池袋に行く。
先日、居酒屋で話をした監督の作品の初日だった。
行ける日を考えればあまりないし、初日が良いなぁと思っていた。
ただ初日はどれだけ混雑するのかもわからなかったから早めに行って予約することにした。
数時間の時間をつぶすのもわけない街だ。
なんと言っても、ここは自分の青春の街だからだ。
ここで芝居の勉強を始めた。
2年間通った後に7年間ここで一人暮らしをした。
池袋のどこをどう進めばどこに出るのか、全て体で覚えている。
ハイティーンから20代の殆どの青春をここで過ごしたのだ。
嬉しくて号泣しながら酔いつぶれた日も。
好きな人と映画館に行った日も。
失恋した日も、すべてこの街で過ごした。
チケットの予約をしてから、まず行きたい喫茶店に向かった。
どこにも喫茶店はなかった。
その後、懐かしい中華料理屋に向かった。
どこにも中華料理屋はなかった。
しぶしぶ自分が住んでいた家の方まで歩いていく。
もうあのアパートはないかもしれないけれど。
せめてその辺にあった定食屋はあるだろうかと思った。
その定食屋もどこにもなかった。
街は大きく変わっていない。
東が西武で西が東武、立教通り、ロサ会館。
けれどディティールが変わっている。
IWGPも工事中だった。
仕方なく噂のラーメン屋で腹ごしらえをして、ふらふらと散歩してからお茶をして時間をやり過ごした。
どこに行ってもあの日の自分がその辺にいそうだった。
色々な店はなくなっているのに。
あの怪しげな池袋からはだいぶ垢抜けているというのに。
そろそろ映画館に入場できる時間だから映画館の傍の喫煙所に向かった。
一服してから映画館に入ろうと火をつけると。
「カメラを止めるな！」の上田慎一郎監督がトレードマークの帽子じゃない格好で普通に現れた。
K'sシネマで挨拶をして以来だから覚えていないかもしれないけれど挨拶をした。
今日観る映画の監督と上田監督とは一緒に6畳一間のアパートで暮らしていたほどの戦友。
初日舞台挨拶のMCをすることになっていた。
先日、一緒にお酒を飲んで伺いましたよ！なんて話をする。
映画を観る時間をとれないと寂しそうに口にしている。
忙しいのだろうなぁ。
それでも戦友の門出に駆け付けてきた。
大学時代にシナリオを書き。
2011年に撮影をして。
東日本大震災当日も撮影していたという。
撮影が止まり、アルバイトで貯金をしては撮影を再開。
5年後の2016年に完成披露。
それから更に公開まで3年の月日を要した作品。
シナリオを書いてから10年、撮影を開始してから8年。
いつどこでつまづいてもおかしくなかったはずだ。
20代の全てを注ぎ込んだ作品。
公開したいという思いが続かなければこの日はやってこなかった。
その初日に立ち会わなくちゃいけないなぁと思っていた。
初日、舞台挨拶。
監督は号泣していた。
かつて6畳一間でこの映画の初期を知っている上田監督まで泣きだした。
セブンガールズの初日を思い出してしまう。
強い思いは必ず届く。
だけどさ。
強い思いは誰だって持てるものだけれど。
その強い思いを継続することは誰にでも出来ることじゃない。
続けることはそれ自体がパワーだ。
そりゃ当然毎日毎時間同じテンションなわけがないんだけれどさ。
それでも続くって言う事は落ちた日も、もう一度持ち上げて来たってことなのだから。
一番大変なことは続けることだ。
自分が芝居を始めた場所で。
そんな続けてきた強い思いを目にして。
ああ、自分も芝居をもう28年も続けてきたのだと改めて思った。
なんという時間だろう。
産まれてから芝居をしていない時間の方が少なくなる日が来るなんて。
ロサ会館は今もピンクだった。
相変わらずビルには「ディスコ」なんて書いてある。
吉野家は別の牛丼屋だったけど、他の店はそんなに変わってない。
シネマ・ロサで映画を観たのは何度目だろう？
道路を渡った立ち食いの君塚で食事を摂れば良かったかなぁと今更ながら後悔している。
天丼ふじは少し値上げしていたなぁ。
この街には自分の涙や笑顔が染み付きすぎていてセンチメンタルになっちまうぜ。
続けることだ。
一歩、一歩。
前に足を出すことだ。
その一歩が道になると信じるしかない。
強い思いは届くのだから。
映画「セブンガールズ」
公式サイト：http://sevengirls.info/
2019/5/18～24
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ：http://www.jackandbetty.net/
■SNS
Twitter：https://twitter.com/7girlsmovie
紹介記事
■girlswalkerhttps://girlswalker.com/archives/180503/
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