豪雨速報だけが来るけれど雨が降らない。
どこかでゲリラ豪雨が降っている。
それも、ごく限られた地区だけで。
ふらりと外に買い物に行ったら、いつもの夏の夜じゃなかった。
熱帯夜というには、余りにも暑い。
どこかで降っている雨の湿気が、大気を支配している。
データの書き出しをしながら同時進行で次回公演の作業もする。
様々な作業が溜まっているのにまるで捗らないのは何故だろう。
こんなことじゃあ、ダメなんだ。
おいらは、ずんずんと、どこまでも進む人間のはずだから。
もっともっとだ。くそお。
決まっている。
大事なものは。
その笑顔をみたいから、頑張る。
映画ドットコムにセブンガールズの情報だけが掲載されていた。
前に検索した時は出てこなかったから、今日もだろうなんて思っていたら。
キャスト、スタッフ、オフィシャルページへのリンクぐらい。
あらすじも、ビジュアルも、何も掲載されていない。
まだまだ伽藍洞なそのページに、感動してしまう。
多くの映画と並んでいるだけで。
皆の名前が、映画ドットコムに並んでいるだけで。
監督と自分の名前が、何か所かに出てくることに笑ってしまう。
本当に公開するのだけれど、実はまだ本当に公開するという実感を持てていないのかなぁ。
たったそれだけのことで。そうなるとわかっていたことで。
おお!と感動してしまうのだから。
Filmarksと並んで、恐らく最大のレビューサイトだと思う。
得点なんかつけるんだぜ。
いやだなぁ、数字で判断されるのなんて。
どんな思いで、この映画を創ったと思ってるんだ。
でも、そういう現実はあるからさ。
結局、どんなレビューでも、1つでもあがれば感動してしまうのだろうなぁ。
きっと読まない役者もいるし、読む役者もいる。
凄い時代になったよなぁ。
厳しい意見も結局、愛おしく読んでしまいそうな自分がいる。
どうやら、世間じゃ夏休みに入ったみたいで。
そういえば、街の景色が少し違う。
通学中の学生がいないし、電車の混雑も少し違う。
外を歩く子供たちのテンションが、高い。
今の子供たちは暑いから皆、首から水筒をぶら下げている。
ごくごく飲みなさんな。
ちびちび飲むのが熱中症対策の秘訣だぜ。
夏の夜がやってくると思い出す。
中学生の時、一人暮らしをしているおじいちゃんの家にお手伝いに行った時期を。
おじいちゃんのご飯をつくって、話をして、昼寝をして。
夜中にそっと抜け出すんだよ。
ビーチサンダルで、やさしい砂の感触を確かめながら歩くんだ。
海に出れば、星空とそれを映す海原の境界線が曖昧になってる。
波打ち際には夜光虫たちが柔らかく光ってた。
どうしょうもなく孤独で、いつか自分はひとりぼっちになるんじゃないかって思った。
寂しいなぁって実感しながら、砂浜に座って、いつまでもひとりぼっちだった。
あの時の夏の夜は、ここまで暑くなかったよ。
泳げるぐらいには暑かったけどさ。
補導するような警官がいない田舎町で良かったな。
あんな夜はなかなか体験できないもの。
もう二度とあんな夜は来てほしくないのかもしれないけれど。
間違ってるかなぁ。
自問自答はいつでも自分に向かってやってくる。
あの星空と海原の境界線から、得体のしれない魔物がやって来て、飲み込まれそうになる。
そんな時は光を探すんだ。
波打ち際に光ってる夜光虫はそれを教えてくれた。
進む先はわかっているのに、光がある場所がわかっているのに。
あそこに辿り着くまで、何度、おいらたちはこんな夜を越えなくちゃいけないんだろう。
間違ってないさ。
きっと。
宝物のような笑顔が、ここにあるんだから。
パソコンが悲鳴を上げている。
書き出しをしているから熱を持っている。
動画のエンコードなんていう重い作業を何度も何度も強いてきた。
こんな熱い夜にすまないなぁ。
豪雨速報がまた来た。
けれど、雨音は聞こえない。
気配だけの雨。
砂を踏む音が聞こえた気がする。
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