舞台稽古真っ最中に、完売情報が届いた。
稽古中なのに拍手が起きる。
台風の影響で秋雨前線が活発化している中、こんなに嬉しいことはなかった。
皆が稽古場で安堵の表情を浮かべる。
前売りが完売しても、当日券が伸びるかどうかなんて誰にもわからないのだから。
稽古を終え、全員で映画館に向かう。
こんなに大勢で電車に乗ったのはいつ以来だろう?
そこに監督がいるというのも、今まであっただろうか?
映画館に到着して、全員を控室に案内する。
皆が着替え始める。
初日舞台挨拶だけは、映画衣装でというスペシャル・ワン企画。
スクリーンから役者たちがそのまま出てきてしまうという舞台挨拶。
やっぱり、娼婦たちの衣装は華やかだった。
控室では映写室のモニター音が聞こえる。
今、どのシーンで、どんな音楽が流れて・・・
それがわかるけれど、客席の様子だけは一切わからない。
皆、ドキドキしている。
楽しんでくれているのかもわからないまま。
終盤にかかった頃、舞台挨拶のスタンバイ。なんだこの人数。
おかしなことにならなければいいけれど。
当初MC予定の役者から自分にチェンジ。
今日はガヤで行くというのなら、それはそれで。
並んでいると、エンディングの音楽が聞こえてきた。
今、スタッフロールが流れている・・・。
スタッフロールが終わった瞬間、会場内からかすかに拍手の音が聞こえた。
あ!拍手だ!胸がドキドキする。
扉を開けて、飛び出した。
客席を見渡す。
ジーンと痺れる。
ぐっと我慢して、皆を呼び込む。
楽しんでくれたかな。
少しでも心が動いてくれたかな。
監督の話から、結局全員の一言に。
泣くやつ、笑うやつ、真面目なやつ、ふざけたやつ。
これだけ、色々な役者がこの映画に出てるんだなぁなんて思う。
プロデューサーから耳打ちで、締めてくださいと一言。
締めのあいさつをしようと思ったら、詰まってしまった。
粗相だ。
監督に突っ込ませてしまった。
舞台挨拶を終えてロビーに。
パンフレットを片手に、サインを求めてくださる方がいる。
声を頂いて、握手をしてくださる方がいる。
メッセージで埋めていくポスターに、名前を残してくださる方がいる。
もう一度来ます!と熱く一言を残してくださる方がいる。
まるで夢の中じゃないか。
そのまま呑みに行く。
美術の杉本亮さんと杯を交わす。
セブンガールズという映画の奇跡を担った一人。
あのパンパン小屋をこの予算で組み上げることが出来たのは、杉本さんのおかげだ。
たくさん美術や映画の話を聞く。
なんという美酒。なんという日。
帰宅して、舞台挨拶で発表した大阪上映のニュースをSNSに更新する。
なんとそのままキーボードに手を置いて眠っていた。
起きてすぐに台風進路を見る。
昨日とはまた違った予想進路、違った予想時間になっている。
どうなるだろう。
危険な台風だけれど、なんとなくなんとなく、上映時間は大丈夫なんじゃないかという気がしてくる。
一日中、台風を気にすることになるなぁ。
さあ、二日目の朝がやって来た。