よくうちの舞台を観たお客様から言われることがある。
心があたたかくなった。あたたかい気持ちを頂いた。
不思議なもので、全然違うお客様、全然違う作品でも、必ずそんな言葉をどこかで耳にする。
「熱い心」とかとも違う。
メッセージ性の強い、例えばパンクバンドなんかは、あいつら熱い!なんて良く言うわけです。
でも、それとはやっぱり違う。
「熱い」と「あたたかい」は、似ているし効果も同じだけれど、全く違う。
熱いって言葉のちょっとぬるいやつってことでもない。
この暖かさの正体ってなんなのだろう?と考える。
もちろん、一律に全て同じ意味なわけでもないのだと思う。
それこそ、小学校の運動会を見に行って心が温かくなるような種類の言葉の時もあっただろうし。
ストーリーにあたたかい気持ちになったり、音楽になったり、様々なケースがあったと思うわけです。
あったはずなのだけれど、やっぱり、出てくる言葉が同じ。
これは、やはり、正体があるんじゃないか?と、おいらは考えています。
表現方法も多種多様だと思うのですよ。
それこそ、もちろん、やさしい言葉をかけている姿は、あたたかさを感じるわけですけれども。
あえて苦言を言っていたり、厳しい態度の中に、あたたかさを感じることだってあるわけです。
「落ち込む」を例えば表現するのであれば、最大の表現は「明るさ」だと思っているのですけれども。
その明るさの中に「落ち込み」が見えることが、たぶん、芝居の面白さなんだよなって思ってるのです。
もちろん、明るさを究極まで暗くすることで、落ち込みを見せることも出来ますけれど・・・。
だから、あたたかさを表現しようとすれば、例えば「寒さ」で表現していることさえあるはずなのです。
作品が違えば、当然、そういう事が起きるわけです。
かつてブルーハーツがパンクロックを「やさしい歌」と表現したけれど、そのぐらい表現は幅があるわけです。
だとすれば。
やはり、一つは監督の持つ資質の一つなんだろうなぁと思うのです。
その台本を書き、演出をする人の元々持つあたたかさのようなものが、作品ににじんでいる。
お客様へのサービス精神であるとか、そっと隠しているテーマであるとか。
そういうものの根源に、何か、そういうものがあると思うのです。
ただ、それはどうやったら伝わるんだろう?
そんなことを今、漠然と考えています。
役者だからね。
もちろん、作品を演じるのであれば、目一杯、作品の根っこにあるものを引っ張り上げるのですけれども。
演じながら、その物語だけじゃない作品の持つ根っこのようなものは意識しているのです、いつも。
でも、そういうことだけではなくて。
まだ監督の作品に触れたことのない人にどうやって伝えていけばいいんだろう?
もちろん、例えばこのBLOGだって、そういう意味がなくはないです。
自分の中にある本当の言葉で何かを書けば、きっと、どこかで何かが伝わるだろうと。
それはきっと、監督の資質というよりもおいらの資質なのだけれども。
とは言え、この作品について真摯に書いていけば、真摯に向き合っていけば。
きっと、少しだけでも伝わるんじゃないかとは思っているわけです。
でもきっともっとストレートな。
まっすぐ直球な伝え方もあるような気がするんだよなぁ。
この「あたたかさ」は、いつもの舞台のように、映画の中からもにじみでているから。
それだけは、たくさんの人に伝えたいなぁとか思っているわけです。