午後から雪がぱらついてくる。
予報で行っていた都心部も積雪とまでは行かなくて胸をなでおろす。
雪でも行きます!と宣言してくださっているお客様の足元や交通が気になっていた。
積雪はないまでも、ぱらつく雪で新しいお客様が外出を控えたのは仕方がない。
折角の三連休、ここで!と思っていたけれど、こればかりは神様にしかわからないのだから。
下北沢に行くと想像していたよりも人手があった。
前日の閑散とした雰囲気とは違っていた。
予報されていた雪が少ないという部分でなのだろうか?
それとも三連休の初日でなのだろうか?
いや、下北沢はやっぱりイベントの街なのだ。
舞台があり、ライブがあり、映画があり。
三連休はどこもイベントの企画をしているはずで人手があるのだ。
もちろん、ウィンドウショッピングや、食べ歩きなんかの人出はきっと減っているはずで。
それでも、ここまで人がいるのがやっぱり下北沢だった。
到着するとすでに吉田トオルさんも他の登壇者も集合していた。
必要事項や、伝えるべきことは確認して、後は雑談をする。
この雑談が重要でその中からトークイベントのネタがみつかったりもする。
自分は監督と吉田トオルさんの間にずっと立っていた。
トオルさんの音楽を受け取り、映像と合わせて監督に確認してもらう。
そんなやり取りをずっとやってきた。
だから、セブンガールズの劇伴曲についてのことは殆ど知っている。
製作過程で最初の曲から全てを聴いている。
タイミング、きっかけ、編集過程での変更、使われなかった曲まで。
その過程の中で宝物のような話が山のようにある。
そのどれが話題になってもきっとお客様にとっては新鮮で面白い話だと思っていた。
けれど、実は知っているのは自分だけで、出演者の殆どが知らない話でもあった。
え?そうだったんですか!?なんて出演者が驚くのは新鮮だった。
確かに、そんな色々な話は共有のしようがないのだ。
音楽を知っている二人だから出来た話でもあった。
コード進行が同じ・・という言葉だって、音楽を知っているから出来る。
コード進行ってなんですか?という質問が上がれば、面白みが減ってしまう。
リズムパターンを揃えた、テンポは違うけれど・・・という話だってそうだ。
テンポが違うのに揃えるってことがイメージ共有できるかどうかでトークの流れが変わる。
雑談の中で、どんどん安心していった。
基本的な部分での質問が出ないから話題の移り変わりが早かった。
いつものように映画館に移動して、写真撮影をして控えている。
場内から拍手を聞いて、ああ、三連休、予定を組んでくださった方がたくさんいるとわかった。
場内に入れば、想像以上にお客様が着座されていた。
そして、新規のお客様が今日も来てくださっていた。
下北沢トリウッドでの上映をしてからのお客様が少なからずいらっしゃる。
音楽の話が始まる。
一番後ろから写真撮影をしていると、何人ものお客様が何度も頷いているのが分かった。
こんな話は早々聞けるものではないはずだ。
製作過程を知っている自分からすればほぼ全て知っている話なのだけれど。
やっぱり、お客様にも出演者にも、驚くような新鮮な話が多かった。
このシーンの曲は組曲になっているんです。
いくつかの曲が重なって続いて、1つの組曲になっている。
それが、映画の中で流れている。
映画鑑賞と一言で言うけれど、映画音楽という視点から映画を観るのはきっと音楽家だけだ。
新しい視点は、新しい興味を産み出す。
多くのお客様が、もう一度観て、音楽を確かめたいと口にしたのは、きっと新しい視点の追加でだ。
前日の上映にも来てくださったお客様が、昨日の話を聞いたからか、すごく泣けたと言ってくださった。
役者の主観・・・猫という役がどんなことを想いながら演じていたのかの話だった。
その視点が追加されてから映画を観れば感情移入が変わる。
本当なら全てのお客様に聞かせたいけれど、まだ見ていない方を想えば公開することも出来ない話だ。
ロビーでのご挨拶の頃に監督がやってくる。
お客様への挨拶を一緒になってする。
トオルさんを観に来てくださったお客様たちがとてもかわいかった。
他のお客様の迷惑にならないようにじぃっと待ってた。
トオルさんが空いた時に、チャンスだよと声を掛けた。
ああやって純粋にドキドキして待っているというのは本当に素敵だと思った。
自分は映画館のスタッフだと思われたかもなぁなんて感じつつも。
トオルさんに会いに来て、じぃっと待っている姿に声をかけないことなんて出来ない。
こんなに目をキラキラして喜んでくださっているのだから。
全てが終わってから、監督も一緒に珍しく飲みに行った。
監督とトオルさんが飲み屋にいるのは意外に珍しいことに気付く。
話もやっぱり面白い。
監督も対談形式の登壇の面白さをすごい速さで理解していて、自分の登壇の時の話と合わせて頷いている。
飲み終わって下北沢の街を駅まで歩いた。
持ってきたはずの傘を持っていないことに気付いた。
映画館に忘れてきてしまったのだ。
連日行くのだから、明日、持って帰ればいい。
見上げれば、未だに雪はパラついていた。
積もることはないだろうなぁと思いながら。
この雪を忘れることはないんだろうなぁと思った。
連休はまだ続く。
連休の最終日も雪だという予報もある。
この三連休、セブンガールズはどんな結果を出せるのだろうか?
神様にしかわからないのかもしれない。