でも、ぜんぶ、かもしれないでしかない。
ひょっとしたら、ほんの何人かでも来てくれるのかもしれない。
その中の一人が、セブンガールズを愛してくださるかもしれない。
かもしれないは、永遠に繋がっていく。
ポジティブに考えれば、その永遠は未来にしか繋がっていない。

解散して、数人で食事をしてから帰宅する。
思い立って、まだそこまで遅くないから、映画館に一番近い大山稲荷に向かった。
正確には、金王不動尊の氏子になるはずだけれど。
ほとんど渋谷の中心街全域に広がる鎮守様だし少し遠かった。
それだったら、一番近くのお稲荷様の方が良い。
お稲荷さんも意外に古い。
大昔からそこにあって、大事にされてきたはずだ。

夜道の映画館までの道を撮影しながら、大山稲荷に参拝。
小さな社、石の鳥居だけが少し歴史がありそうで。
他は、建て替えなどで新しくなっていた。
松濤の高級住宅街。官邸があるような場所にひっそりとあった。
無人の神社だけれど、誰かが手入れしているというのはすぐにわかった。
こういう所が本当のパワースポットなんじゃないかと思った。
大きすぎる住宅に囲まれて、大事にされているのは、土地に住む人に大事にされている証拠だ。
今までいくつの人の願いを聞き届けて、いくつの人の感謝を受けて来ただろう?
セブンガールズの成功を祈願して、そこを後にした。

夜の神山町通りを歩いた。
昼間はあれほど人がいたのに、随分と減っていた。
自分が舞台挨拶で訪れた時も、こんな雰囲気だったことを思い出す。
昼と夜では、まるで色が違うなぁなんて感じていた。
土地の神様にお願いをした。
また、ここでお世話になるのだから。

ふと、想像してみる。
大山稲荷は坂の上だから、ここは小高い山だったのだ。
神山町通りは、宇田川遊歩道と並んで通った道だ。
そこには、川が流れていた。春の小川はさらさら行くよだ。
川沿いの道だったのか。
ひょっとしたら坂の上のお稲荷さんの鳥居もここから見えていたかもしれない。
水があって、山があれば、きっと畑もあったかもしれない。
新嘗祭が昨日だったなぁなんて思う。
新嘗祭は収穫祭だ。
今は、勤労感謝の日だなんて名前にすり替わっているけれど。

子供の頃、お彼岸に代々木八幡のお祭りに参加していた。
必ず祖父母の家に親戚中の子供が詰まって、山車を引いた。
最終的に代々木八幡まで山車を引いていった。
帰りには、梨とお菓子をもらえた。
夜になってから、代々木八幡の縁日にも行った。
時期は違えど、あれも収穫祭が元だったはずだ。
旧暦から新暦になった時に、祭りは、9月と11月に分かれただけだ。

終戦の頃はもちろん焼野原だった。
今の代々木公園には基地があったから。
渋谷は攻撃目標だった。
山があって、川があったから、焼野原になっても区画整理されずに今のような道が残っている。

今日、ここに来てよかったと思った。
自分たちの映画が、どんな場所で上映されるか、体で知った気分だ。
ただ「奥渋谷」と言ったら、渋谷の奥なだけだ。
裏原宿と変わらない、ファッションの言葉だ。
実際に、有名でおしゃれなお店が軒を連ねて、オシャレな人たちが昼間にはたくさんいた。
いつの間にか都内でも有数のおしゃれな通りになっている。
UPLINKは奥渋谷の文化の中心地でもある。
それとは、別に、自分は土地を知った。悠久の時を感じた。
別に神様だって、お化けだって、信じているわけじゃないけれど。
重ねてきたものだけは信じている。
ここが、奥渋谷として注目されるようになったのにだって、理由がある。
それは全て繋がっているはずだ。

帰宅して、小作業。
終わってないけれど、ここまで。
明日は稽古だから。
今日はどんな夢を見るだろう。

子供の頃のあの道だろうか?
今日歩いたあの道だろうか?
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 04:52| Comment(1) | 映画公開中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
カメ止め!がヒット祈願をした神社が、沿線の「代々木八幡」UPLINK渋谷再演初日に「御祈祷」してもらってきますか?貧乏だから祈祷料5000円くらいしか出せないけどwwwこんな差し入れもいいでしょう!!ただし、神様にお願いするとき「氏名(この場合は団体名?)」「住所(このっ場合はUPLINK?劇団の本拠地?実行委員会の名義上の中心地?」を指定してメールしていただかなくてはいけない訳だけれども
Posted by 鯖 at 2018年11月25日 09:06
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