2019年05月25日

公開66日目

最終日は朝からそわそわし続ける。
何をしていたって、心は横浜にあった。
たったの一週間だけだけれど、心に刻みついている。
あの街の人の匂い、人のぬくもりを。
そこに向かう電車すら愛おしい。

黄金町駅を降りて改札を出て道路を右に。
大岡川の太田橋を渡って、末吉町四丁目の信号を左折する。
左手に見えてきたカメヤさんにも顔を出して最終日ですとご挨拶。
映画館を通り越して、隣のローストスモークのお店の社長にも挨拶を。
お騒がせしました、ありがとうございました。
全ての人がありがとう、またねと言ってくださる。
笑顔、笑顔、笑顔。

スタッフさんに挨拶をしながら控室に入る。
まだ誰もいない部屋。いつもの自分の場所に座る。
なんとなくいつも座る場所も出来ていく。
ベランダに出て喫煙所で一服。
そこからの風景も目に焼き付ける。

集まったメンバーと順番などを簡単に決めていく。
扉から漏れてくるお客様の拍手。
66日の間、一日も欠かすことなく客席での拍手が生まれた。

舞台挨拶。
お客様の顔を見渡していく。
何度も足を運んでくださった方。
いつかチラシを受け取ってくださった方。
初日満員の中、金曜に来ますと言ってくださった方。
この街で宣伝に協力してくださった方。
別の会場で出会って以来の方。
そして、きっと映画館の会員であろう方、地元の皆様。
精一杯の感謝を伝えるしか出来ない。

最終日だからさ。セブンガールズについて話さないといけないという気持ちもあったけど。
ポケットからメモを出して、ドキドキさせてみようかなとかも思ったけど。
自分の話から始まるように見せて、ジャック&ベティの話をした。
客席に立つ副支配人さんが、何度も頷いていらっしゃった。
この映画館は、支配人さんたちの青春そのもので。
そんな映画館に、自分たちの全てを込めた映画がかかったことへの感謝をした。
これまですべての感謝の思いは、お辞儀だけでも伝わると思っていたから。
3人の女優が涙を流して、自分はこらえてた。

ロビーでのサイン会。
たくさんのお客様が並んでくださった。
たくさんの皆様がパンフレットやTシャツを買ってくださった。
少しだけの時間だけれど、こんなふうに交流できることが嬉しいことで。
自分たちは幸せ者だなぁと感じる。
ふと見れば出演者の一人がカメラを構えている。
そこでカメラを構えている時の気分なら知ってるよ。ありがとう。

副支配人さんに挨拶をする。
映画館を後にするのになんだかまた戻ってくるような気分だった。
わざわざ入口までお見送りをしてくださってお礼をしてくださって。
その誠実さが12年間、傾きかけた映画館を全国でも有名な映画館まで育てたのだと改めて思った。
誠実であろうと再び自分に誓う。
人に酷いことを何度もしてきた自分はたくさん汚れているけれど。

打ち上げにはミングルマングル
さくらまつりや、BBQで宣伝させていただいた伊勢佐木町七丁目商栄会副会長のお店に。
ブルースマンのワンマンライブをやっている中にお邪魔させていただいた。
手渡されたボンゴを太ももに挟んで、リズムを刻みながらビールを飲んだ。
煙草を吸いに外に行ったら犬が飛びついてきて遊んだよ。
飼い主の奥様が不動産屋さんに貼ってあるチラシを読んでくれる?と声をかけてくる。
人と人との距離が近い街なのだ。

お店を出て、ジャック&ベティの支配人さんに紹介されたアポロに。
ジュークボックスの置いてあるこれぞ昭和というお店。
セブンガールズに合っているから、そこで呑みましょうという一言に。
でも忙しいから来れないかもしれない。
来れなければ来れないでいいやと開き直って、その空間に身を置く。
終電間際に残ってくれたメンバーを帰らせて一人で。
たまたま映画を観てくださったお客様もそのお店にやって来た。
そういえばまともな食事をしていないから、この街で生まれたナポリタンを頂く。
アイスピックでくだかれた氷の浮かぶバーボンソーダも、スパイシーなナポリタンも。
今まで口にしてきたものとは違う味がした。うまかった。

支配人さんは結局現れなかったから街に出る。
少しだけぶらぶらして寝床を探そうかと思ったけれど。
5月にしては暖かすぎる夜にほろ酔いの自分は狭い場所に行く気にならず。
伊勢崎モールのベンチに腰掛けて、ゆったりと缶コーヒーに煙草をくゆらせた。
目をつぶって、当時の白黒写真を思い浮かべた。
ここは占領軍に接収された街。娼婦たちが颯爽と歩いた街。
その街の夜の空気には、あの女たちの歌声が聴こえてくるようだった。
小一時間だけれど、神秘的な夜だった。

始発電車の時刻が迫ってきたから。
もう一度だけジャック&ベティまで足を運んだ。
上映中に貼ってあったセブンガールズのポスターが張り替えられていた。
ああ、上映が終わったのだなぁと思った。

関内駅まで歩く途中で、遊んでく?と声をかけてくる外国人たち。
写真だけでも観てよという言葉になんだか笑顔が出てきた。
ごめんね、帰るよ。
そう言って駅まで向かった。
酔っ払いが道路で寝ている。
あったかくて良かったねぇ。

始発電車に乗って、一度だけ乗り過ごして帰宅。
日常の空間に戻った。
信じられないほど足がむくんでいて面白かった。

目覚めたら支配人さんからの連絡。
素敵なお店を紹介していただいたお礼を伝える。

さあ、今日から何をすればいいんだろう?
やれることが、なくなってしまうよ。

セブンガールズにまたきっと会えるというたくさんのコメントに。
ただただ申し訳ないなぁという気分になっていく。
けれど安易に公式が期待させるようなことを言えるわけもない。

予定された上映は全て終わったのだ。


映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
2019/5/18(土)~24(金) 皆様ご来場ありがとうございました。
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/cinema/detail/1928/

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2019年05月24日

公開65日目

ぐんと気温が上がったのがわかった日だった。
帰りを思うとTシャツ1枚では家を出ることが出来ないけれど。
そのために羽織っている1枚が邪魔くさくて仕方がない。
肩から掛けているカメラバッグが肩に食い込む。
そんな日ももう明日のみなのだけれど。

電車に乗って黄金町駅に降り立つ。
始めて来たのはもう随分前だ。
横浜上映が決まってすぐ夜に行ってみたのだった。
あれから何度足を運んだことだろう。
道案内の映像を監督がイベント用に撮影すると言った時もそのロケハンに行ったり。
あれからどれぐらい経ったのかももうわからない。
たしかあの日ロビーにまで上がって、掲示物や物販物を見て回った。
もちろんあの日、毎日挨拶しているスタッフさんたちはおいらを誰かも知らなかった。

映画館に到着して控室に向かう。
ジャック&ベティの控室に行くルートにはお宝が溢れている。
自分が世界で一番好きな映画のポスターや、フィルムや、サインが飾ってある。
ふと置かれている鏡のようなものが骨とう品でいつかのどこかの映画館の名前が入ってる。
リノリウムの床は自分が子供の頃に行っていた映画館の原風景そのままだ。
控室に行こうと思ったら、今日は別の部屋だった。
電動の車椅子のお客様が来場されていて非常に珍しいことにこちらで鑑賞されていた。
車いす席に案内が難しかったらしいのだけれど、そこまでお客様に尽くしてくださる映画館なのだ。

先に到着していた出演者から一枚の手紙を渡された。
前日、会場にいらっしゃった地元の恒例の映画ファンからだった。
70代男性の映画ファンとだけ書かれていて匿名だった。
かつて子供の頃に見かけた娼婦や風景、心情が描かれていたと書いてあった。
そして、自分たちの時代が終わったんだと、感じたと。
残りの人生が短いだなんて書かれてもいたけれど。
ああ、現実であった終戦後の風景が記憶になり思い出になり、そして物語の中になったんだなぁと思ったら。
続く言葉もなかった。

戦後74年なのに?と思うかもしれない。
そうじゃないのだ。
横浜は米軍に接収されていた土地だ。
他の土地よりも10年終戦が遅いのだ。
横浜だけで数千人の女性が嫁入りでアメリカに渡ったと聞く。
「占領軍」と毛筆で書かれた文字を目にした時はハッとした。
少年時代、映画に出てくるようなオープンカーのジープがそこかしこに走っていたよと言っている方もいた。
70代の地元の皆様にとって、この映画の風景は特別なものなのだ。
若葉町は飛行場だった。そこでこの映画が上映された。
自分たちだけではなくて、映画館スタッフさんへの手紙でもあった。
60年以上の時を越えた出会いをしたのだ。

先日の映画青年、前日の地元の先輩。
出会うべくして出会ったのだと感じる。
それも全てたくさんの皆様との出会いの中に生まれた奇跡だ。

そんな出会いが出来ることが終わるなんて。
最終日がやってくるだなんて。

嬉しいことに土日の満員に続く平日は、毎日毎日動員が増え続けている。
昨日より今日、今日より明日。
そうやってきたけれど、明日から先がないなんて。
それなら本来、最終日は満員御礼で終わらなくちゃいけないはずで。
でもそればかりはもうただただ天に向かって祈る他はない。
最終日は映画館に到着してもきっとお客様の数を聞けないのだろう。
扉を開けたその時にわかるんだ。

カメラマンとして映画館に滑り込むと。
大体ラストシーンの頃になる。
あの大きなスクリーンに、あの女たちがいる。
息をのんでお客様はスクリーンが放つ光を浴びている。

下北沢の最終日を思い出すよ。
あの日、もしかしたら横浜の決定が出るんじゃないかってずっと携帯を握りしめていた。
でも横浜の最終日は、そういう話すら耳に入って来ていない。
仮にどこかで上映機会があったとしても、明日何かを発表することは出来ないだろう。
そして、その上映機会がやってくるのかどうかすら何もわからない。
寂寥感が自分の心を侵食する前に布団に入らないと。
おいらは寂しくて、凍え死んでしまうかもしれない。

上映10週目
公開館6館目
公開66日目
セブンガールズ最終日

上手にさよなら出来るだろうか?
出来ないんだろうなぁ。
今も新しい出会いを重ねているんだもの。

いやだよ。

明日そんな最後の日に。
またたくさんの皆様に逢えますように。
天に祈るしか出来ないけれど。

明日も暑い日になる。


映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
2019/5/18(土)~24(金) 上映時刻:16:45~19:10 全日程舞台挨拶予定
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/cinema/detail/1928/

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2019年05月23日

公開64日目

前日の大雨が嘘のような快晴。
どこまでも抜けていくような青空。
時々吹き抜ける風だけがその名残を残していた。

この日が大事だぞと自分の中で思っていた。
残り3回の上映。
どこまでお客様に来ていただけるだろう?
わからないまま映画館に向かった。

控室に行き、メンバーの到着を待つ。
今日の動員数を確認した。
自分が想定していたよりも少なかった。
でも平日に入って3日間、確実に人数が増えている。
そう自分に言い聞かす。

いつもとは緊張感が違う。
今日はスタッフとしてのカメラマンじゃないからだ。
ちゃんと壇上に立って、自分の言葉を伝えなくてはいけない。
人前に立つのだ。
自分が最後に占める予定だったときに、控室のドアが開いた。

監督が現れた。
観れたら上映を観ようと思っていたらしいけれど、間に合わなかったのだという。
ロビーでも挨拶をするというから、それなら登壇してくださいと伝える。
ロビーにいて、登壇していないのもおかしいし、役者と違って監督の顔は登壇しないとわからない。
ノープランのままで申し訳なかったけれど、それでお願いをした。
自分が最後に締めようと思っていたけれどそれはリセットして、一番手の挨拶に切り替える。
口にしようと思っていた話も、シンプルにまとめないとだ。

何年も一緒にいる仲間たちだけの控室。
まるで舞台の時の楽屋だ。
気楽に話をする。
けらけらと笑う。
カメラマンを頼んだ出演者も登壇した時よりもリラックスしている。
いつもの軽口。
いつものやりとり。
あの厳しい撮影中も、休憩所で繰り返されたやつだ。

でも本当は皆が心の中に持ってた。
今日が終わればあと二回の上映。
ふと監督が、なんか今になって始まったって感じがするよ。そんな言葉が。
いつもの軽口を瞬間止める。
ふらりと映画館に来たことは前にもあったけれど、登壇するのは初めてだった。
本当に上映が終わるのかな?
どうしょうもなく寂しくなるその一言だけは飲み込んだ。

壇上に上がる。
これまで観ていなかった風景。
座りやすそうな椅子にゆったりと座っているお客様。
その多くは初めてのお客様だった。
ご近所の方や、映画館の会員様もいらっしゃる。
やはりいつもよりも女性が多かった。

懐かしい仲間を見つけた。
生意気な後輩だったあいつだ。
舞台に来てもいつもあっという間に帰ってしまうのに、登壇を観てる。
なんだかやけに大人に見えて、自分だけ置いていかれているような気がしてしまう。
だからと言って自分が落ち着けば、がっかりされるのも知っているのだけれど。

そういえば今日6月終盤までの映画館のスケジュールが発表されていた。
あるわけないのに、セブンガールズの文字を探してしまう自分がいた。
既に決まっているスケジュールに割り込むことなんか出来るわけもないのに。
それぐらい横浜の街にセブンガールズは溶け込んでいる。
決して近くない場所に住む役者たちも足繁く通った場所だ。
なんとなくご近所の皆様の顔を覚えてしまっている場所だ。
あと2回あるのに、名残惜しさを感じてしまう。

いつか吹き抜ける風にしか名残は残らないのさ。

公開10週目 横浜 シネマ・ジャック&ベティ
メンズデーと最終日の2回だけとなった。
皆様、セブンガールズに会いに来てください。

きっとあの娼婦はあなたの心に風を残してくれます。

あと2日も精一杯で!


映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
2019/5/18(土)~24(金) 上映時刻:16:45~19:10 全日程舞台挨拶予定
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/cinema/detail/1928/

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