大阪シアターセブン最終日。
この日のことを書くのが、このBLOG解説から丸3年の日になった。
あれから毎日毎日、このBLOGは続いている。
毎日、登壇するメンバーから、映画館のスタッフさんの暖かさ、大阪の人たちの暖かさを聞いていた。
気持ちばかりがそわそわとしてしまいそうだったけれど。
自分の中で、それだけでは申し訳ないと思っていた。
もちろん、自分も一人でも多くの人に観てほしいという思いがあるけれど。
映画館にとってだって、日々の動員数は、そのまま映画館運営の一歩になるのだから。
高速バスで大阪に到着すると同時に阪神電鉄に飛び乗った。
まだ通勤ラッシュさえ始まってもいない大阪から三宮に移動する。
バスの中でなくなっていた充電だけして、阪神淡路大震災のモニュメントまで行く。
大阪まで来て、最初に行こうと思っていた。
これも一人だからできることなのだけれど。
複数人だと、やっぱり、行きたい場所が割れて、神戸方面は中々足が向かないだろう。
モニュメントに一歩足を踏み込むと、一気に気持ちを持って行かれた。
そこにある、人、人、人の名前。
こんなにたくさんの人が命を落としたのだ。
一瞬、自分の役や、秀子の名前を探してしまう自分がいて驚いた。
モニュメントのすぐそばに「希望の灯り」というオブジェがあった。
本物の炎がゆらめいていた。
説明を書いたプレートを読んで、背筋がしゃんとした。
これは、セブンガールズのテーマそのものだったから。
徒歩で回れるところだけ午前中のうちに回って、大阪に戻ろうと思ったけれど。
いくらなんでもまだ早かったので、尼崎まで足を延ばす。
巨大なアーケードの中に長屋のようにぎっしりと軒が並んでいる地区がある。
そこは闇市だった場所だ。
三和市場と書かれていた。商店街ではなく市場。
ああ、きっと戦後からずっと、そう呼ばれているんだなぁとすぐに合点がいった。
ここを成瀬が歩いていたかもしれない。
そんなことを考えながら、歩いた。
何も口にしていなかったことに気づいて、住宅街に足を延ばす。
駅前の店よりも住宅街にある店に行きたかった。
小さな出前もやっているうどん屋を見つけて、ランチメニューのかやく定食とやらを注文する。
かやくごはんと讃岐うどん。ほぼワンコイン。
丁寧なかつおだしの味は、巻頭にはないものだった。
十三に移動してきて、最初に銭湯に行く。
旅の垢を落として映画館に行きたかったし、出来れば地元のお湯につかりたかった。
おじいちゃん数人だけのほぼ一番風呂。
ゆっくりと手足を伸ばして、ジェットバスで筋肉をほぐしていった。
バスで体を小さくして寝ていた分、筋肉が伸びていくのがわかるぐらいだった。
登壇メンバーは、上映開始後、あいさつ前に映画館に行っていたのだと思う。
それよりも、はるかに前の時間、まだまだ上映時間になる前にシアターセブンに入る。
シアターセブンのロゴが印刷されたチラシが残っていたら撒きたいとお願いする。
呼び込み条例があって、町では配れないけれど、上階の第七芸術劇場とシアターセブンロビーでは配ってよいという。
プログラムを確認して、各映画の終映時刻に配らせていただいた。
一人でも多く動員を延ばすことが、シアターセブンさんへの恩返しになる。
やれることは全部やる。そう決めてこの映画を製作したのだから。
前日に映画を見てくださった方と上階で会えたのはうれしかった。
上映開始して、控室に一人になる。
ふと、自分が何を話すのかも決めていないことに気づいた。
テーマは「奇跡の映画」か・・・。
なんだか、立ちトークで15分近く一人なんて、笑福亭鶴瓶さんみたいになりそうだなぁなんて思う。
いくつかのことを頭の中で思い出して、あとは流れに任せたらいいと決める。
監督からは、客席で見ている出演者を呼び込めとの話もあった。
そうなったら、にぎやかにも出来るのだから。
でも、それも結局、決めないほうがいいかと思った。
決めてしまえば、予定調和になってしまう。
流れ次第で呼び込むなら、それも良い。
上映の終わりのころ、テーマ曲が聞こえてくる。
今、どんな映像なのかも、見ていなくてもわかっている。
どこでどんな映像に切り替わるのか曲のタイミングでわかる。
登壇して話す。
結局、最後まで一人で。
奇跡の映画は、当たり前の映画。そんな話。
自分でも、よくもまぁ、あんなに一人でしゃべったもんだと思いつつ。
皆様が退屈じゃなかったか心配になる。
映画のおかげで、ほとんどの方々が終始涙目だったこと救われた。
ロビーに出る。
たぶん、きっと。
全員と握手をした。
うん。
今日のお客様全員と出会えた。
嬉しかった。
大阪に来たから会えた人ばかりだった。
すべて終わって見に来ていたメンバーとも別れ一人になると急に空腹になった。
夕食を摂っていないことに気づく。
ゆっくりと街を回って、たこ焼きとビールしかない店に入る。
隣に座った、関西弁バリバリのおじさん二人と話をする。
「この人、あだ名がポピーやねん!なんでかわかる?」
「えっと・・・車に、」
二人同時に「ポピー!!」
「ああ、、、」
「にとるやろ?誰だかわかる?」
「オール阪神さん」
「よぉ関東の人なのにしっとる!」
なんて、何の意味もなく、日常に消え行ってしまうような会話。
地元の人に溶け込んでいったのは、小野寺さんなの?成瀬麟太朗なの?
闇市を歩き、地元の湯につかり、地元で働く人と交流する。
これが、自分の大阪遠征だ。
すぐ近くの漫画喫茶的な店でシートに入る。
格安だなぁ。今日一日、ほとんどお金を使ってないことに気づいた。
まぁ、こんな旅も悪くないさ。
本当に来年の1月まで、セブンガールズが上映されることはないのだろうか?
観に来てくださった方々が、また来たいと口にしてくださっている。
見逃した方々が、なんとか再上映を!と声にしてくださっている。友達に進めたいから、上映決定してください!なんて言われている。
舞台を見た方が、映画をもう一度確かめたい!と連絡してくださる。
でも、映画館のスケジュールは、いつだって埋まっているし、待ったなしだ。
どこかで、上映してくれたらいいけれど。
さて、今日はどこを回ろうか。
ゆっくりと観光スポットをうろうろすればいいかな?
今日の夜行バスまでにまだまだ時間がある。
あんまり何も決めないと、瀬戸内海を渡って、本物の讃岐うどんを食べに行きかねない自分がいるから。
だらだらと散歩するとかがいいのだろうなぁ。
また誰かに出会えるかもしれない。
銭湯のおじいちゃんや、たこ焼き屋のおじさんや、ロビーで握手した皆様のように。