早めに稽古場に到着する。
今日話す内容を頭の中で整理する。
別に文書化したものを配ったりはしない。
稽古場では伝えるべきことを伝えなくちゃいけない。
少なくても自分が把握していることはほぼ伝えるようにしている。
もちろん理解度はそれぞれだし、聞いてるのかなぁ?なんて人もいないわけじゃない。
それでも関係なく、伝える。
伝わっていないのだとしたら、次を考えればいい。
年末のUPLINK渋谷では出演者に負荷をかけすぎたかもしれないと反省している。
準備や、緊張感、責任感、色々大変だっただろうなぁと思っていて。
その中でも自分が反省している部分、それぞれ言うべきだったこと。
その辺も口にしていく。
それはしなくてもいいかもしれないというのも自分の中に一部あったけれど。
それでも、やっぱり、全員で進んでいくためには、どんなことでも共有したい。
監督が稽古場に到着して、監督も話し出す。
驚いたのは、監督も反省の弁を少し交えていた事。
それはちょっと想像していなかった。
それは「これから」「ここから」について考えているからこそ。
基本的には良かったことを口にしながら、自分はこれが出来たと思うということも口にした。
実は、劇団主宰としての言葉としては、数年に一度しかそういう事はない。
反省会は公演が終わってから、振り返りとしての反省だから、ブレる姿はあまり見せない。
今回は、また来週から始まる一歩一歩に向けているからこそ、そんな言葉も出る。
とても健全だ。
監督もだけれど。
自分を一つだけ後ろに置くということを、とてもよく出来ている。
自分たちは監督を立てて、監督は役者を立てようとする。
そういう美しい姿が登壇イベントで続いたことは、正直、毎日感動していた。
やれそうでやれないことだ。
特に役者なんて言う生き物は自分が目立ちたいと思いがちなわけで。
そこを一歩引く姿が、かえって美しくなるなんてことに気付かない生物なわけで。
自分の中では、20年間も共に歩んできた仲間がそこまで考えている姿にずっと痺れている。
ミニシアターで勢いのある映画というのを見ると、実に若い。
監督は40代、俳優は10代後半から20代なんてことが多くて。
すごくあっけらかんと、楽しそうに、映画上映を発表している。
登壇イベントでも、きっと、明るくて楽しいイベントをしているのだと思う。
そして、それがブームに繋がっていきそうな雰囲気だって持ってる。
羨ましいなぁと思う部分もあるし、素晴らしいなぁと思っているし、むしろ、自分たちの記憶にもその時期があった。
自分たちも実際は、そんなふうに楽しそうにわいわいとあっけらかんと、上映に向かうことができる。
それはもう経験済みだし、よくわかっているし、真面目にやってても、どこかでこぼれてしまう。
でもセブンガールズは、ちょっと考えられないほど、ミニシアターで自主映画で盛り上がっている中では、ベテランが多い。
監督だって、もう若い年齢ではなく、漫画原作やエッセーや、とにかく芸能の世界でもあらゆる経験をしてきてる。
出演者だって、20年も続いた劇団で芝居を続けてきたベテランばかりで、苦しんだり悩んだりした年輪を持ってる。
そんな自分たちが、若い作品に、勢いで負けるわけにはいかんよなと思っている。
若さという傍若無人な勢いのすさまじさなら身をもって知っているわけだけれど。
平均年齢が40歳を超える海千山千の連中が、本気を出して映画に臨むパワーは違う力を持っている。
普通は落ち着いてね。真面目にね。淡々とやるのが色々知ってきた大人ってものなのかもしれないけれど。
大人になっているのに、どこまでもあがくというやり方は、どう写っているだろう?
みっともないとか、恥ずかしいとか思う人もいるかもしれないけれど。
自分の中では、誇りであり、胸を張って、こいつらを紹介したいと日々思うばかりだ。
こんな馬鹿げた連中、見たいもん。
泥まみれになって、バラック小屋立てて、チャリンコでロケ地探して。
上映になったら、毎日、なんかやろうぜ!なんて騒いでいるおじさま。
女優たちが踊れば、ニコニコ応援している。
自分が十代の頃に憧れた姿そのものだ。
それに、この人たちはいざ責任ある役だった場合は、ちゃんと背筋を伸ばせる。
若い映画がどんどん盛り上がればいい。
そうすればそうするほど、セブンガールズってなんなんだよ!ってことになっていく。
皆で集まって、登壇イベントの反省をしたり、これからについて必死に考えたり。
そんなことまでしてるの?ってことまでしてやるのだ。
それが、自分たちが知っているかっこよさってやつだから。
だからこそ、どんどんミニシアターの世界が盛り上がってくれたらいいなぁと思った。
今日は現状とこれからを伝えきれただろうか?
今、何をやっていて、何処に向かっているか少しだけでも見えただろうか?
何年も付き合っていても、完全な以心伝心ではないよ。
別にいいんだ、それで。
また今度伝えていけばいいから。
ただ、すごくシンプルに。
いつも、この人たちに憧れているんだと思う。
自分は。