2度目の猛暑のピークと言われた日に、軽く肉体労働的に動く。
滝のような汗という言葉での表現では追いつかないほどの汗。
体温を越える気温。
気象庁が控えるように注意を出すわけだと納得。
実際、動いている時もだけれど、その後しばらく体内の暑さが抜けなかった。
空調の利いた場所にいても、体が熱を持って、汗が噴き出る。
室内に入ってから熱中症になるのはとてもよく理解できる。
水分補給を涼しい場所に移動しても忘れないようにする。
それもあってか、いつものように帰宅しての作業をしようと思ったら、気絶したように眠っていた。
ちょっとした打ち合わせの前にまとめておこうと思った資料も今からだ。
大量に汗をかいて、深く眠ったからなのか、むしろ頭がクリアだ。
体内の水分が、入れ替わったような気分。
これはこれで悪くない。
そのまま、海にでも飛び込めば、大量のミネラルまで肌で入れ替わるような感覚。
昨日、ふと、撮影前にセブンガールズの稽古を繰り返してきた日の監督の言葉を思い出した。
「芝居で勝負しよう」
それを思い出してから、ものすごく自分の中でなんというか、ドキドキし始めた。
どんな映画であっても、予算組があって、それが大きかろうと小さかろうと、予算内での製作を目指す。
撮影途中で大きく予算を越えてしまうようなケースもあるけれど、基本的にはそこを目指す。
セブンガールズの規模であれば、最初から様々なことを断念してもおかしくない。
そもそも、このシナリオを本気で映画にするなら、億ですよ!と言われたぐらいなのだから。
時代が現代じゃない、登場人物が多い、尺が長い、シーン数が多い・・・
これをこの予算でなんか撮影できない。
低予算でも、そうは見えないようなギミックをアイデアで補う作品というのがベストなのかもしれない。
けれど、まったく原作のそのスタイルを変えずに、セブンガールズのまま映画にすることを目指した。
この予算でどうセットを組むのか?この登場人物をどうわかりやすくするのか?尺の長さは?シーンの数は?
例えばブレアウィッチプロジェクトのように、家庭用カメラで手持ちでの撮影を中心にすれば製作できるのに。
そうではなくて、この娯楽大作を娯楽大作のまま、あらゆるアイデアを総動員して製作した。
その中心にあったのが、結局は「芝居で勝負」という事なのだと思う。
「ロッキー」でも、「ブレアウィッチ」でも、今の「カメラを止めるな!」でも。
公開前に必ず「無名の・・・」という一言が入る。
そういえば、昔、自分は自主製作映画というのが大嫌いだった。
何が嫌いかと言えば、自主映画のほとんどに出演している俳優が面白くなかったからだ。
オーディションはしているけれど、そこに映っているのは、その辺のあんちゃんだった。
なんで、自主映画の監督たちはちゃんと役者を探さないんだろう?
色々な舞台を観に行って、高額なギャランティの掛からない有望な役者をみつければいいのにと思っていた。
そして、本来はもっと良い役者でも、そのポテンシャルを発揮できているのだろうか?という疑問もあった。
自主映画の監督たちのエゴの気持ちよさはあるのに、そこに生きている役者の芝居が成立していないケースが多かった。
だから、「無名の・・・」には、そういうニュアンスが入っているように思う。
この予算で映画を撮影する。
そう決めた段階で、監督は、芝居で勝負すると決めていた。
名前がなくても、物語を成立させる役者を見せる。
そこを中心にしていたからこそ、ギミックは必要なかった。
敢えて家庭用カメラでドキュメンタリー風な映像作品にすることだって出来たし。
時代を現代に変えてしまうことだってきっと不可能なことではなかった。
劇場を借り切って、実際に舞台のように通して演じて、それを撮影するというアイデアもあった。
視点を、一人に絞るという提案もあった。
その全てを監督は却下して、まともに、そのままセブンガールズという映画にした。
・・・その分のしわ寄せなんか、全部、引き受けてやると覚悟した。
「セブンガールズ」という映画は、単館上映だ。
新宿という街は、映画の街でもあるから、たくさんの映画が同時に上映されている。
歌舞伎町にはゴジラがいるし、カルトの聖地と呼ばれるバルト9だって、新宿にある。
海外作品もあれば、邦画のビッグプロジェクトもあれば、名画もあれば、アニメも、ミニシアターもある。
映画なんてものに、勝っただの、負けただのはないのだけれど。
そういうたくさんの映画の中で、セブンガールズを選んでくれた人に、良かったと思ってもらわないといけない。
無名なのに、低予算なのに、まともに、正面から映画を撮影した。
実は、一番驚くのはここなんじゃないかと思っている。
これは、ある意味、勝負なんだ。
勝ち負けなんかないけれど。
数字でとかじゃなくて。
芝居で勝負するんだ!という意味で。
ほぼ5日で、144分の映画を撮影できた最大の理由。
それは、稽古にある。
セブンガールズは、誠実に稽古を繰り返したからこそ出来上がった映画だ。