2017年07月30日

ドブネズミの美しさがわからないなら、セブンガールズを観ればいい

SEVEN GIRLSを海外出展するにあたってあらすじを用意した。
Pから依頼があって、もちろん、監督にも依頼して書いてもらった。
結果的に監督の書いたあらすじは、長すぎて、担当の方がまとめてくださったあらすじになった。
香港フィルマートの前だから、はるか数か月前の話だ。

セブンガールズのあらすじは、とても書くことが難しい。
このBLOGの頭に書かれているあらすじは、実は舞台初演の頃から変わっていないあらすじ。
海外に出しているあらすじは、クラウドファンディング用に用意したあらすじに近かった。

とは言え、映画のHPを作成するにも。
あるいは公開が決まって、その後のプロモーションをするにも。
絶対にあらすじが必要になってくる。
映画のHPでも、映画の紹介サイトでも、映画の記事でも、あらすじが書かれていないなんてどこにもありえない。
大抵は200文字前後。宣伝媒体によって、それが更に編集されたりもしている。
当然、紙面には限りがあるし、WEB媒体だって読みやすい文字数で区切る。
だから、基本となるあらすじというのをちゃんと用意していかなくてはいけない。

なぜ、あらすじを書くのが難しいのかと言えば、それは物語が分散しているからだ。
この作品は群像劇であり、主演が一人の作品とは違う。
主演が一人であれば、その主人公のバックボーンを書いて、その主人公に何が起きるかを書けばいい。
けれど、群像劇ではそうはいかない。
全体的に起きること、全体的に流れていくことをあらすじには書いてある。
レ・ミゼラブルなどは、主人公が章によって変わっていくような作風なのだけれど。
結局、大抵のあらすじには、ジャンバルジャンのことしか書かれていなかったりする。
七人の侍のあらすじを読むと、農民視点で、前半の侍探しのことを書いていたりする。
あらすじというか、あらましというか。
もちろん、ネタバレになるようなことも宣伝におけるあらすじには一切書けないから、前半部分になる。

けれど、セブンガールズの場合、全体に起きることなんて、大してないのだ。
バックボーンとしてあるのは、終戦直後で、GHQ相手に体を売っていた女性たちがいたという事。
けれど、その女性たちに起きる様々なことはあるけれど、全体に起きることというのが、実はない。
この作品の・・・というかこのシナリオの本当の凄さはそこだ。
なんと、同時進行で、9つの物語が進んでいくのだ。
全体的に何かが起きていくのではなく、個々に何かが起きていって、それがリンクしていく。
そして、何かが起きるたびに、手に手を取り合っていく。
それぞれが個別の思いから、共有していくという構造になっている。
作品構造がとても複雑に入り組んでいるし、よくこんな物語を台本に出来たと思う。

真知の物語、猫の物語、コノの物語、あさひの物語・・・数え上げたらわかるだろうか?
一つ一つの物語に骨格があって、登場人物がいる。
その全てをあらすじに書けば、当然、大抵の文字数は越えていってしまう。
実は、監督に直接お願いして書いてもらったあらすじが長すぎたのはそういう理由がある。
なんと、9つのあらすじを監督は書いてきたのだ。
それぞれ、50文字以上のあらすじだったから、当然、まとまるわけがなかった。
こうなることはわかっていたのに、依頼したおいらが悪い。

それぞれの物語は、細かくリンクしていく。
それぞれの物語で、登場人物が重なったりする。
それぞれの物語で、対比構造の物語が用意されている。
けれど同時に、それぞれの物語は、その物語だけでも完結している。
そして、それぞれの物語は、一つのテーマの中で進んでいく。

10人の娼婦と、9つの物語が、全て帰結した時に「セブンガールズ」になる。

そんな物語、観たことがない。
こんなシナリオは思いついてもなかなか書けない。
水滸伝のように膨大な物語ではなくて、通常の長編映画の中でこれをやろうだなんて誰が思うだろう。

あらすじが、あらすじのテイをなさない。
全体のバックボーンと、そのテーマを書く以外に、方法が見つからない。
けれど、誰だって、映画のあらすじを読んで、映画館に行く。
だからこそ、とっても大変だ。

ドブネズミみたいに美しくなりたいと、ロックスターが歌った。
この映画に主人公が存在しないのは、全ての登場人物が、ドブネズミのように集団の中の一人だからだ。
誰もが脇役でもあり、誰もが主人公でもある、現実と同じだからだ。
9つの物語が全て閉じた時。
パンパンと揶揄され、蔑視された、ドブネズミたちがとても美しく感じるはずだ。
その美しさに気付いた瞬間に、セブンガールズという作品が完成する。

ドブネズミの美しさがわからないなら、セブンガールズを観ればいい。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 04:22| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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