子供の頃、親戚のおじちゃんの車に乗ったまま、ガソリンスタンドで洗車をした。
車に一斉に水がバシャバシャとかかって、でっかいモップがぐるぐる回って。
ガキの目からは、まるで潜水艦に乗っているような、すごい冒険に出ているような。
小さな恐怖を隠しながら、ドキドキしたのを覚えている。
まさにその時の車と同じような電車の中にいた。
夕立・・・というには、余りにもひどすぎる。
積乱雲の真下に入った。
雷が渦巻き、雨が窓を叩き、暴風が景色をぼかしていた。
劇団の旗揚げ20周年記念公演と、映画「セブンガールズ」のセット券のチケット予約開始日だった。
朝一で起きて、対応、事務作業を重ねていく。
何時間もPCの前に張り付いたまま、延々と作業し続ける。
発売開始直後に、映画の公開初日の先行発売分がなくなってしまった。
あまりにもあっという間だった。
やっと、SOLDを発表した時も、まだ初日の注文が続いていた。
予約が落ち着いてからも、少しざわざわしていた。
午前中に注文すれば・・・と思っていた皆様が、日程変更をせざるを得なかったからだ。
気付けば、二日目と、水曜の、先行発売分が、残りわずかとなっていた。
まさか、このまま予約開始初日に、2か所もSOLDを出すのだろうか?とドキドキした。
ネットを観れば、出演者たちが喜びの声を上げている。
ありがとうございます!という言葉が、SNSを飛び交っていた。
少し皆、興奮気味だった。
今日まで長く準備を重ねてきて。
いよいよ実際に公開に向けて予約開始して。
それが、想像以上に人気だったのだから。
気温は体温を越えるような暑い日だったけれど。
体温はその気温を越えるほど上昇していた。
もちろん、前売り券は限定枚数のみだ。
実際は当日券を求めるお客様が集まらないと、初日満員とはならない。
だから、自分たちでこの映画をアピールし続けることは変わらない。
それでも、前売り券が想像以上に伸びていくことは、喜びだった。
床屋に寄る。
発売日だしね。
今日を皮切りに。
電車に乗ると、前述した嵐のトンネルに突っ込んでいった。
車内もどこか落ち着きがなかった。
停電になれば電車は止まってしまう。
電車の中は安全地帯で、窓一つ隔てた外は、信じられないような嵐だった。
たったガラス一枚で、空間が切り取られていた。
まるで、今の自分だ。
駅についてもまだ雨粒が強いから。
駅舎で少し雨宿りをした。
肌に触る湿気が、一旦雨が弱くなることを告げていたから。
プロデューサーから電話が来る。
あっという間の初日SOLDについて。
プロデューサーも少し興奮気味だった。
でも、当然のように俯瞰でも同時に考えていた。
盛り上がり、勢い、そういう雰囲気、そういうものを初日SOLDが起こした。
けれど、それだけで、初日満員になる保証なんてどこにもない。
雨宿りをしながら、更にココカラどうしていくのか、簡単に話した。
雨が弱くなったから駅を出る。
スマートフォンにはまだ注文が続いていた。
先日のユーロにチラシがなかったことを思い出した。
この映画を観たいと思ってくれている方はどのぐらいいるだろう?
外向きに外向きに、広い世界にこの映画を知ってもらうにはあと何が必要だろう?
さあ。はじまったばかりだ。
まだまだ先は長い。
まるで、冒険のようだ。
潜水艦に乗って、海底を進んでいるようさ。
海上に出るその時。
そこには、どんな景色が広がっているかな?
嵐の船出の方が、興奮してしまうんだ。
やれやれ。
よおし!潜望鏡を覗いてみよう。
キョロリ!