今、新しい段階に入っていると実感している。
明らかにこれまでとこれからでは、考え方そのものを根源的に変えていかなくてはいけない。
敏感なメンバーはそのことに気付いているし、どうしてもこれまでの感覚が残っているメンバーもいるだろう。
けれど、それは確実に自分の中で意識的に変わっていかなくちゃいけない事だ。
それは、ここからは「不特定多数」のお客様に届くように、響くように。
それをきちんと考えていかなくちゃいけないよという事だ。
今、小劇場の世界にいる俳優たちはとてもとてもそれを考えづらい状況にいる。
殆どの俳優は、最近は劇団に所属するのではなく、普段はワークショップに参加して。
舞台に出るときは、オーディションや知り合いを介しての客演という役者が増えている。
そういう時に大きな武器になるのがその俳優が持っているお客様の数であり動員になってくる。
うちは昔からないけれど、世の中の劇団員たちは、チケットノルマというものに苦しんだりもした。
そうなるとどういうことが起きるのかと言えば、来場してくださる友人や知り合いを大切にする。
もちろん、大切にするのは当たり前のことだしとってもとっても大事なことなのだけれど。
自分の価値でもあるから、必要以上に大切にしようとしてしまう傾向がある。
例えば、友人にこんな舞台が観たいと言われれば、次回作はこんな作品が良いんじゃないかと進言する。
シンプルに友人に、舞台を楽しんでもらいたいという思いからだからなんの他意も悪気もないものだ。
けれど、それはあくまでも「友人・知り合い視点」であることを忘れてはいけない。
友人は何度も他の舞台も含めて観てくださっているし。一般のまだ知らぬ不特定多数の人とは根本的に意見が違う。
場合によっては、より肯定的に作品を観てくださっている可能性もある。
けれど、当然、お客様を呼ばないといけないのだから、そういう意見も大事にしようと考えてしまう。
結果的に、友人や知り合いが喜ぶような企画になり、作品を創ってしまう。
ずっと観てくれている人が、こんな意見をくれたんだけど・・・という言葉を何度も聞いてきた。
そして、もちろんだけれど、そういう言葉に真摯に向かい合ってきた。
今、それはある意味で、大きな大きな間違いになってしまう可能性がある。
ずっと劇団を応援してくださった皆様がセブンガールズを観て良いと思う役者と。
初めて映画を観て、面白いと感じてくださったお客様が良いと思う役者は、絶対に違うからだ。
例えば、同じ作品を続けて上演すると言えば、役者からは厳しいという声が上がる。
再演だと友人や知り合いを呼びづらいし、まして連続だと、こないだ観たからと断られてしまう可能性が上がる。
けれど、実際、不特定多数のまだ劇団を知らない人たちにとってはどうなのかという視点だとまるで逆になる。
全回、評判が良かった作品をもう一度再演するらしい。という状況は観てみようかと思うに十分な理由だからだ。
現実にはやっぱり動員をしないと劇団がつぶれてしまう可能性だってあるのだからシビアだけれど。
たった一つ、どの作品を上演するかだけでも、正反対の意見になってしまう。
ひょっとしたら、今、劇団のファンは、セブンガールズ関連じゃない作品を観たいかな。と普通に口にするだろう。
けれど、本当にそれでいいのか?というのは、まったく別の話になる。
ケイズシネマで満席御礼を繰り返した。
その大半はきっと今まで応援してくださった皆様を中心にしている。
急遽決まったUPLINKも、今までのお客様と、新しいお客様の融合だったと思う。
ケイズでチケットを取れなかった方や、リピートしたい方が足を運んでくださった。
そして、関東の上映が終わって、今、大阪、名古屋の公演を控えている。
当然、関西や東海地方にだって、今まで応援してくださった方や知り合いがいるだろうけれど。
それでも、活動してきた関東に比べて圧倒的に数が減る。
恐らく、どんなに関西や東海の知り合いに声をかけたって、それだけで満席になることはない。
そして、それは、これからもし関東再上映が決まった時も同じことになる。
今までのお客様にもう一度来てもらうなんて虫の良い考え方をしてはいけない。
まだセブンガールズも劇団も知らない人たちが、観てみようかな?と思っていただけるような。
そういうことをきちんと考えなくちゃいけない。
それは、これまでやってきたこと、考えて来たこととは正反対のことなんだというぐらいの自覚が必要になる。
今日までの関東上映でも、勘の良い方が映画館に思ったよりもずっと足を運んでくださっている。
そして、セブンガールズを楽しんでくださったお客様がたくさんいる。
どちらのお客様が大切とか、大事とか、そういう考え方をしてはいけない。
そうではなくて、これからは、もっと不特定多数の人たちが興味を持てるように考えなくちゃいけないのだ。
自分が思うに、恐らくSNSの拡散力や口コミスピードはものすごいものがあるのだけれど。
実は、それ以上の口コミというのもあって、それは日常会話に上がるのかどうかだと思う。
最近、面白い映画って何?という質問に、自然とセブンガールズが上がるような。
そういうことが起きるには何が必要なのかをちゃんと考えなくっちゃいけない。
それも、大企業の宣伝チームではなく、自分たちという小さなグループの中でだ。
今まで応援してくださった方々が、何人の友人に面白いよと伝えてくれているか。
たったそれだけのことが、実はとってもとっても大きなことになっていく。
友人や知り合いの意見を聞くのではなくて、友人や知り合いが自然と広げてしまう状況になっているのかだ。
少なくても、プロデューサーとの宣伝打ち合わせでは、常に、世の中という不特定多数に向けての意見しか出なかった。
大阪や、名古屋が、もしも満員になるとすれば。
例えば、ネットでの評判だし、なんとなく知り合いから聞いていたとかだ。
或いは、キャッチコピーを観てだったり、予告編を観てだったり。
なんとなくチラシに書かれているセリフに興味があってとか。
あらすじを観てとか、娼婦たちの写真を観てだとか。
東京で満員だったという噂を聞いてだとか、なんとなくシンパシーを感じてだとか。
もしかしたら、たまたま目の前を通ったからとかかもしれない。
そして、そういうお客様たちが、大阪でやっているうちにもう一度観たいと感じたり、友達を誘いたいと感じたり。
そういうことの繰り返しの先にしか、きっと、満員になることなんかないのだ。
最終日に満席になれば、きっと、それが証明されたことになる。
口コミの評判で、お客様が増えていったことになる。
それは友人が多いとか、知り合いが多いとかでは対応できない世界だ。
これまで応援してくださった方々の意見とは、まるで違う世界だ。
そこの認識を全員で持てるのかどうかは、とっても、大事なことだ。
少なくても作品そのものは、不特定多数を意識して創っている。
恋愛もあり、笑いもあり、涙もあり、ダンスもあり、歌もあり、アクションもある。
こう書けば、ミニシアターには、おおよそ似合わない娯楽作品だとわかるだろう。
難解な部分はないし、逆に見れば見るほどわかるような深い部分だってある。
群像劇というのが唯一、最近は少ないものだから、慣れないかもしれないけれど。
でも逆を言えば、だからこそ、色々な人に観て欲しいと願っている。
十代からお年寄りまで楽しめるような作品になっているはずだ。
大御所タレントが観客動員を不服として当日にコンサートのキャンセルをした。
賛否さまざまな意見が出ているけれど、小劇場の役者はきっと別の事で驚いた。
客はイベンターが集めるもので、契約で何人以上集めると約束しているなんて衝撃なのだ。
お客様は自分たちで呼ぶものだ、役者が宣伝するのが当たり前だというのが小劇場の世界なのだ。
仮に外注の制作スタッフを頼んだって、役者に売れと言ってくる。制作に集めろなんて言えば怒られる世界。
同じように、某俳優が、映画の宣伝部の仕事のあおりを俳優がかぶらなきゃいけないと平然と不満をテレビで言っていたことがある。
映画の宣伝は、宣伝部がするもので、動員は宣伝部が頑張って呼ぶものだという意識がある。
そういえば、有名な役者が映画やドラマの宣伝を小劇場ほどしているのを見たことがない。
「みてくださいねー」と始まるころにつぶやいて終わることなんかざらだ。
彼らにとって舞台挨拶や番宣は出てあげているという意識がどこかにある。
でも、彼らの場合は、出演するだけで、ある一定の数のお客様が足を運ぶ「知名度や人気」があるのだ。
それも、不特定多数に向かった人気だ。
まぁ、だからへたっぴだろう。
少なくても、今は、もう考えられないぐらいヘタクソなはずだ。
不特定多数に向かった宣伝を出演者たちはまだ無意識レベルまで浸透できていない。
お客様とのやり取りも、どこか今までの意識を持ったまましてしまう。
ヘタクソなのは仕方がない。
20年間もそれを続けてきたのだから。
ただ意識だけはきちんとしなくてはいけない。
奇跡を起こすのであれば。
この作品のキャパシティを今までのキャパシティで考えてはいけないのだと思う。
それが出来ないなら、関東での再上映が出来たとしても。
痛い目を観ることになる。