2018年07月10日

スクリーン

編集していた自分や監督はもちろん。
例えば、シナリオチェックをしたメンバーもいる。
他にも配給担当さんだっているし・・・。
いや、それどころか、初号試写だって皆で観ている。
最初から最後まで、モニターで、小さいプロジェクターで確認しているはずだ。

それなのに、まったく違うものがそこにあった。

映画館の、人間の伸長を越えるようなスクリーン。
馬鹿でかいスピーカー。
真っ暗に照明を落とした映画館という空間。
そこに大勢の人が座っているという不思議な共有感覚。
そこで観た「セブンガールズ」は、それまでのものと、全く違っていた。

監督も、自分も、それは想定していた。
映画館で観たら、こうですよね?と確認しながら編集していた。
細かすぎるカット割りの部分や、絵の変化が少ない箇所など、スクリーンを想定して編集を重ねた。
監督と二人で編集しながら、ふっと笑ってしまう瞬間も。
あるいは、感動して、良いシーンになりましたね・・・なんて言っている瞬間も。
全てスクリーンを想定して、お客様が観ていることを想定して編集していたはずだ。

はずなのに。
これは、まったく違うものになっていた。
まるで、増幅装置のようだ。
映画館という空間は、感情のアンプなのかもしれない。
想定していたのに、想定以上だった。

正直に言えば、別のものもある。
作品や、物語とは、別の感動がある。
やっと公開まで辿り着いたこと。
それは、企画当初から、今日までを走馬灯のように思い出す、辿り着いた感動でもある。
映画が始まった瞬間は、ああ、ついに・・・という感動で溢れていた。
けれど、物語が動き始めてから、お客様の反応を感じ始めてから。
ぐいぐいと、作品世界にのめり込んでいった。
自分たちで創った、勝手知ったる作品なのに。
何十回も、繰り返し観てきたものなのに。
あっという間に作品世界に引きずり込まれた。
映画館、スクリーン、それは、まるで魔法のような場所だ。

完全な客観にはなれない。
作り手側という場所から離れることは一生ない。
きっと、数十年後に観たって、それは同じことだ。
それでも、完全じゃないだけで、かなりの客観的視点で映画を観ることが出来た。
監督も、映画館での上映を終えて、客観的な感想を持っていた。

役者によっては、自分の登場シーンで涙を流した役者がいた。
普通はそういう事が起きない。
役者は主観で生きるのだから、物語の世界に入り込んでいないと、感情移入できない。
普通に一人の観客として、自分のシーンを観てしまうという体験を役者がした。
それも、何人もの役者がだ。
舞台俳優は、自分の芝居を観ることが出来ない。
映像に出たって、客観的に観ることが出来ない。
けれど、映画は、物語に没頭した時に、客観的に観ている自分に気付くことがある。
そういうことが、本当に起きた。

これは、純粋な映画作品としての感動だった。

辿り着いたとか。
これまでの道程とか。
自分たちでここまでやったとか。
そういう感動を上回っていたかもしれない。
セブンガールズという映画作品に、純粋に感動していた。

役者の誰もが口にした。
色々な人に観て欲しいという言葉。
そこには、もう宣伝なんて言うビジネス的なニュアンスは皆無だった。
まるで、友人に面白い映画を見つけたよと教えているような。
そんな顔だった。
面白い映画だから、観て欲しいという、シンプルな気持ちからだった。

決起会でプロデューサーが最後に言ってくれた言葉。
「作品の力で、また一人、心を動かしました」
それがいかに重い一言なのか。

全て映るよ。
そう聞いていた。
カメラの前の事象だけが映画になるんじゃない。
撮影現場の空気や雰囲気、気持ちや思い。
そういうものは、必ず映ると。
だから、現場の空気を大事にした。
ひたむきに、まっすぐ、嘘がなく、撮影に挑んでいった。
それは、本当だった。
作品全体に流れる思いは、最初から最後の瞬間まで一貫してスクリーンに投影されていた。
小さいモニターじゃわからないうねりが、おいらたちを支配した。

すごい作品を創ったよ。
自信をもって、胸を張っていい。
自分たちの全てをここにぶつけた。
そう思って欲しい。

決起会でもらったそんな言葉は、スクリーンの魔法と一緒に今も、自分の体の中心にある。
つっついたら、すぐに泣く。
だから、冗談ばかり言って笑ってる自分がいる。
ごまかしてるなぁと気付きながら、お茶らけてしまう自分がいる。
だって、泣くのは本当はもっとずっと先だから。

人に、面白いよ!と自信をもって勧めることが出来る作品になった。
スクリーンがかけた魔法は、それまで観ていた景色さえ変えてしまった。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 02:47| Comment(0) | 映画公開への道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする