Yahoo!ニュースの映画欄の雑誌一覧でアニメ界の現状というような記事があった。
その中に、「アニメ界の常識を覆した、『この世界の片隅に』・・・」なんて項目があって、それを読んで愕然とした。
確かに公開当時も、常識を覆した!というのを何度も目にした。
クラウドファンディングで始まって、口コミで上映館を増やしていくという。
まさにSNS時代の口コミによるヒットだったからだ。
でも、この記事を読んで、逆においらは、後頭部をハンマーで叩かれたようなショックを受けた。
実際に口コミでこんなことが起きるんだ!という、おいらの勇気の一つの作品だったのだけれど。
この記事の中でプロデューサーが書いている一節を読んで、なんだよ、そうなんだ・・・となってしまった。
それは、その中にあった「スタートは63館の上映で、宣伝費は6000万円でしたから・・・」という一節。
え?殆どプロモーションなんかしないのに、口コミで200館まで伸びたって書いているけれど。
6000万円も宣伝費をかけていたのか・・・と、逆にがっかりしてしまったのだ。
確かにテレビのスポットなんかで、アニメ映画のCMはされているし、そうなると宣伝費はとんでもない金額で。
そう思えば、6000万円というのは、とっても、安いのかもしれないけれど。
想像していた、「常識を覆した・・・」うんぬんのくだりとは、随分とギャップがあった。
つまり、この6000万円で、SNSを中心としたWEBマーケティング戦略をしたという事なのだから。
これまでの宣伝方法とは違ったというだけじゃないかと、思ったのだ。
むしろコアなアニメ信者層ではなく、一般層へのアニメ作品というコンセプトの結果にさえ思える。
当時、おいらがイメージしていたのは、いわゆるハリウッドにおける「ロッキー」のようなサクセスだった。
単館でしか上映できず、メディアにも取り上げられないのに、口コミでアカデミー賞に辿り着いたという。
多分、映画界では最大のサクセスストーリーの一つだと思うのだけれど。
アニメ界で、そういうことが起きる時代なんだなぁなんて、おいらは思っていたのだ。
考えてみれば、アニメの場合、二次収入も含めての予算組で、製作費も膨大なスタッフの数だけかかるし。
そもそも、小規模アニメでも、相当な規模なのだと思う。
まぁ、宣伝費は製作費というよりも、興行収入に照らし合わせた予算だとは思うのだけれど。
それこそ「100円の恋」の方が圧倒的に予算も低くて、宣伝費もなかったはずだ。
それで、日本アカデミー賞まで辿り着いたのだから、実はそっちの方が常識を覆していそうなものだけれど。
恐らくは実写映画では、すでに、低予算映画の常識というものがあって、特段、珍しくもないのかもしれない。
イメージというのは恐ろしいものだ。
この世界の片隅にの公開の頃に、おいらの想像していた常識と、実際の常識がずれていたなんて。
そして、予算をかけたWEBマーケティングの凄さを逆に感じた。
どこからが口コミで、どこからがWEBマーケティングなのかなんて素人目には、わからない。
確かにあの時期、FacebookでもTwitterでも、よく見かけたし、あの中には明らかにマーケティング戦略があったのだ。
別に、ずるい!とか、そういうことを言っているんじゃなくて、とんでもないことだぞと、背筋に汗をかいたのだ。
一時期、ステマ騒ぎなんかあったけれど、その頃とはもうまったく違う次元にまで発展している。
もちろん、そもそも作品に力があったからこそなのだけれど、それだけじゃない。
ただ、逆を言えば、おいらの想像よりもずっと簡単に「常識が覆る」んじゃないかって思った。
WEBマーケティングでヒットしたことが、常識を覆したというイメージになるのであれば。
この「SEVEN GIRLS」は、もう企画そのものが今までの映画の常識からは外れているからだ。
確かに低予算映画というものはこの世にすでにたくさんあるのだけれど。
例えば、低予算映画でセット撮影の作品なんて、この世のどこにもないはずだ。
セットを作らずに、すでに実際にある風景のロケ撮影で作品を製作する以外に方法がないからだ。
そういう、ちょっと考えられないだろう?ということが、山ほど重なった作品だ。
公開される日がやってきたら、それがすでに奇跡だ。
いや、今の時点で、いくつの奇跡が起きてきたことか。
同じことをやれと言われても、誰も出来ないことをやってきたはずなのだ。
だったら、公開に向かっても、常識を覆して、想像を覆して、信じられないことをしたいなぁって思っている。
小劇場における劇団運営というのは役者が営業活動までやるのが当たり前の世界なのだ。
だから、特段、抵抗すらない。
全員で知り合いのメディアや映画ライターに当たることだってできる。
大規模映画やハリウッド映画でしかないような、ディザー広告だって自分たちでやれる。
通常、映画の予告編は1分30秒版と3分版ぐらいしかないけれど、100本のWEBCM製作だって出来る。
ホームページだって、業者に頼んだ簡易なものだけじゃなくて、パンフレット並みに充実したサイト構築だってできる。
GoogleアナリティクスやFacebookの広告など有料の広告だって、広告代理店を通さなければ、そこまでかからない。
業者を通したら、何千万円もかかるような宣伝を、自分たちでやれる。
普段の舞台のように、置きチラシ、ポスター貼り、折り込みのような地道な営業活動も出来る。
いや、結果的に業者や広告代理店が入るようなことがあったとしても、それを最低限に出来る。
信じている通り、作品に力があるのであれば、それは確実に効力を発するはずだ。
正直、最近、映画のオフィシャルサイトを色々見てきて。
これぐらいだったら、プロのWEBデザイナーやコーダーだったら1日で作れちゃうぐらいのサイトだなって何度も思った。
わりと、話題になっているような大きな作品でも、ページ数が増えるだけで、それほど変わりがない。
絶対に個人では業者にかなわない部分があるのだけれど、逆に業者には期日と予算という縛りもある。
個人であれば、睡眠時間削ればいくらでも時間はあるし、自分でやれば予算なんか気にも留めないのだ。
本当の意味で常識を覆すことが出来る。
逆にそんな風に思えてきた。
だって、誰だって待ってるんだから。
Twitterや、Facebookで、宣伝ではなくリアルにおすすめされるような作品を。
むしろ、すでに宣伝には辟易としているって、思う。
宣伝が逆に、足を鈍らせているような現象だって、起きているぞとおいらには見える。
そこまでプランニングして、プロデューサーと打ち合わせないといかんと思う。
お任せしますなんて、失礼だからだ。
まず、自分たちでどこまで出来るのか提示提案する。
その上でどう告知していくのか計画を練るのだ。
もちろん、その中には海外プロモーションの結果も含まれてくるはずだ。
ないものを想像しても仕方がないのだ。
あるものを全て動員していくしかないのだ。