2017年08月14日

重いけど

撮影直前に亡くなられた恩人の新盆に、劇団員の織田が行っている。
織田だけではなくて、おいらにとっても恩人なのだけれど、織田にとっては、おいらの何倍も歴史がある。
遥か北の青森の実家も、織田は何度も車で訪れたと聞いている。
織田は、基本的によほどのことがない限り稽古を休まない。
けれど、新盆なら行ってきなよとおいらも言っていた。

織田がいない稽古場というのも珍しい。
別に寂しいとか、そういうことではなくて。
なんとなく、いつも、座る場所が決まっているし、集団の中のポジションも決まっている。
そのどれか一つでもピースが欠けると、なんとなく、違和感を覚える。
特に、やいのやいのとうるさい何人かがいないと、いつもそんな気分になる。

その織田が演じた新崎役のセリフのテキストをおいらは用意していた。
織田がいない稽古場なら、それをやれる良い機会だ。
もちろん、いてもやればいいのだけれど、本人は、人のを聞きたい気分も聞きたくない思いもあるらしいから。
いない時に、それぞれが、どうやればいいか、そのうちやりたいなぁと思っていた。

先週までの稽古とは少し趣が違う。
まず、監督自身が書いたセリフだという事。
舞台公演をするたびに、何度も演出を重ねてきたという事。
もちろん、映画撮影前にも、映画版ではこうしたいというのを全員が知っていること。
そして、実際に映像化され、それをほとんど全員が、すでに確認していること。
それに終戦記念日が近い、この盆に、役者として戦争に触れるセリフであること。
稽古場にはたちまち思い思い空気が流れた。

セリフには、(こみあげる)(泣く)というようなト書きもついている。
それは、もちろん、やれと言われて、すぐに出来るものでもない。
偶然開いたYahoo!ニュースのトピックスのtopが、同じような戦時中の話題だった。
役者の一人は、先週の落語に比べて、重すぎる、やりたくないとはっきりと言った。

体調が悪いと聞いていた監督がいてくれたのもあった。
なんというか、タイミングだ。
織田がおらず、終戦記念日に近く、監督がいる。
そこで、SEVEN GIRLSの土台となるような部分のセリフを再度全員でやる。
この土台の上に、物語もテーマも、流れているのだから。
先週までの稽古とは違って、ある程度までは全員が出来なくてはならないのだ。
意味も知ってる、演出も聞いている、内容も知っているのだから。
もちろん、泣くことであったり、プランを練る時間であったりは、ないのだけれど。

一周目はおのおのが、自分なりに、そのセリフをやっていった。
一周目が終わって、監督から、もっと口語にして、誰かに話すようにやろうと提案。
そのまま2周目に入った。
ここで、どう変わるのか、変わらないのか、変えられないのかが、すぐに出る。
その場で終えられるようなレベルじゃない問題も、いくつか見える。
自分の中で、自分の弱い部分、ダメな部分、良い部分が浮き彫りになって行く。
監督のセリフを、監督の演出に、答えられないとしたら、もう役者ではない。
それぞれの俳優が自分なりに、何かを持ち帰っているはずだ。

3周目は、これまでとは、違うタッチでやろうなんて、流れになった。
漫談風にやったり、もっと崩した口語体にしたり、インタビュー風にしたり。
それぞれに、違ったやり方で演じた。
おいらはおいらで、頭の中で、四つ打ちの太鼓と、インストルメンタルのアメイジンググレイスを流して。
全てのセリフの節を、4小節の中に閉じ込めて、やってみたりした。
考えてみれば、聞いている人には、ちょっと、何をやってるかわからなかったかもしれないけれど。
一定のリズムの中で、長短あるセリフを、同じ小節内に収めていって、リフレインの中で強調できないかなぁと思った。
でも、あまりうまくいかなかったなぁ。
多分、それで、すごい表現になる正解がありそうだなってところで終わってしまった。
メロディまで頭の中で流したのがいけなかったのかもしれない。
つられて、ちょっと発音が変になってしまう部分があった。

良い歌は語り掛ける。
良いセリフは歌う。
そんな言葉を思い出していた。
話しかけるように・・・という演出での2周目の反省をしていて。
もっと、口語が音楽に近づくんじゃないかと思っていた。
うまくいかなかったけど、これは、いつかどこかの本番でやろうと思った。
はまれば、すごい面白い。不思議な感動を呼び込める感触があった。
長台詞にグルーヴを乗せることが出来るかもしれない。
そんな発見が出来たのだから、稽古した甲斐がある。

稽古が終わって、今日は呑むメンバーも集まらずに帰宅。
珍しく監督含めて男三人の電車。
・・・なんか、ぼぉっとしていた。
二人が話している内容を聞きながら、同時に聞いていないような。
それは、今日の稽古で、何かを掴みそうになったなぁという残滓だ。

役者なりに。
戦後72年に思いを馳せる。
そんな稽古だった。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:55| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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