2018年02月07日

逆算の芝居

役者は役についてだけ考えればいいという人もいるけれど。
実際には、作品についても、構造から考えられる方が好ましい。
舞台はまだ、瞬間瞬間を生きていけば、時系列に変化していくだけだけれど。
例えば映像なら、時系列通りの撮影とは限らないし、シーンごとに見せたいことまで解った方が良い。
台本が読める役者という言い方をするのだけれど、読めない役者も確かにいる。
うちは、実は大人数の作品が多かったから、一部を演じるという意味では、構造まで考えなくても出来る役はある。
だからなのか、台本を読み解く力について、苦手意識を持っている役者もいる。
今度の公演は3つの班に分かれて、中編を演じることになったのだけれど。
そうなってくると、実は、その場その場を生きるだけでは厳しいから、良い機会なのだと思っている。

逆算の芝居というのがある。
それは、台本を全部把握したうえで、クライマックスに向けて、逆算で組み立てていくこと。
もちろん予定調和になってしまうような、事前にどうなるかわかっている芝居をするわけではない。
後半で、こういう場面があるのだから、ここでこういう芝居をしておく。
そういう芝居の組み立てを創っていくような作業のことだ。
特に、物語を運ぶ狂言回しや、主演、或いはテーマに触れる役だと必要になってくる。

ただ、時々、稽古場で、全然正反対になってしまっていることがある。
役者が陥りやすいミス。
演出家が、なんで、そんなになっちゃうんだ?絶対にやっちゃいけないやつだよ。と口にする。
逆算で芝居をした結果、求めていることと正反対の芝居を創ってしまう状態になる。
それは、クライマックスの行動、或いは口にするセリフを考えて、そこから役作りしてしまった場合によく起きる。
クライマックスに起きることは、劇的なことだ。
例えば、親に向かって、自分はあなたを尊敬しているんだ!と叫ぶシーンがあったとすれば。
そんなことを口にしそうにないキャラクターで演じないと、劇的にならないし、意味がない。
クライマックスとして成立させるためには、むしろ、親を嫌っているかのような役作りが正解になる。
ところが、役者は、不思議なもので、ああ、親を尊敬しているのね・・と役作りしてしまう場合がある。
それを前半にやっちゃって、演出家に、それじゃ正反対だろ!と言われてしまう。
そして、なんで、そうなっちゃったの?と演出家に聞かれたときに。
だって、この子は親を尊敬している人なんですよねぇ?なんて聞いたりする。
それはもちろんそうで、間違っていないけれど、内側に隠しておくことだろう?なんて演出される。
ボタンを掛け違えているから、しばらく、なんでだ?と理解できない場合も多い。

2時間を超える作品を2桁の人数で演じてきたから、色々と得意なことも出来たけれど、不得意なことも出来た。
訓練することは、確実に上達していくことなのだけれど、上達の実感はいつも少ない。
得意なことが出来たからこそ、不得意な部分が見えてくることで、ああ、上達してるんだななんてパラドクス。
中には、毎公演、演出の段階で、絶対にやっちゃいけない奴だよと一度は言われてしまう役者もいる。
なんでもいいから、このセリフがかっこよくないとダメ!なんて言われて混乱してしまったりする。
やれやれ、厄介だなぁと思うけれど、主観を生きる役者は、結局、客観でつまづく。

短編や中編だと、どうしても考えなくてはいけない。
全体感を把握しやすいから、流れや構造まで、見えやすいというのもある。
役の数が少なければ、それぞれのもつ役割の重要性も強くなっていく。
むしろ、人数が減れば、狂言回しなど必要なくなっていく。
全員で物語を運んでいくから、作品を理解しないと、やれなくなっていく。
自分の役のことだけを考えていれば、逆に、成立しないで浮足立ってしまう。
台本を読める役者と、台本を読めない役者。それがあからさまになっていく。
話し合いを重ねることで、今までは見えなかったことまで見えていく。

せっかくの機会だから、そういう部分に真正面から取り組めたらなぁと思っている。
感情の流れと、作品の構造は、往々にして、違った道を描く。
感覚的な部分と、狙いとしての段取り。
相反しているようなことを同時に行うのが演技だ。
そういうことが、いつもより如実になっている。
短いからこそ、より深く、より濃く、濃密な空間を創れるということだ。
そしてきっとそれは、お客様に還元できることだ。
面白さを、より伝えられる。
そういう公演になったらいいなぁと思う。

今まで観れなかった何かに触れてもらわないと。
本番を逆算しながら。
思い続けている。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:14| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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