朝起きるとPCの前で座ったまま寝落ちしていた。
まぁ、仕方がない。
最後の作業はプログレスバーをにらみつけながら、考えるしか出来なかったから。
考えているうちに、落ちたのだろう。
そのままシャワーを浴びて一度稽古場に向かう。
今日、自分が稽古場で出来ることは殆どない。
映画館での資料写真の撮影があるから行くだけになる。
稽古場につくと、それぞれ、話し合ったり稽古をしている。
初日登壇の映像が前日にSNSで拡散されたのを皆が既に見ていた。
お客様に、舞台挨拶で喋るだけではなくて何か届けようという無茶振り。
先週よりもずっと熱が入って本気になっていた。
ここの連中は本気で考えて、本気で板の上に立った時のパワーを知っている。
もちろん打率十割ではない。空振りだってするかもしれない。
それでも、見事な空振りってのはある。
それはつまり、パワーだってことだ。
すごすぎる空振りを見れば、次の一球を投手は簡単に投げられなくなる。
そういう凄みを出せるのがここの連中だって信じている。
渋谷に移動して、映画館に入る。
連日の満員御礼。
昨日の今日で、自分の中で、今回のイベント登壇について考え続けて来た事の答えが出ると思っていた。
昨日は自分が舞台に立って、翌日は客席から写真撮影をして。
主観と客観で感じることで、自分なりの一つの答えが出るはずだと。
さんざんシミュレートしてきたけれど、客席から観た時、それは素晴らしいものだった。
主観ではどうしても感じてしまう照れだったり、反省であったり、誇張がなくなる。
少なくてもこんな舞台挨拶をする映画なんてこの世の中のどこにもない。
映画と同じ衣装を着て、本気で映画にあったシーンを芝居で見せる。
初日に評判だったピアノの伴奏も入った。
LIVEでさっきやった映画の中のシーンが、同じ役者同じ衣装で芝居を観る。
そんな体験をしたこともないし、話にきいたことすらない
あのプロポーズのセリフやってよ!なんて、セリフ一つならともかく。
シーン丸ごと、芝居で見せるなんて。
ただそれが実際にどう出るかは、それぞれ考え方が違っていた。
けれど、お客様の声で一変した。
多くのお客様に受け入れていただいたから、このイベントは一歩前に進んだ。
SNSにアップロードしてくださるお客様がいて、拡散している。
初日の映像が数百回も再生されていたりする。
いや、これは直後に観たから、今はもっともっと再生回数が増えているかもしれない。
これを観て、映画を好きな方々の中で、ちょっと観に行ってみようという方がいらっしゃるかもしれない。
それが例え一人だけだったとしても、大きな大きな一人なのだと思っている。
観に行ってみようまで行かなくても、興味を持ってくださるだけでも。
明日明後日には、ここから先も見えてくるはずだから。
ただし、明日からは少し状況は変わるだろう。
遅い時間だから、帰りの早い方は舞台挨拶前に帰えらざるを得ない。
スクリーン2には、ピアノが設置されていないから、ピアノ伴奏もない。
お客様たちの多くは仕事を終えた一日の最後にやってくる。
そういう少しずつの違いは、そのまま空気の違いになることを、肌で知っている。
お客様の前に20年間立ち続けてきたのだから。
それに、現時点では満員ではない。
平日の夜間だから、当日行けそうなら行こうという方もいらっしゃるだろうし。
実際に、どのぐらいになるのかは今は見えない部分もあるのだけれど。
いや、もしかしたら、明日の昼過ぎになってどんどん埋まることだって十分にあり得るのだけれど。
役者は、満員とそうじゃない時の違いを、とてもよく知っている。
もちろんたった一人でも精一杯やるのだから、やることは同じなのだけれど。
そのぐらい、空気というのは大事で、日々違うものだから。
そしてハードな毎日がやってくる。
今日をすぎたら、かなりハードでタイトなことは承知している。覚悟している。
けれど、そのぐらい高いものを目指しているのだから当たり前なのだ。
いよいよアンコール上映も、平日夜間に突入していく。