いよいよシナリオが完成間近だ。
最後のシーンを残したシナリオが印刷されていた。
来週、最後のシーンが揃えば初稿の脱稿になる。
想像以上のボリュームになっている。
あのシーンも。
あのシーンも。
あのシーンだって。
上演台本から映画シナリオに書き換わった。
好きだったセリフがなくなっていたり。
語られなかった部分が追記されていたり。
言葉で説明していたことが映像で表現するようになっていたり。
おいらは、あっという間に、頭の中に映像を思い浮かべることが出来た。
スケジュールもこれで一気に動き出すことになる。
キャスティングも動き始める。
スタッフさんも動き始める。
稽古時間も当然長くなっていく。
本読み稽古という読み合わせも、末日には出来そうだ。
様々な動きが、シナリオ完成と同時に具体化していく。
小道具や衣装のチェック、役者同志のディスカッション。
全員の方向性を固めていくことになる。
デビッドさんの脳味噌の中で。
舞台作品の映像化のコンパイル作業が終わるという事だ。
それは、過酷な作業だったのか。
それとも、楽しい作業だったのか。
きっと、今はまだわからない。
今は、楽しい部分や広がる想像力も、高いストレス化で行っているだろうから。
それでも、その豊かな想像力に溢れた変換作業に、おいらは痺れている。
これを早く、一刻も早く、映像化したい。
シナリオが出来上がって。
キャスティングが済んで。
そうなったら、更に本気で突っ込んでいかなくちゃいけない。
今までの舞台以上に。
役者同士でも、本気で言い合おうと話している。
それ、おかしい。それ、つまらない。そこ、もっとこうして欲しい。
厳しい要求もあるかもしれないし、ぶつかることもあるかもしれない。
それでも、作品の完成と言う共通の方向性を見つめているのであれば、破綻することはない。
多分、そういう作業の向こうにしか、傑作は存在しないから。
役者にもストレスはかかるだろうけれど、そこを耐えられないなら、そもそも役者ではない。
合っている助言も、間違っている助言もあるだろうけれど。
言いたいことは言える環境を創っていかないとだ。
目の前にUSBメモリーがある。
この中に今日までのシナリオデータが入っている。
これをまず、美術さんに送る。
美術プランが出来上がれば、演出が始まるからだ。
半年前は夢だったね。
でも、今、ここにシナリオがあるよ。
嘘みたいだけれど。
嘘でも夢でもないよ。
クラウドファンディングを達成した瞬間。
稽古場が一気に湧いたね。
涙を流す女優もいたね。
現実感を持てない役者もいたね。
でも、今、ここにシナリオがあるよ。
はじまれば、それは、現実。
苦しい事、辛い事、山のように押し寄せる。
ストレスが、信じられないほどかかってくる。
でも、耐えられるさ。
だって、半年前には夢の世界だったんだ。
そこに、自分たちで飛び込んでいったんだ。
そして、着実に一歩ずつ、進んできたんだもんね。
覚えているかなぁ。
友達にクラウドファンディングのチラシを配ったり。
舞台のカーテンコールで、お客様にお願いしたり。
毎日増えていく、支援金の金額を見たり。
たくさんの知り合いが応援してくれたのがわかったり。
そんな毎日を。
まあ、悩むこともあるだろうけれど。
結局、出来ることはたった一つさ。
ベストを尽くすんだよ。
今日。稽古後の飲み屋。
来ていた皆が、悔しそうな顔をして、酒を煽った。
悔しかったから。やるせなかったから。どうしていいかわからなかったから。
もっともっと、出来ることがあったかも。言えることがあったかも。
いや、やれることは十分にやったし、言えることは十分に言ったかも。
わからないね。わからないよ。
でも、こういうことだって起きる。
これから、まだまだ、色々起きる。
皆にとって、それは、自分の事だっただけさ。
でも。道は一本だ。
ベストを尽くすんだよ。
答えは出ているもんな。