2017年12月17日

野際陽子さん

「黒薔薇」というスペシャルドラマを観た。
亡くなった野際陽子さんが出演していた。

髪は明らかに、かつらを着用している。
顔は、少しむくんでいるけれど、化粧でとても美しい。
妖艶な役を、色っぽく演じていた。
恐らく、病院から撮影に通っていたその時期に撮影されていたものだ。
本当は3月に放映される予定が延期になっていたのだという。
番組改編期に放映するスペシャルドラマで、9月の枠は埋まっていたのだろうけれど。
まさか、放送予定9か月後に、野際さんの芝居が観れるなんて。

あるシーン。
ピザをほおばっていた。
少し指が震えているのが目に入った。
それが本当はどれだけ苦しい事か。
若い俳優が冬の海に飛び込んだと自慢げに話した所で、遥かに及ばない。
あんなこと、本当に出来るのだろうか?
役者であったら、芝居であったら、出来るのだろうか?
いや、やっていたのだけれど。
恐怖も、苦しみも、芝居で乗り越えていた。
かすかに震える指は、それを物語っていた。
それだというのに。
そんな大変な芝居だというのに。
相手役に向かって、微笑んでいたんだよ。
妖しく、美しく、どこまでも魅力的に。

刑事物で始まるこの作品は、松本清張さんの名作の一つ。
いつの間にか、事件の中心にいた黒幕が存在することがわかる。
けれど、その黒幕の後ろに、もっと妖怪めいた存在が見えてくる。
黒薔薇というタイトルは、野際陽子さん演じる女性を指す。
登場すると、「生きていたのか!」というセリフで野際さんが現れる。
その瞬間、女優とは、映像の中に生きているのだと、まざまざと知ることになる。

素晴らしいなぁと感じたことの一つは。
まったく野際陽子さんの遺作放送!という宣伝をしていなかったことだ。
普通にスペシャルドラマだという宣伝しかしていなかった。
観た後に、SNSなどを観たら、まさかの出演!というコメントがいくつも上がっていた。
出演を知らずに観ていた人の方が多いぐらいだ。
それが故人の意思なのか、遺族の希望なのか、製作側の希望なのかはわからない。
けれども、作品の宣伝であり、遺作を前に出したくなかった意思が確実にあっただろう。

芝居は命懸けだ。
堂々と、病魔を感じさせることなく、そこに存在すること。
あの微笑みは、多くのことを教えてくれた。
涙も出ない。
ただ、その生きざまに感服する以外に手がない。
後進は、その姿に学ぶことしかできない。

役者は永遠に存在し続ける。
亡くなっているなんて、誰が思うか!
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 04:48| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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