公式アカウントのカウントダウンを公開して
自分個人のカウントダウンを公開して
ようやく、本日の上映情報を掲載して、これを書いている。
明日は渋谷に向かう。
アンコール上映初日が待っている。
この日を迎えるために頑張ってきたんじゃない。
この日の向こう側の景色を見るために頑張ってきた。
ここは、はじまり。
ここから何かが始まると信じてやってきた。
「大誘拐」という映画をご存じだろうか?
昔からの映画ファンと話をすると、盛り上がる映画の一つのはずだ。
岡本喜八監督がメガホンを取った、エンターテイメント作品。
その映画の主演だったのが、北林谷栄さんだった。
20代の頃から、映画で、テレビで、老婆役をやっていた名脇役。
その北林谷栄さんが、年を重ねて本当の老婆になって、なんと主演で映画を製作した。
中井貴一さんが主演したビルマの竪琴に出てくるビルマの行商の老婆を演じていたのが北林谷栄さんだ。
驚くのは、その中井貴一さんが主演する前の1956年の白黒映画でも同じ役を演じていた事。
そんな北林谷栄さんが主演ということが、当時、どれだけの挑戦だったか。
喜八プロダクションで製作して、東宝での上映だったけれど。
テレビCMなんて、公開前に一度も流れなかった。
脇役の北林さんが主演の映画が当たるわけがないと計算されていた。
だから宣伝費だって、公開館の数だって、多くの映画に比べたら、小さすぎた。
名優が出演しているとは言え、いわゆる看板がない映画だった。
その映画は、まったく期待もされていなかった。
高校生のおいらに、友人が一般試写会の招待葉書を持って来た。
なんだか地味な映画だと思ったけれど、会場に向かった。
恐らく抽選で葉書を送った人が集まる一般試写だったけれど、会場の入りはそれほど良くなかった。
当選しても、足を運ばなかった人がいる。そういう映画だった。
けれど、帰り道、友人とおいらは、興奮していた。
面白かった。
とにかく、面白かった。
え、これ、すごい面白いよなぁ・・・帰りの電車で二人でずっと話してた。
北林谷栄さんと緒形拳さんのラストの二人芝居は、日本映画史に残る名演技だった。
大した宣伝もされずにその映画は公開されたのに。
それから一週間後、テレビCMで、もう一度「大誘拐」をみかけることになる。
評判が評判を呼び、瞬く間に上映館が増えていき、異例のロングランヒットを記録し続けた。
誰も予想もしていない大ヒットを「大誘拐」は記録した。
日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を、北林谷栄さんが受賞した。
20代から何年も何年も老婆を演じ続けた名俳優が、日本国内で最大の、「主演」女優賞を。
誰一人予想すらできなかった受賞をした。
セブンガールズの監督、デビッド・宮原はこの映画の主題歌を歌っている。
某有名バンドで決定していたのに、岡林喜八監督が気に入って選んでくれたのだという。
おいらは高校生の頃、監督とすでに交差していたのだった。
監督は今も「大誘拐」で体験したことを肌で覚えている。
北林谷栄さんが主演じゃ・・・と言われていた頃から知っているのだ。
信じられないような大逆転劇を、目の当たりにしたのが監督だ。
だからだろうか?
セブンガールズという映画には、主演なんていない。
いや、そうじゃなかった。
セブンガールズという映画には、脇役なんていない。
全員が主役だ。
デビッド・宮原が最初に監督をした長編作品には、あのスピリットが流れている。
続けてきたことに嘘はない。
嘘をつかない。
何年も何年も名脇役を言われ続けた女優は、初主演にして、最優秀主演女優賞を受賞したのだから。
名前の大きさなんてものは吹けば飛ぶようなものだ。
当時のスターが出演している昔の邦画を見れば、一目瞭然だ。
今見れば、往年のスターになってしまう。
けれど、その光を失っても、当時のスターが背負っていた責任の重さが見えてくる。
結局、外側に見える化粧なんてそんなものだ。
内側にある魂こそ、いつだって、人の心を掴んで離さない。
北林谷栄さんは。何年も何年も続けてきて、スターじゃなくても、嘘をつかない魂をみせてくれた。
そのスピリットを持ったデビッド・宮原と20年間も芝居を続けてきた。
やってきたことに嘘なんかあるものか!
何年も何年も劇団をやってきた自分たちが、映画でやることはたった一つだ。
アンコール
上映希望があったから、再度上映をする。
そりゃ、大誘拐とは規模が違うかもしれない。
けれど信じている。
いや、信じているという言葉では足りない。
これは信念だ。
必ず魂があれば、それは伝わる。続けてきたことは嘘をつかない。
「セブンガールズ」はそういう映画だ。
地に足を付けて。
信念のもとに、アンコール上映を迎えよう。
胸を張って。
ここから始まるのだと、高らかに!!!
奇跡を起こすのはこれからだから。
誰も予想もしていない奇跡を。