2019年04月14日

「!」というセリフだってセリフだった

稽古前日。
明日は台本があるだろうか?
あるといいなぁ。稽古が出来るといいなぁ。
まぁ、なければないでやることは山盛りなのだけれど。

監督と初めて会った時。
監督は台本を手書きで原稿用紙に書いていた。
自分がそれまで手にしていた台本で手書きというのはすごく少なかった。
すでにワープロがあったし、パソコンはまだそこまで普及してなかったけど印字が多かった。
もちろん手書きの台本もあったのだけれど、レポート用紙のようなものが多かった。
400字詰め原稿用紙というのはなんというか驚きだった。

それで二時間以上の舞台の台本を綴じるととんでもない厚さになるから。
有志でワープロに起こしてくれる役者がいた。
大体稽古場で配られるときは原稿用紙で、翌週にはその分の印字版が届いた。
実はこの手書きの台本が自分は大好きだった。
印字の台本の方が読みやすいし、荷物もかさばらない。
自分のセリフをすぐに見つけられるし、ページ数だって書かれている。
ほとんどの役者は印字されたのを早く欲しがっていた。
もちろん自分もすぐに手に入れたんだけれど。
それでも手書き版の魅力は強かった。

印字される前の手書きは、例えば筆圧がある。
ああ、ここは力強く書いてるなぁとか、ああ、ここは書き直したんだなぁとか。
他にも例えば擬音だと、全然書き方が違っていたりした。
ワープロで起こす前は、ひらがなやカタカナで書いている時もあった。
それと句読点。
監督独特のリズムが読点で表現されていた。
「・・・」という中黒3つが1マスの時と3マスの時があった。
「!」が2つも3つも1マスの中に書いてあることがあった。
読点は「間」ではなくて読みやすくするためのものだけれど、書いている時のリズムで打っていることがあった。
俳優として作家が何を思いながら書いているのかという情報量が印字の数倍はあったと思う。

それがある段階からノートブックを手に入れて、最初から出力されるようになった。
コピーや貼り付けが出来る、削除すればその文字列が詰まる。挿入も出来る。
改訂や推敲が格段にやりやすくなった分、自分の中で台本を練れるようになったと思う。
それは確実に台本のレベルが上がったことになったはずだ。
作家としてはこれ以上ないレベルアップなのだと思う。
手書きだと全部1から書き直さないといけないのだから。
頭の中のイメージと実際に書く時間が折り合わなくなっていたはずだ。

ただシンプルに作家と俳優という関係性においては別だ。
印字には書き直した苦しみは残っていない。
こぼしたコーヒーのシミは残っていない。
ここは強く言って欲しいんだなという筆圧は残っていない。
小さな「っ」が2つ並ぶこともなくなった。
役者だって印字の方が便利なのに。
同時に失うものだってあったと思う。

実はWebCMをやっている時に、ちょっとした台本書いてくださいと紙を渡した日がある。
かつてはさささと紙にペンでセリフを書き起こしていった。
そのスピード感、テンポ感が大好きだったし、そういうシンプルなものが欲しかった。
けれど、紙は良いやとノートブックを開いた。
キーボードを叩いている後ろから覗き込んだら。
推敲しながら書いていた。
流れやノリももちろんあるんだけれど、書いては消してを繰り返していた。
なんとなくその時、あ!書く時の思考パターンも変化しているんだ!と思った。
直流電源が交流電源になるような、パラレルな思考をしているなぁと感じたのだ。
あの一気に書き込んで消しゴムをこする感じと、ノートブックの画面を見る感じは少し違った。
それは少しワクワクすることだった。

それでもきっとノリでキーボードを叩き続ける時間がある。
もう筆圧でそれを感じることは出来ないけれど。
言葉のリズムでそれが残っている時がある。
あ、ここどんどん集中して、乗って書いたなぁってシーンが必ずある。
役者としてはそのグルーヴを崩さずに演じたいなぁといつも思うシーンだ。
そしてそういうシーンが今もたまらなく大好きだ。

今でも。
歌詞だけは手書きの時がある。
あれはなんだろう?
素敵だなぁって思う。
まぁ、その手書きの歌詞を見たのも何年前だって話だけれど。

作家が書いている時の心理を俳優はある程度再現しなくてはいけない。
だって、作家は頭の中で芝居をしているのだから。
そのイメージを理解した上で、自分の肉体というフィルターを通すのだ。
絶対に作家の頭の中と同じものは出てこないけれど。
それでも狙いがハッキリする人としない人とは、そこに差があるのかもしれない。

さて。
台本はあるかなぁ。
ないかもなぁ。
・・・なくてもやることは山盛りなのだけれど。

台本から役者はどれだけの情報を得ることが出来るだろう?
実はそれを演じることと同じぐらい、観ることが大好きだ。

結局、稽古が好きだ。


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横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/cinema/detail/1928/
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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:59| Comment(0) | 映画公開中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする