酷いニュースが流れた。
心がざわついた。
俳優が映画撮影ロケ滞在地ホテルで強姦致傷。
これから、スキャンダルに騒ぐのだろうけれど、そういうことではなく、引きつった。
まず何よりも被害者や、その被害者周辺の皆様を思うと、最低最悪の事件だ。
弁解の余地など、ひとかけらもない。
俳優は、ありとあらゆる他者を演じる。
つまり、他者の気持ちを含めなければ、俳優などできない。
社会的弱者を演じることもあるし、心の弱い部分を直視しないといけない。
そういう俳優がなぜ、こんなことになってしまうのか、想像もできない。
・・・というか、俳優ではないのだろうと思ってしまう。
今、セブンガールズという作品を取り組むに当たって、様々な資料に目を通している。
例えば、世界中の軍隊における慰安婦とはどんな存在で、どこまで国家がかかわっていたのか。
或いは、戦勝国の兵士たちが、どれほど性犯罪を犯してきて、しかも、裁かれていないのか。
日本の敗戦だけではなく、現在も続く問題として、残っている。
アメリカの軍人も、ヨーロッパの軍人も、特に有色人種に対しては、かなり酷い。
今は人権を高らかに歌っているけれど、かつては、間違いなくそうだった。
敦化事件などは、いかに「戦争」が悪なのかすぐにわかる。
敦化事件を知っている日本人が余りにも少ないけれど。
そんな資料に目を通すたびに、被害者の気持ちにシンクロしていく。
そういう事が出来ないで、俳優というでは・・・。
被害者だけではなく、関係者たちへの迷惑の大きさだ。
テレビ、CM、映画。
その全てを一斉に直さなくてはならない。
本日の夜の放送を急遽、編集し直すのだから・・・。
今週末の24時間テレビのスペシャルドラマに至っては、関係者試写会まで終わっている。
これを再度、撮影し直して、当日までに編集まで完成させるということは・・・。
今日から、当日までスタッフさんたちはほぼ不眠不休で働くという事だ。
事件を起こした映画にいたっては、お蔵入りになる可能性も高いだろう。
劇団でも公演直前に、俳優が出演できなくなるというピンチが何度かあったことがある。
その時の事を思い出すと、今でも震えるほど恐ろしくなる。
開幕できないかもという恐怖の中、なんとしても開幕しなくてはいけないからひたすら進んだ。
休憩などは全て返上して、開幕できるように必死になった。
一度は、伝染する病気に俳優がかかって、急遽、一人の俳優が二役やることになった。
その日のうちに、もう一役のセリフを叩きこまなくてはいけなかった。
一度は、クライマックスの立ち回りに出演する俳優が、どうしても出演できなくなった。
急遽、別の俳優に殺陣を伝えて、それが怪我なく出来るレベルに達するまで、本番ギリギリまで稽古をした。
一度は、俳優が怪我をして救急車で運ばれた。
代役を用意しながら、同時に松葉杖などでの出演が可能か両方の道を探った。
その時のストレスは、つつかれただけで、泣いてしまうような状態だった。
ギリギリの精神のまま、開幕の瞬間まで、必死に走った。
そういうことを、欲望のために、起こしたのだ。
おいらは、事件を耳にした瞬間、被害者とスタッフさんを想像して、引きつったのだ。
むしろ、何か力になれることがあるんじゃないだろうか?ぐらい考えた。
おいらに出来ることなんか何もないけれど、こういう場面を知ってるから、助けなきゃ!って思った。
責任の問題だ。
俳優は、俳優ですと言えば俳優なのか?
そうじゃないだろう。
少なくても俳優は、観客がいて、初めて俳優として存在する。
その上、ストリートでもなければ、スタッフさんがいて、初めて芝居が出来る。
その上、一人芝居じゃなければ、相手役がいて、初めて芝居になる。
どんな端役だとしても、俳優である以上、その責任だけは背負うべきだ。
今、映画製作をしているから。
余計に、過敏に反応したのかもしれない。
世の中何が起こるかなんてわからないけれど。
起こらないで済むことは、回避していかないといけない。
事前に出来ること、安全確認、責任感、全て持たなくてはいけない。
舞台でも同じだけれど、映画は舞台よりも更に外に開いていて、経済的にも広い。
その責任をおいらたちは、ちゃんと感じているか?
肝に銘じているのか?
こんなニュースは目にしたくなかった。
こんなニュースは口にもしたくない。
被害者だけではない。
全ての女性に謝罪するべきだ。