つい先日テレビをつけていたら。
パネラーが小さな声でぼそぼそと棒読み気味に発言したのを聞いて。
MCの某有名タレントが「小劇団の役者か!」と突っ込んでいた。
それを聞いて、周りが笑っていたけれど。
そのタレントが、恐らく小劇場なんか足を運んだことも観たこともないだろうことは容易に想像できた。
仮に行ったことがあるとしても、数えることが出来るぐらいだろうなぁ。
勝手なイメージで、たくさんの人が観ている番組で、勝手なことを言うなぁと思った。
小劇場ファンはどう思っただろう。
そもそもが世間的評価なんて、気にしていたら出来ない。
だから、スルーしてしまう人がほとんどなのかもしれない。
芸能界で必死で頑張っている人を、小劇場の人は笑わないんだけれどなぁ。
でもきっと、それぐらい乖離している。
世間のイメージと、実際の現場とは。
小劇場の世界でリスペクトされている人だって、世間には平然と馬鹿にする人がいる。
そんなことは気にしてもしょうがないという人もいるだろう。
けれど、実は、その気にしない、関係ないという感覚が、乖離を生む。
内に籠って、外を気にしないというのは、純化するけれど発展性が狭くなっていく。
深夜ドラマで劇団に所属してる・・・なんて設定のドラマもよくあるけれど、偏見に満ちている。
まるでハリウッド映画に出てくる日本人が、ペコペコ頭を下げまくるように。
そういう場面を見かけるたびに、違和感ばかりが残る。
売れている売れていない。有名無名。
たったそれだけの差が、絶対的な評価かのように思われてしまう。
まぁ、世間なんてそんなもんだからね、って思ってもいいのだろうか?
いつからなんだろうか?
かつて唐十郎さんもそうだったか?
寺山修司さんもそうだったのか?
いや、新劇の役者たちだって、誰だって、そうじゃなかった。
例えば、今も歌舞伎俳優や能・狂言師は、芸能の世界でも尊敬されるように。
どれだけ規模に違いがあろうが、有名無名の差があろうが、それを許さなかったように思う。
むしろ、そういう言葉を口にする人間がいれば、逆に大いに馬鹿にしていた。
自分たちがやっていることに、強烈な自信と自尊心を持ち続けていた。
例えば、歌謡曲に対してフォークシンガーたちは強烈な自意識をぶつけた。
その後に出てきたシンガーソングライターも、ロックバンドも、パンクスも。
経済規模から見たって、世間的な評価からしたって、弱い立場にありながら。
俺たちこそが本物だと叫び続けていた。
「セブンガールズ」の完成披露試写会を観て。
知り合いの映画ライターがその出口で口にした言葉がある。
「なんで、その、あんなに堂々と・・むしろ貫禄まであるの!?」と。
無名の俳優ばかりで、劇団で映画を製作したというイメージから乖離していたのだと思う。
自分たちの作品を堂々と演じるなんて当たり前なんだけれど、外側から観れば不思議なことだったんだ。
ただ自分たちの作品を、自分たちで映画化しただけだ。
決して世間に戦いを挑んでいるわけでもないし、有名人に喧嘩を売ってるわけでもない。
もしも戦っている相手がいるのだとすれば、自分との戦いだったと思う。
精一杯、やり残したことがないと言い切れるまでやる。
そのためだけに、自分と戦い続けた。
顔にススを塗り、血糊を塗り、包帯を巻いて、枯葉の中に寝転んだ。
それは、誰かの指示だったわけじゃなくて、自分との戦いだった。
だっていつもそうなんだから。
世の中の映画より、ドラマより、うちの舞台の方が面白いだろ?って自信を持てるまでやる。
そんなことは当たり前のことで、特別取り立てて言うほどのないことだ。
いつものように取り組んだだけだ。
ただそんな自分たちの感覚は、結局、世間と乖離しているとはっきり言える。
あの番組で、MCがあっさりとあんな発言をしたのはその象徴だ。
ベストテンでアイドルが歌ってる中で、汚いTシャツとボロボロのGパンで、サザンオールスターズが初登場した時のように。
きっと、セブンガールズは、一つ色眼鏡をかけて観られることになる。
それは、世間から観ればきっと、戦いになる。
世の中に挑んでいる作品ときっと映るだろう。
その時、それを観てくれた人が何を口にするだろう?
その時、それを観てくれた人が何を感じるだろう?
それが全て作品の力だということだ。
無名俳優ばかりだけど面白かった・・・なんて言葉も出てくるだろう。
有名俳優ばかりだけどつまらなかった・・・なんて言葉はどこからも出てこないのに。
この戦いはシンプルな戦いだ。
そんな色眼鏡をぶち壊すように、心を動かせるかどうかだけなのだから。
そして、そこに勝算を持っていなければ、自分はこんなに堂々としていない。
自分の道を貫き通す。
ただそれだけのことが。
まるで、反逆の道のように見えるかもしれない。
それも関係ないさと口にするのもまた良いことだ。
それもちゃんと意識して、自分の中に持っておくのなら、それもきっといいことだ。