2016年08月24日

俳優の責任

酷いニュースが流れた。
心がざわついた。
俳優が映画撮影ロケ滞在地ホテルで強姦致傷。
これから、スキャンダルに騒ぐのだろうけれど、そういうことではなく、引きつった。

まず何よりも被害者や、その被害者周辺の皆様を思うと、最低最悪の事件だ。
弁解の余地など、ひとかけらもない。
俳優は、ありとあらゆる他者を演じる。
つまり、他者の気持ちを含めなければ、俳優などできない。
社会的弱者を演じることもあるし、心の弱い部分を直視しないといけない。
そういう俳優がなぜ、こんなことになってしまうのか、想像もできない。
・・・というか、俳優ではないのだろうと思ってしまう。

今、セブンガールズという作品を取り組むに当たって、様々な資料に目を通している。
例えば、世界中の軍隊における慰安婦とはどんな存在で、どこまで国家がかかわっていたのか。
或いは、戦勝国の兵士たちが、どれほど性犯罪を犯してきて、しかも、裁かれていないのか。
日本の敗戦だけではなく、現在も続く問題として、残っている。
アメリカの軍人も、ヨーロッパの軍人も、特に有色人種に対しては、かなり酷い。
今は人権を高らかに歌っているけれど、かつては、間違いなくそうだった。
敦化事件などは、いかに「戦争」が悪なのかすぐにわかる。
敦化事件を知っている日本人が余りにも少ないけれど。

そんな資料に目を通すたびに、被害者の気持ちにシンクロしていく。
そういう事が出来ないで、俳優というでは・・・。

被害者だけではなく、関係者たちへの迷惑の大きさだ。
テレビ、CM、映画。
その全てを一斉に直さなくてはならない。
本日の夜の放送を急遽、編集し直すのだから・・・。
今週末の24時間テレビのスペシャルドラマに至っては、関係者試写会まで終わっている。
これを再度、撮影し直して、当日までに編集まで完成させるということは・・・。
今日から、当日までスタッフさんたちはほぼ不眠不休で働くという事だ。
事件を起こした映画にいたっては、お蔵入りになる可能性も高いだろう。

劇団でも公演直前に、俳優が出演できなくなるというピンチが何度かあったことがある。
その時の事を思い出すと、今でも震えるほど恐ろしくなる。
開幕できないかもという恐怖の中、なんとしても開幕しなくてはいけないからひたすら進んだ。
休憩などは全て返上して、開幕できるように必死になった。
一度は、伝染する病気に俳優がかかって、急遽、一人の俳優が二役やることになった。
その日のうちに、もう一役のセリフを叩きこまなくてはいけなかった。
一度は、クライマックスの立ち回りに出演する俳優が、どうしても出演できなくなった。
急遽、別の俳優に殺陣を伝えて、それが怪我なく出来るレベルに達するまで、本番ギリギリまで稽古をした。
一度は、俳優が怪我をして救急車で運ばれた。
代役を用意しながら、同時に松葉杖などでの出演が可能か両方の道を探った。
その時のストレスは、つつかれただけで、泣いてしまうような状態だった。
ギリギリの精神のまま、開幕の瞬間まで、必死に走った。

そういうことを、欲望のために、起こしたのだ。
おいらは、事件を耳にした瞬間、被害者とスタッフさんを想像して、引きつったのだ。
むしろ、何か力になれることがあるんじゃないだろうか?ぐらい考えた。
おいらに出来ることなんか何もないけれど、こういう場面を知ってるから、助けなきゃ!って思った。

責任の問題だ。

俳優は、俳優ですと言えば俳優なのか?
そうじゃないだろう。
少なくても俳優は、観客がいて、初めて俳優として存在する。
その上、ストリートでもなければ、スタッフさんがいて、初めて芝居が出来る。
その上、一人芝居じゃなければ、相手役がいて、初めて芝居になる。
どんな端役だとしても、俳優である以上、その責任だけは背負うべきだ。

今、映画製作をしているから。
余計に、過敏に反応したのかもしれない。
世の中何が起こるかなんてわからないけれど。
起こらないで済むことは、回避していかないといけない。
事前に出来ること、安全確認、責任感、全て持たなくてはいけない。
舞台でも同じだけれど、映画は舞台よりも更に外に開いていて、経済的にも広い。

その責任をおいらたちは、ちゃんと感じているか?
肝に銘じているのか?

こんなニュースは目にしたくなかった。
こんなニュースは口にもしたくない。

被害者だけではない。
全ての女性に謝罪するべきだ。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:54| Comment(0) | 映画製作への道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください