2019年03月15日

「狂気を感じる」という高い評価?

肌の向こうに狂気を感じる。
そんな風に俳優が評価されていることがある。
俳優本人はそれをどう受け止めればいいのだろう?
それを見せようとしているのか、それが出ているのか、それを撮影しているのか。
とにかく不思議なことはそれが意外にも高い評価の一つであることだ。

なぜ狂気を感じるだけでそれが高い評価なのかというのを今日まで何度も考えた。
観たいのだろうか?狂気を。
少なくても自分はそこまで興味がないのだけれど。
俳優からすれば、アブない奴ってことなんだろうか?

例えば無表情に人を刺すような演技。
例えば笑いながら人を騙すような演技。
奇声を発しながら刃物を振り回すような演技。
そういうわかりやすい演技は意外にも俳優たちの中ではそれほど評価が高くない。
あんなもんある程度経験したら誰でもできるよなぁって口にする。
実は俳優にとってはベタなチョイスだ。
経験の少ない若い俳優が選びがちな芝居でもある。
けれどやっぱり非常に世間的には高い評価が返ってくる。
そしてそんな時に繰り返されるのが「狂気」という言葉だ。

自分に置き換えるともう高校生の頃にはお前には狂気を感じると言われた経験がある。
まだ芝居なんか始める前だけれど。
学校の中でも悪い方のやつに言われた。
ええ!?と驚いた記憶がある。
ガキの少ない語彙の中からの言葉だから大した意味があったとも思えないけれど。
要するに自分の想定外、経験外に位置する行動をとるという意味でしかなかったと思う。
初対面の印象がそうだったという人も意外にいて、不安になる。

舞台では白石加代子さんがいる。
アンダーグラウンドの創成期に狂気の女優と言われた伝説の舞台女優だった。
白目をむき顔を引きつらせた白黒の写真は白石さんの代名詞だった。
憑依型と呼ばれて、そこに観たこともない人外を登場させた。
今の大河の「いだてん」でも何を考えているかわかりづらい母親役を演じていたけれど。
実はあまりにも素晴らしい演技に胸を打たれた。
狂気なんて言う簡単な評価で表せる芝居じゃなかった。

狂気という言葉には「狂」という字が含まれているからわかりづらいのかもしれない。
そもそも何をもって「狂」というのか。
それは恐らく病的な「狂」ではない。
社会性を持つ人間の生活の中で理性という強烈な皮の向こうにある「本能」のことだ。
欲望に忠実な本来誰もが持っている「本能」「欲望」
或いは、その理性の皮を、意識的に構築しているように見えることかもしれない。
意識的に理性を保っているという事は、いつだって意識的に理性をはぎ取ることが出来るから。
もしそういうことであるのならば、ある種の俳優は誰もがそれを持っているのだけれど。
役者とは自意識との戦いなのだから。

本物のアウトレイジだった!なんて評価はバカバカしいにもほどがある。
まぁ、監督の北野武さんが前科持ちだけどね。
そんな評価を書いていると監督が鼻で笑うぜ。

ただふと逆を思うのだ。
じゃあ狂気を感じない俳優ってなんなのだろうと。
恐らく「狂気」とは生きているすべての人間が持つものなのじゃないだろうか?
誰もがそんな狂気を抱えていて、抱えているけれどそれを隠したり守ったりしている。
それが見えない俳優というのはむしろ問題があるに思う。
その人物を演じるうえで本質まで含めた演技であれば「狂気」が見え隠れするのは普通のことで。
本来俳優であれば、持っているべき基本的なスペックでしかないと思うべきなのかもしれない。

さて、じゃあ自分がどんな人に狂気を感じるのかと言われたら・・・
と思ったけれど、それは書かないでおく。
恐らくは世間的に言われているような人たちとは全然違う人たちになってしまうから。
だって、むしろ良い人と言われている人ばかりが頭に思い浮かぶのだもの。
なぜか高評価の時に使われる「狂気」という言葉を、悪い意味に使ってしまいそうで怖くなる。
そんなことは真意ではない。

魅力的なのは。
その肌の下に眠る本能。
プリミティブな欲求。

誰もが抑えつけている何かを俳優は炸裂させる。
その代理行為から来る満足感、会心、爽快感はそのままエンターテイメントになる。
上司にたてついたり、厭な奴をぶんなぐったり、好きな男に抱き着いたり。
我慢してしまうような場所で、物語という説得力と、演技力という説得力でそれを為す。

きっと人は誰もが自分を探している。
生きていながら自分がわからなくなる。
自分の中のコントロールできない部分に気付いている。
突如やってくる感情の波を知っているから。
だからこそ俳優がいる。
他者を通して、人は自分を知るのかもしれない。
合わせ鏡だ。

「狂気」という言葉で俳優を評価している時。
それは評価している当人の心に眠る本能的な部分を吐露しているのと変わらないのかもしれない。


映画「セブンガールズ」
公式サイト:http://sevengirls.info/
2019/5/18~24
横浜 シネマ・ジャックアンドベティ:http://www.jackandbetty.net/

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posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 05:02| Comment(0) | 映画公開中 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする