2019年03月27日

刺激ってのは知らないものからしかもらえない

まだ舞台音響がオープンリールの時代に音響操作をしたことがある。
先輩の舞台のスタッフとして何度か入った。
代々後輩が手伝うという伝統が何故かあって、自分の舞台の時に音響をやってくれた後輩が二人いる。
そのうちの一人が今、映画の製作などの仕事もしていてどこかで観に行こうと決めていた。
何度かチャンスがあったのだけど「月夜釜合戦」という映画の告知を見て、あ、これかなと思った。
なんだろう?こういう直感は大事にしたい。

舞台は釜ヶ崎。大阪のドヤ街。
山谷、寿町に並ぶ日本三大ドヤ街の中でも最大の場所。
高校時代に暴動の映像を授業で観たあの場所。
今も飛田新地という青線が残ってる数少ない地域。
登場人物は、スリ師に街娼、ヤクザにみなしご。日雇い労働者。
釜を巡るドタバタな騒動を描く。

ドヤ街の映像と言えばドキュメンタリーばかりというイメージがある。
実際にその地で撮影をするのは困難を極めるはずだ。
家族を捨ててドヤ街に辿り着いた人、前科がある人などがたくさんいる地域。
中には現在も軽いものも含めて犯罪に手を染めている人だっている。
カメラに映ることを極端に嫌がる人が必ずドキュメンタリーではいる。
そういう地域で、実際に16mmフィルムで撮影された作品だった。
なぜこの作品に惹かれたのかなぁと思ったのだけれど。
冒頭で街娼を禁ずる看板が出てきてすぐに理解した。
この作品には土と垢の匂いがしみ込んでいるはずだと直感していたのだ。
それはセブンガールズと繋がっている物語なのだと。

川瀬さんの演じる主人公のスリ師が、黒シャツでガニ股で、成瀬に見える瞬間があった。
ああ、これか。これを観たかったのかぁと腑に落ちていった。
あのフィルムのどこかのシーンに自分が映っているんじゃないかと錯覚をした。

過酷な環境で生きている。
それも生き生きと。
そのテーマはそのままセブンガールズに繋がっていた。
基本的に涙するようなシーンは少ないのだけれど。
確実に流れているテーマは同じものを掴んでいた。
いや、もしかしたら成瀬の持つテーマと繋がっていたのかもしれない。

残念だったのは後輩と会えなかったこと。
何度もチャンスがあるのになかなか逢えないものだなぁ。
オープンリールをカットしては繋いだ後輩と。
フィルムで撮影された作品について話すなんて素敵だと思ったんだけどなぁ。

実はそれとは別に今日少し初めての方とのやり取りがあって。
それも刺激的で面白かったのだけれど。

帰りの電車に揺られながら急に自信が漲ってきた。

なんだろう?
それまで権威的に感じていたものが共同幻想に過ぎないと急に頭に降りてきた。
例えばヨーロッパの映画文化はすごいなんて無意識に思っている自分がいたのだけれど。
そんなの幻想に過ぎないかと思うようになった。
もちろん文化そのものへの取り組みの違いが国や国民性で違うのだけれど。
作品単位で考えたら、そこまですごいと思うこともねぇなと思い始めた。
むしろヨーロッパの方が遅れている部分だってたくさんあるのだから。
まぁ、それは例えばという事だけれど。
権威的に感じてコンプレックスを持つ必要性が欠片もないと体で理解した感じだ。
むしろ、こんなの向こうの人は、わかんないんだろうなぁぐらいの余裕がある。
逆に日本人じゃ到底わからないことがあるように。
そのぐらい局地的に進化した部分をたくさん持ってる。

例えば世界最大の映画祭であるカンヌのあるフランス。
国の文化だと補助金も出てたくさんの映画が生まれているはずなのに。
フランスの観客動員ランキングを見るとハリウッド映画の方が強い。
どこかフランスの映画人はハリウッド映画を馬鹿にしてるんじゃないかと思い込んでいたけれど。
それに対して日本は、今は洋画と邦画がアニメまで含めたら、邦画の方が強い。
あれあれあれ?と思う。
自分の中でヨーロッパの映画文化が肥大していた証拠だ。
だから駄目になったという事ではなくて、そこまで権威的に考える必要なんかないのだ。
フランス映画界は必死になって映画文化を守ろうとしているはずだ。
そして邦画はある意味とてもよくやっているのかもしれない。

もちろんそれは一端に過ぎないけれど。
例えば、映画に出ている俳優ってすごいのかなぁと思っていたけれど。
別にそこまですごいと思う必要もないかもなぁと思い始めた。
あ、こんなことも見抜けないのか・・・っていう側面をたくさん目にしてきたからかもしれない。
もちろん素晴らしい作品、素晴らしい演技はたくさんあるのだけれど。
必要以上に自分の中で見上げすぎているかもしれないなぁと、すっと降りてきた。
観下げているわけではなくて、フラットになった感覚。
うまく説明できないのだけれど。

ユーロスペースでそのぐらいあっけらかんと堂々と映画が上映されていたからかもしれない。

いや、セブンガールズすごいじゃんね。
やっぱ面白いじゃんね。
これわからない人たちがいるとしたら、かわいそうだなぁ。
楽しみ方がわからない人もいるんだろうけれどなぁ。
そんなことを思いながら夜道を歩いた。

先日のシネマ・ロサ、今日のユーロスペース。
大きなスクリーンで映画を観たせいか、ジャックアンドベティを思ってワクワクしている自分がいた。
トリウッドにもUPLINKにもない大きさ。
K'sシネマ以来になるのかなあ。
それを想像してしまう。

本当、セブンガールズはもっとたくさんのたくさんの人にスクリーンで観てもらわないといけない作品だ。
とんでもないと思う人もいるし。
「これは映画じゃない!」なんて言葉も出てくるだろう。
そんな言葉が出てくるならしめたものだぜ。
だって映画なんだから。
そんな言葉が出てきたとしたら、初体験と告白しているようなものだ。
今はそんな風に思える。

さてと、企むか。
大きな大きなカタルシスのために。

大いに刺激を受けた日になった。


映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
2019/5/18~24
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/

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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:30| Comment(0) | 映画公開中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする