実家に行ってのし餅を切る。
力仕事ではあって、毎年の自分の仕事になりつつある。
餅つき機だとしても、ついた餅と売っている餅は伸びが違う。
毎年正月は、餅ばかり食べても飽きない。
そうこうしながら稽古場までチラシとポスターを取りに行ってくれるメンバーと連絡。
手に入れたのならあとは下北沢トリウッドに納品なのだけれど、どうやって受け取るかなぁと考えていた。
そしたら、取りに行った足でそのまま納品までしてくれた。
とってもありがたい。
動けるから撮りに行くとは聞いていたけれど、納品までしてくれるとは。
納品希望が来てから数日で納品しているという事も良い。
ただ、これでストックのチラシがほぼなくなってしまった。
効率的に撒いているのか、再検討する必要がある。
チラシの印刷代金だって塵も積もれば山となる。
興味を持ってくださった方が手に出来なかったり、映画館で手に出来ないなんてことはあってはならない。
出演者が持っていたいという数が揃っていなかったりするのも良くない。
再印刷が必要なことは間違いないけれど、枚数を間違えるわけにもいかない。
公開したけれど、まだスタート地点なのだと思えば、そこまで考えなくちゃいけない。
知らなかったこと、わからなかったこと。
そういうことがたくさんあったけれど、だんだんとわかってきた。
演劇の世界とは違う事もたくさんあるし、勘違いしていたこともたくさんある。
チラシで言えば、大きな映画ほど、公開中にはすでにチラシがないという事も多いようだ。
公開日までの宣伝にとにかく力を入れる。
公開後は、チラシの持つ役割はほぼなくなっているのかもしれない。
ネット情報やネットニュース、レビュー、口コミ。テレビCM。
情報はあらゆる場所から手に入るし、映画館で映画のチラシを手にする人たちには情報が行き届いている。
そもそも知名度の少ないミニシアター系の映画とは大きく趣が違う。
ある程度まで情報が広まれば、コレクターズアイテム以上の意味がなくなるのかもしれない。
セブンガールズの知名度は残念ながらまだまだ低い。
一般層はおろか、映画ファンにだって、隅々まで届いていない。
例えば名古屋シネマテークでの上映に当たって、名古屋にいる映画ファンにまで浸透しているだろうか?
UPLINK渋谷での3週間で、どこまで噂が広がっているだろうか?
恐らくUPLINK前と今では比較にならないほど届いているはずだけれど、その浸透度までは計ることが出来ない。
反省点としては、自分たちがよく話していたことが余りにも盲目的だったことだ。
例えば、10代、20代の人たちに観て欲しいと自分たちはよく口にしていたけれど。
想像以上に、ミニシアター系の映画ファンに若い層が薄い。
他の映画を観ても、若いファンというのはもちろんゼロじゃないけれど、圧倒的に少ない。
そもそもの母数が、団塊世代と団塊ジュニア世代が厚いという部分があったとしてもだ。
シアターセブンの担当者さんと話した限りでは、ミニシアターの観客年齢層は高いですよという一言だった。
それはそうなのかもしれない。
もちろん10代20代以外のお客様にも観ていただきたいのだから関係ないとも言えるけれど。
若い世代に観て欲しいという思いがあるとしたら、それはもっとずっと先の話だと分かった。
(とは言え、サブカルの聖地下北沢は、他の地域よりも若い世代が多いかもしれない)
かつて単館系と呼ばれていた頃。
20代の自分たちはよく映画館に通っていたのだけれど。
どうしてもそのイメージが強かったのかもしれない。
反省ばかりしてもしょうがないのだけれど。
反省をきちんとしておかなくては、その先がなくなる。
自分がやろうと思っていることは残念ながらそんなに簡単なことではない。
UPLINK渋谷での最初の2週間のイベント名は全て〇〇ナイトという名前で。
この〇〇の後ろに「映画」とつけられるようにしてあった。
ラブストーリーであったり、アクションであったり、映画の側面としてだ。
その中で、サクセスストーリーだけちょっと無理があったというか、そぐわなかったなぁと反省している。
サクセスストーリーとは成功者にとってのその成功するまでの道程を物語にするものだ。
王様の誕生や、企業再生や、スター誕生であったりも全てサクセスストーリーになる。
セブンガールズにサクセスがあるか?と聞かれたら、自分はあると思っているのだけれど。
あんまり、そういうイメージはないのかもしれない。
それに、セブンガールズにもし本当の意味でサクセスストーリーが生まれるとしたら。
それは作品の外なのかもしれない。
「セブンガールズ映画化」こそサクセスストーリーであって、公開している今だって奇跡なのだけれど。
本当の意味でサクセスストーリーになるには、まだまだ足りないものがあるんだろうなぁと思った。
このサクセスストーリーをどれだけ具体的にイメージとして共有化できるのかはここからの鍵だ。
UPLINK渋谷の先までイメージを共有できていたのか、そこはもう一度考え直さなくちゃいけない。
目の前の上映に集中しなくちゃいけないのだから、ある程度は仕方がないとしても。
プレスリリースも想像以上に引っかかることはなかった。
上映中何度もマスコミ宛にリリースを出したけれど、ニュースにならなかった。
そのぐらいの規模だと判断されているのだろう。
ある程度は想像していたけれど、それにしてもだった。
相手にされていないなぁというのは、とってもよくわかった。
まぁ、それはそれで良いのかもしれない。
それならそれで、ひとつのアングルだから。
そして、そのアングルでしか生まれないサクセスだってあるのだから。
問題は、そのサクセスをどれだけ積み重ねることが出来るかだ。
ミニシアターを中心とする映画ファンの評価の総括もしなくてはいけない。
自分の中では、映画ファンの評価はフィフティフィフティかな?と想像していた。
けれど、それよりも少し良い成績だったように思っている。
想像よりもミニシアター系の映画ファンでも娯楽作品を受け入れる土壌が整っていた。
「舞台っぽい」という評価が出るのは実は予想通りだった。
けれど、予想したよりも、舞台観劇経験の少ないお客様ほど、そんな感想になっていた。
理由は監督が登壇した時に話したこともあるし、それ以外もあると思う。
何よりも舞台だけが持つはずのリアルを映画にも持ち込んでいる部分なのだと思う。
ドキュメンタリーやモキュメンタリー、撮影方法などのリアルとは明らかに違う演技的アプローチのリアル。
知っている人と知らない人では受け取り方が大きく変わってくるのかもしれない。
ここは、実はもっともっと拒否する人がいて、議論になっていい箇所だと思っている。
舞台を知っている人は、ぜんぜん舞台じゃないと口にすることが多いから、とても面白くなる。
いずれにしても、映画ファンの中からも高い評価が出てくるのは収穫だった。
そして対照的に、映画ファンではないお客様の評価がとっても自信になっている。
つまりは、年に数回、ハリウッド映画を観たり、ジブリを見たり、テレビで映画を観る層だ。
よくある話だけれど、映画ファンには評価が高い作品で、一般層には受け入れられない作品というものがある。
そして、その逆もある。
決して相反しているとは思わないのだけれど、現実的にそうなのだから仕方がない。
例えば2017年の邦画動員ランキング1位は「銀魂」なわけだけれど、映画ファンの評価は低かったりする。
自分の中でこれはあまりハッピーなことじゃないよなぁと思っているのだけれど。
セブンガールズは、とてもシンプルに「面白い」や「泣いた」という言葉をいただけた。
もちろん消費される文化としてだし、その中から作品のファンが生まれる率は映画ファンと比較して低いとしても。
それでも、誰が観ても楽しめるという事は、大きな大きな自信になる。
難解であったり、深度があったりしても、同時に、わかりやすさも内包しているという事だ。
楽しみ方が多層的に存在することは、重要なことだ。
自分の良く知っているデビッド・宮原という監督が持つ最大の特徴はここにあるとさえ思っている。
例えば九州で、例えば北海道で、東北で、四国で、上映するとするのであれば。
100席以下の映画館でも、最低限、週に300人ぐらい足を運ぶ人がいる作品にならないといけない。
もっと成績の低い映画もあるだろうし、50席以下の映画館だってあるだろうけれど。
それにしても、そのぐらいの数字が、或いは可能性が見込めるかどうかがラインだなぁと思う。
1日に2回以上の上映なら倍々にその数字が増えていく。
そのために必要なことを、一つ一つ準備して、一つ一つクリアしていかないといけない。
そのぐらい高い気持ちで進まないと、ただの夢見てるだけのやつらになりかねない。
いつか。
セブンガールズという映画の進んだ道をサクセスストーリーと言われるには。
まだまだ高いハードルがいくつも並んでいることだけは間違いがない。
ただこのサクセスストーリーはきっと、応援してくださる全ての人の胸を躍らせるはずだ。