スタジオに入る。
演奏の構成については既に話してあった。
あとはエンディングや細かいブレイクについて合わせて、通していく。
1曲だけでもリハで整えていく。
映画館に入って準備。
着替えて、楽器も準備して。
映画館なのにまるでライブハウスの楽屋のようだ。
一人で挨拶をしてから。
楽器をセッティングしていく。
ずっと応援し続けてくださる方の顔が何度も目の前に。
そして、自分のバンドと映画の登場人物のピアノのセッションが始まった。
それも映画の主題歌で。
映像には映らないグルーブ、映像には映らない音圧、LIVE空間にしかない音。
一言ずつ挨拶をして、ロビーに移動した。
舞台でオルガンを譲ってくださった方にも会った。
いつもバンドのライブに来てくださった皆様にも会えた。
初めて会う方とも握手をした。
帰り道に早くもSNSにアップロードされた映像を確認した。
もしも延長がなければ最終日だったはずの日。
それがいよいよ来週の延長上映に向けての日になった。
体の芯に響いたままの拍手喝采。
それまで聞いたことがなかった郁子のフルのピアノがBGM。
延長が決定して明日が初日になる。
現時点で、まだ席には空きが多い。
それはそうだ。
前回のアンコール上映初日は、充分に準備してあった。
カウントダウンだってやることが出来た。
延長が決まったのは今週で、決まってからわずかな時間しかない。
イベントを発表できたのは昨日だ。
準備はしてあったけれど、出来ない準備の方が多い。
前々からスケジュールを開けておいてもらうことだって出来ない。
けれど。
この日が来るのを待っていた。
いや、この日が来てからのことを考えてやって来た。
なぜなら、ここからが本当の上映だからだ。
もちろん、知っている人には宣伝をしていく。
普段、中々舞台に来れない人にも声をかけていく。
でもそれだって限界はある。
すでにK'sシネマから3週の上映をしていて、満員だった日もたくさんあった。
嬉しいことに中には、何度も足を運んでくださる皆様もいらっしゃる。
でも現実には、殆どの人が映画を2回以上観ることはない。
声をかけて呼べる範囲はある意味でもう飽和状態にあるかもしれない。
そんなことを思っていたら、もう一度来てくれるなんて方がたくさんいるのだけれど。
でも、だからこそ、だからこそ、この日が来るのを待っていた。
今日までいくつのTweetが、写真が、動画が、レビューがアップされ続けてきただろう?
そういう中で今日までは週末のチケットが取りづらい状況にあったと思う。
それが今、セブンガールズに興味のある方が、今日は何を見よう?と考えるときに検討できる状況にある。
自分たちで呼べる皆様、リピートしてくださるお馴染みさん、そして新規のお客様。
その割合が正常な割合になっていく入口にようやく立つことが出来る。
そしてそこから先、この作品に出会ってくださって、愛してくださる方がいるかもしれない。
明日からこそが、やるべき本当の勝負のスタートになる。
宣伝費のない自分たちに出来ることを、本当に、どこまでもどこまでも考えた。
テレビCMを打てないなら、ネット上に映像を増やそうと思った。
自分たちで創ることのできる入口をいくつもいくつも増やしていった。
友人や応援してくださる皆様を誘いながら、常に、外の世界を観ることを忘れずに進めてきた。
でもね。
大変だったけどさ。
本当に本当に、それをするべきで、しなくちゃいけないんだって。
そう考えていた。
だってさ。
そりゃ、劇団を応援してくださる皆様や、友人たちというバックボーンがある。
でも、K’sシネマや、その後のUPLINKで、セブンガールズに出会ってくださった方がいる。
映画上映してから、応援し始めてくださる方々が、どんどん増えてきた。
中には、大阪のシアターセブンで、セブンガールズに出会って、渋谷まで来てくださった方もいらっしゃる。
それは特別なことなんだよ。
もちろんどんな映画にだってファンはいるし、リピートするお客様だっていらっしゃる。
それでも、こんなに熱意をもって作品を愛してくださる肩が増えていくなんて、そんなにあることじゃない。
実際に、プロデューサーだって、驚いていた。
しかもさ。最初は受動的に映画の上映を楽しんでくださっていた皆様が。
徐々に能動的に、映画を人に薦めてくださるようになってきた。
中には映画からイラストを描いてくださる方がいたり、ポエムをやってくださったり。
イベントの様子を撮影して、それを公開してくださる方がいる。
公開された映像は既に1000回以上再生されていたりする。
イベントのレポートをしてくださったり、友人に勧めてくださったり。
明らかに、セブンガールズは、これまでとは違う場所に行こうとしている。
絶対に自分たちだけの発信では届かない場所に、セブンガールズを届けてくださっている。
お客様が映像をアップしているのが良いと書いてくださった方もいる。
いよいよ始まるんだ。
明日から。
相変わらず、自分たちは必死に精一杯、知っている人に伝えて、友人を誘って。
いつものように映画を観て欲しいと伝える。
けれど、同時に、セブンガールズに出会ってくださった皆様の知り合いにまで広がっていく。
自分はこれを、愛と言っていいのだと思っている。
友人や知り合いのお客様が一巡したと言える今。
セブンガールズという作品は自立できるまでの成長期に突入する。
ずっと応援し続けてくださった皆様という母親から生まれて。
新たに出会って上映を盛り上げてくださる父親に育ててもらって。
そんな愛を精一杯に受けながら、セブンガールズは成長していく。
今日、自分は、映画館のイベントで。
愛を浴び続けたお礼とばかりに。
産声を上げたのだ。
地球の裏側にだって届けと。
心が張り裂けそうな成瀬の思いを胸に。
歌ったのだ。
アンコール。
そしてその延長。
そこから初めての週末。
明日はやってくる。