2019年04月03日

目に映らない俳優

時代劇には人が大勢必要になるシーンがある。
例えば合戦シーンなどは人手が必要になってくる。
そういう場面場面で常に呼ばれている俳優たちがいる。
当然、一般的に名前が知られているかと言われたらそうじゃない。
そして裕福なわけでもない。
それでもドラマや映画製作には欠かせない人たちだ。

今日はそんな時代劇のヘルプに行く。
数は少ないけれど何度かお邪魔している。
きちんと役者としてギャランティの出る仕事だ。
行けばベテランの俳優たちがいて、当たり前に和装着物を着こなし。
当たり前にその場で着いた殺陣をあっさりと演じる。
場合によっては役付きの俳優に簡単にアドバイスするような時だってあった。

呼んでくれるのは劇団で殺陣を付けてくれていた荻野さんに人手が必要と連絡があった時だけだ。
荻野さん経由で空いてないか?と確認の連絡が来る。
荻野さんは、かの有名なヒーローのスーツアクターまでやった人だ。
スーツを着ているから決して人に顔を覚えられることはない。
けれど子供たちはそのヒーローに常に憧れている。
子供たちの憧れの存在として、アクションに関するあらゆる稽古をしている。

そんな俳優がいるってことはどのぐらい知られているのだろう?

例えば荻野さんの師匠の一人である方は「太陽にほえろ」でショーケンこと萩原健一さんのマカロニを殺す役だった。
マカロニのクライマックス、日本の刑事ドラマの中でも屈指の名シーン。
そのシーンを作り出すために、マカロニに感情移入するような芝居を追求したはずで。
役者ならだれでも、ショーケンだけではそのシーンが創れないことはわかっているはずで。
それでも当たり前なのかもしれないけれど、誰も名前さえ知らない。
(いつかその先輩と松本城下をなぜか二人で散歩したけれど、話すだけで大変な勉強になった)
ある意味で一般的にはスタッフの延長線上にある俳優という存在なのかもしれない。

そんな諸先輩方がいる場所でメイクをしてかつらをつけて着物を着て脚絆をつける。
まぁ、自分は意外にそういう場所にいるのが平気というか緊張しないのだけれど。
だから結構、冷静に周りを観察できた。
役付きのいわゆる名前のある役の若い俳優たちは先輩たちをどう見ているのかなぁなんて観察する。
学ぶことたくさんあるぜって思いながら。

商業演劇に出続けている職業俳優や、アクション専門の職業俳優、様々な俳優がいる。
実際にギャランティを受けて、何よりも優先して役者の仕事をしている人たちが。
一般の人がエキストラと思っているかもしれないけれどそうじゃない俳優がいる。
侍の所作を、アクションという技術を、発声を、訓練し続けている俳優が。
衣装さんや床山さん、小道具さん、皆、そんな俳優たちをリスペクトしていることがわかる。
そういうことは世の中に伝わらないだけで。

いつだったか。
もう何年前かも忘れたけれど。
同じように荻野さんから大河ドラマのヘルプの仕事があって行ったことがある。
その時、北大路欣也さんが出演されていたのだけれど。
現場に入るなり、そんな俳優たちの下にわざわざ足を運んで、深々と頭を下げて「よろしくお願いします」と言ってくれたことがあった。
その時は、ああ、役者とは、俳優とは、そういうことに真剣に何年も向き合っている人とはこういう人だ。
そんなことをつくづく感じた。
大スターなのにそんなことが出来るのは「俳優」だからだ。
訓練して体得した俳優という職業を見抜いているからだ。

彼らにとっての自慢は作品だ。
あの作品に出てるんだ。とかそんな軽いものには思えない。
あの作品を創った一人だという矜持がある。
自分の顔が映らなくても、場合によってはテロップにも出ない場合も。
目には見えないような仕事をしている場合も。

じゃあ自分はどうなのか?と思う。
自分が憧れた俳優たちを思う。
その半数は世間的には誰にも知られないような俳優でもある。
そして自分も俳優とは、職人であるべきだという認識が強くある。
芸能なのだという強い矜持がある。
それでも発信し続けないではいられない。
そして舞台とかアクションとか一つに特化した俳優になろうとは思っていない。

午前中の稽古から、準備、待ち時間、本番まで結局夜までだった。
長い一日が終わったけれど。
その間にいくつかの連絡事項をまめにやっておいた。
同時にいくつかのラインが走っている。
こういう日でもそれを止めるのは厭だった。

演じていれば自分の中の何かが目覚めて満足しそうになる。
ああ、自分は今芝居をしていると、体に沁み込んでいく。
でもそれで満足するな!という冷静な自分がそこにいた。
明日の、明後日の、来月の、未来のことまで。
忘れるな。
そんな自分が常にそこにいた。

明日以降も撮影は続く。
自分は行くことはないけれど。
俳優たちは日々、演じ続けていく。


映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
2019/5/18~24
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/

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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:34| Comment(0) | 映画公開中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする