2018年07月24日

「カメラを止めるな!」を止めるな!

たびたびここにも書いた「カメラを止めるな!」を観に行った。
本当はセブンガールズが上映されるK'sシネマで観たかったのだけれど。
当初予定していた上映期間を延長した関係上、上映が一日一度に限られてしまった。
このままだといつまでも観れないんだよなぁと思っていた。
それでも、セブンガールズのチラシが置いてある劇場にしようと思っていたのだけれど。
結局、予約のできるチネチッタに行って鑑賞した。
中断ど真ん中、スクリーンが目の前という信じられないような良席がたまたま1席空いていてラッキーだった。

シチュエーションが余りにも「セブンガールズ」と重なっていると思っていた。
K'sシネマでの上映ももちろんだし、初長編監督作品というのも同じ。
出演者が全部小劇場の無名俳優たちという売り込み。低予算映画。
自分たちで必死で宣伝をしていること。
どこを切り取ってもまるで、合わせ鏡のようだなぁと思っていて。
その映画がスマッシュヒットをしたのだから、それはもう観に行かないわけにはいかないと思っていた。
先にプロデューサーも鑑賞していたし、出演者でも観に行ったメンバーがいた。
そして、今、作業が止まってしまって、刺激が欲しいタイミングだったというのも大きかった。

「カメラを止めるな!」というタイトルを英訳すれば「Show must go on」じゃないかと思う。
ところが、英題は「ONE CUT OF THE DEAD」
ニヤリとしてしまった。

ネタバレをしないほうが楽しめる!という意見の多い映画だから、あまり詳しくは書いちゃいけないのだと思う。
自分としては観終わった今も、ネタバレなんかしてもしなくても一緒だと思った。
事実、リピーターがいるのだから、全てわかって観る人もいる以上、そこは関係ないと思うのだけれど・・・
とは言え、細心の注意をして、ここに感じたことを書こうと思う。
これから観たくて、何も情報を入れたくないという人は、この先は読まないでも良いです。

客席の真ん中に座って、他のお客様の反応を感じながら、暗闇の中スクリーンに集中して。
この作品に込めた愛情、情熱。真摯に作品に向かう姿勢、誠意。
その全てが、客席にダイレクトに伝わっていくのが手に取るようにわかった。
或いはそれは、現場の空気そのものだったのかもしれない。
現場の空気がそのまま映像に映っていた。

すごくすごく勇気をもらった。
ああ、伝わるんだ。ちゃんと伝わっていくんだ。
重ねた苦労も、その思いも、全てがスクリーンには映る。
役者の演技の中にある、本当がわかる。
そこに生きているかどうかまで、全てが映る。
そして、それが高く評価されている事実が、この映画にはあった。

実は先日の稽古の後に呑んだ時に出た話がある。
「カメラを止めるな!」の成功を素直に喜べないんだよなぁっていう正直な意見。
その後に「セブンガールズ」を公開したって、二番煎じになっちゃうんじゃないかって思うんだよっていう言葉。
わかるような意見ではあるけれど、それは、全然間違っているよと言った。
実はそれは、大成功したことへの嫉妬心なんじゃないか?って。
そのぐらい呑みの席でも常に本質的な意見だってぶつけているから、気にせずに口にした。
そしたら、確かにそう言われたら、嫉妬なんだよなって言う。
だとしたら、嫉妬なんかなんにもいらないよ!と、言った。
何故なら、二番煎じになんか絶対にならないから。
別の作品なのだから別の作品として観てくれるに決まっている。
むしろ、こうやってヒットすることもあるんだっていうことは喜ばしいことだよ!と。
なぜなら、邦画が盛り上がり、ミニシアターが盛り上がり、面白い映画を探す人が増えるのだから。
全体で考えれば、絶対にセブンガールズにとっても、嬉しい事なんじゃないかって。
そんなふうに伝えた。
それは、意外にすぐに理解してくれて、じゃあ、今、すごいタイミングで公開できるのか!
と、あっという間に、ポジティブな方向になっていった。

シン・ゴジラ、君の名は、この世界の片隅に、そして、先日の万引き家族。
特撮、アニメ、大規模映画、世界一、とにかく、あらゆる方面で邦画が全体的に盛り上がってきた。
日本人が面白い映画を創り始めているぞ!という雰囲気がある。
映画ファンが、その面白さを探し出すぞ!という空気になりつつある。
その中で、ミニシアターというフィールドでも話題作が生まれた。
低予算映画と呼ばれるジャンルの中にも、注目作が生まれた。
そういう状況下で、セブンガールズを公開できることって、すごいことだ。

面白い本をみつけたり、漫画を見つけると、本屋に通ってしまう。
かっこいいバンドを観ると、思わずライブハウスに他のバンドを探しに行ってしまう。
最高の音源を見つければ、ネットで調べたりレコード屋に通い詰めてしまう。
同じように、面白い映画が増えれば、当然のように、他の映画も観てみようとなるに決まっている。
きっと、セブンガールズを見つけてくれる人だっている。
そして、似たようなシチュエーションでありながら、別の驚きをきっと感じてくれる。
大作を、低予算で創るなんて言う挑戦、思いだけで、情熱だけで実現したその空気は絶対に伝わる。
この「カメラを止めるな!」を観たお客様の中で、誰かが来てくれたら。
間違いなく分かってくれるぞと思った。

そのぐらい魂のある芝居を、お前はしたよ!とは飲み屋で言えなかったけどさ。

知っている。
ムーブメントというのは、そういう所から生まれることを。
「カメラを止めるな!」一本では、ムーブメントにはならない。
それは、ヒットだ。
そこからさらに、こんなのもあるぞ!こんなに面白いのを見つけたぞ!が繋がっていって。
それが初めてムーブメントになる。
かつて、映画は、そんなムーブメントを何度となく生み出してきた。

自分たちのように劇団をやっている人たち。
小劇場というフィールドで誠実に作品に取り組んでいる役者たち。
自主映画、ミニシアター、単館系、ショートフィルム。
そういう世の中では、まだまだ日の目を浴びづらい場所にいる全員。
「カメラを止めるな!」を止めるな!
続いていくんだ。
面白い舞台を発表しよう。
面白い映画をどんどん作ろう。
そりゃ、出来ないことの方が多い。
そこは、アイデアで乗り切る。
やってやれないことなんか、なんにもないんだから。
それが出来れば、それはムーブメントになる。
新しい流れが生まれる。
そして、是枝監督のようなトップランナーに続く人が生まれていく。
なんて、芳醇な文化だろうか。

Show must go on!
舞台用語だ。
幕が開いたら何があろうが進め!
「カメラを止めるな!」のハイライトはスタッフロールだ。
その瞬間、あの映画はそれまでの二重性の厚みを三重にした。

そして、おいらは勝手に解釈した。

歩みを止めるな!
流れを止めるな!
夢は止めるな!
幕が開いたんだ!
濁流となるまで、もう進むしかないのだ。
意味はあるでしょ!

偶然にしては出来すぎている。
まるで、これも、奇跡のようだ。

セブンガールズ公開まで残り約2か月だ。

6
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 03:30| Comment(0) | 映画公開への道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする