セブンガールズで、MAをしてくださった玉井さんがこんなことを言っていた。
「役者だったらナグリぐらい握れないと!」
玉井さんは、小劇場の音響PAに入ることがあって、良く知っている。
小劇場の世界では、それが普通だった。
過去形なのは、今は、そこまでそれが普通ではなくなったからだ。
ただほんの10年、20年前は、それが出来ないと、舞台は成立しなかった。
キャパシティがそもそも少なく、チケット収入だけで運営しようとすれば、当然そうなっていく。
舞台監督、照明、音響など、プロが必要な部分はともかく。
それ以外の部分はなるべく自分たちでやることで人件費を減らしていくしかない。
200席以下の劇場で、まともに外注スタッフだけで創れば、チケット代を上げていくしかない。
それも、完全にいつも満員と言う状況でだ。
最近は劇団と言っても、劇団員は数名で残りは客演と言う形が多い。
そうなれば、劇団運営をしているメンバー自体の人数が少なくなる。
かつての劇団はマンパワーこそ、強みだったけれど、今はそれがなくなったのかもしれない。
若い劇団でも、搬入搬出すらあまり手伝わない劇団もあるらしい。
まぁ、役者なんだから、役者だけやっていればいいという考え方もある。
でも、純粋だったよなぁと思う。
とにかく舞台に立ちたい。
でも、普通にやったんじゃ、借金だらけになる。
じゃあ、俺、これ覚えるよ!と、大道具の会社でアルバイトをする役者がいたり。
照明さんと仲良くなって、手伝えるようにしたり。
他の劇団の製作手伝いをして、覚えていったり。
それも、全部、自分たちの作品をやりたかったから。
やりたいことだけやっても、何もできないのを知っていたから。
やりたいことのために、やりたくないことだってやったんだよなぁ。
今はメジャーになっている劇団でも、小道具だけは自分で作るという役者がいたりする。
チラシデザインは自分がやりたいという人も意外に多い。
でも、本質的にはどうだったのだろう?
実は、スタッフの仕事をしながら、芝居の勉強をしていたような気がする。
スタッフさんは仕事だから、毎日毎日芝居を観ている。
その人と話すだけでも勉強になった。
その人に芝居のアドバイスをいくつもいただいた。
飲み屋で、ぽろりとこぼす言葉に真実を観た。
スタッフさんが、作品に向かっている哲学を知ることで、芝居を別の角度で観ることが出来た。
今回の自分の役割が、ものすごいことになっていることに今更気付いて、笑った。
今日も、色々な連絡があった。
映画関連の連絡をして、届いて、送って。
その後、今度は舞台の音の直しが届いて、セットアップをし直して。
スケジュールを直したり、データを送ったり。
それから、WEBの更新も地道に続けたり。
舞台本番での役割の多さもさることながら。
なんだか、面白い。
20年続く劇団には。
20年続けてきた智恵がある。
だから、こういう企画公演も出来る。
どうか感じて欲しいなぁと思う。
こういう公演の持つエネルギーを。
それは、ナグリぐらい握れないのか!と言われた時代を生きてきた。
したたかな役者たちのエネルギーだ。