起きると、プロデューサーからPVについての詳細な修正案が届く。
全て、文字に起こして、赤を入れてくださっていた。
何回再生したら、全ての文字を起こせるのだろう・・・。
短い映像とは言え、頭が下がる。
これまで様々なプロデュース、プロモーションを手掛けてきたと思う。
そういう経験に裏打ちされた意見はとても参考になる。
素人からは出てこない意見がある。
まして、自分も出演している。
例えば、つい今、漫画原作の舞台のCMがテレビで流れたけれど。
「圧倒的なボリューム、豪華キャスト!」なんてナレーションが流れた。
自分から、豪華キャストとか、凄い役者とかは、まず出ない。
宣伝担当やプロデューサーが会議で決めるもので、完全な客観が必要だ。
だからこそ、プロデューサーがいて、プロモーションがあって、宣伝会議がある。
きっと、これまでやってきた仕事からすれば、やりづらい部分だらけだと思う。
優位なのは、小回りが利くスピード感と、遠慮なくどんどんやっていけることだけだ。
CM一本うつのに、どれだけの人間と、どれだけの決済と、どれだけの時間が必要なんだろう?
ちょっと想像もつかない。
きっと、これまで自分が中心となった作品だけじゃなく、色々な作品で様々な役割を担ってきたはずだ。
予算もない、やれることは限られている。
だとしても、おいらに出来ることは、思いついたことをどんどん実行してしまう事だ。
今や伝説の、ブルーハーツというバンドが売れていった過程をリアルタイムで過ごした。
初めはコピーした白黒のビラを配っていた。
ダビングしたテープも配っていた。
レコード会社が大金をかけて、プロモーションをしているその影で。
あっという間に、10代の層の人気を獲得していった。
メジャーデビューした時には、既にある一定層から圧倒的な指示を受けていた。
それまでも、今でいうインディー的な場所からメジャーと言う場所に行ったバンドはいたけれど。
ブルーハーツ以前と、それ以降では、プロモーションも変わったように思う。
多くのバンドが、インディーでのプロモーションを強くしていった。
もちろん、作品が良かったという絶対条件があった上でだ。
でも、新しいものには敏感な若い層というのは、どの時代にもいる。
何か、新しいことをやるのであれば、きっと、大きなプロモーションでは届かない。
この映画は、ひょっとすればこれから始まる豊富な小劇場作品の映画化のはじまりになる作品なのだから。
そんなことを思っていたらPVの決定が出る。
なんとか小屋入り前に決定できた。
このあとは微調整だけで済むようになった。
HPを調整していく。
これはまぁ、きっと公開されるその日まで調整が続くだろう。
舞台で配布するチラシに、URLが書かれている。
HPを一般でも検索などから入れるように設定しなくても、アクセスが始まる。
だから、初日の幕が開くまでは調整が可能。
まぁ、舞台本番小屋入り後だから、どこまで出来るのかはわからないのだけれど。
公開後も、少しずつ調整していけばいい。
さて、明ければ最終稽古だ。
最終稽古と言っても、稽古場での稽古が最終なだけ。
劇場に入って、舞台や照明が灯れば、場当たりもあるし、ゲネプロもあるだろう。
舞台上が空いている時間はあまりないかもしれないなぁとか思いつつ。
心に一本、筋を通してあるつもりだから、ジタバタしないで済む。
演出の直しをして、通して、確認する。
そして、本番を待つだけさ。
そういえば小屋入り前日という事は、初の映画の宣伝チラシが届くという事だ。
映画の宣伝の初のグッズ。
それも楽しみだなぁ。