春の嵐。
強い風。
去年ほどじゃない。
春雷がない。
それでも、気を抜くと飛ばされそうな横風が突如吹いてくる。
これを繰り返して、初夏の足音が聞こえてくる。
数日前ネットオークションで、先日書いた音響機材を一つ落札した。
この値段ならと言う値段で最後に入札してダメなら他の手をと考えていたのだけれど。
誰かに競り合われることもなく、オークション平均価格よりも格安で落札できた。
かなりラッキーだったと思う。
機材が届いたので、出来るセットアップだけしておく。
まずは到着報告の前に動作確認。
いざ、使用した時に動かないから返品と言うことも出来ない。
機械系のオークションは、その辺が厄介と言えば厄介だ。
残念ながらすべてのジャックの通電確認までは出来ないけれど。
動くかどうか、ヘッドフォン端子などは確認が出来た。
確認後、メーカーHPに行って、システムのアップグレードと、連動するアプリケーションをダウンロード。
デジタル機器は、機器そのもののアップデートが出来る。
細かいエラーをつぶしてあるはずだから最新のものにしておく。
元々機材についているsampleの音源を鳴らしてみる。
プロテクトがかかっているから、設定をいじりきれないけれど、操作方法はすぐに理解できる。
シンプルな機会だからマニュアルを引っ張り出さなくてもある程度まで触れた。
実際の舞台音響で使用しないエフェクトやリアルタイムでの操作もやってみる。
案外簡単にいじることが出来る。
サンプラーと言う機材は、歴史が浅い。
音源の一部を加工、保存してリアルタイムに出せるようにする機材。
そもそもはアナログの磁気テープだったようだけれど、デジタル化して一気に一般価格帯になって普及した。
当初は1秒程度の音を切り出して再生するぐらいのものが、DJ文化でどんどん進化していった。
サンプラーにも使用方法ごとに、特化していくハードが出てきた。
主に音の加工から、シーケンサーによって楽曲製作に強い機種。
主にその音を演奏することをメインに据えた機種。
主に様々な音色を製作して、音源にしていく機種。
それぞれ、有名なアーティストが、好きな機種を紹介したりして、発展していった。
なぜそんなまさに「音楽」な機材が、今回必要だなとなったかと言えば。
この演奏をメインとする機種がいつの間にか発展を遂げて、別の用途でも使われるようになったからだ。
このサンプラーは、一曲丸ごと音源を入れることが出来る。最大で120曲。
それが、頭出しなしに、ボタンを押せば再生可能になる。
ループ設定も出来るし、押している間だけなるような設定も可能だ。
SEの音出しはもちろん、BGMもデータ保存量が増えたおかげで、タイトなタイミングで再生できるようになった。
それが噂を呼んで、本来、DJやクリエイターたちの楽器だったはずなのに音響機材の定番になった。
大抵のラジオスタジオや、簡易ネット放送局、舞台音響などでも、定番の器材になった。
昔のラジオ局のポン出しマシーンに比べて、異常と言えるほどのコストパフォーマンスで同じことが出来る。
某バラエティ番組では、ロケ現場で、MCのタレントがそのまま裸で使用していたりする。
ピンポーン!とか、ブブー!とか、一般の人と話しながら鳴らすのにちょうど良いのだ。
メーカーも音響側からの要望が高いことを知って、音響でも使用しやすいようにマイナーチェンジをした。
その機材は、なんと発売開始から10年近く経つのに、未だに製造、発売が続いている。
とにかく、需要が途切れることがなく、ヴァージョンアップする必要もないほど完成度が高かった。
DJやトラックメーカーは一人一台と言われて、音響会社、スタジオも導入して、高校演劇部なども購入しているらしい。
それも国内だけではなく、全世界的にだ。
余り知られていないロングセラー、ベストセラーだ。
デジタルの器材でこういうものは珍しいと思う。
音楽関連は、動画よりもデータ量が大きくない分、どんどんこなれていっている。
いつも舞台本番直前になると稽古場で音楽を鳴らすのに苦労していた。
稽古場にあるプレーヤーにCDをセットして、頭出しをして、曲を出すのだけれど・・・。
アクセススピードも遅く、2曲繋がっているような場面は音が途切れてしまう。
音込みの演出なんて、とてもじゃないけれど、出来る環境にはなかった。
それが動画で言う所のスイッチングのようなことが出来るようになる。
小屋入りして、実際の音響さんがいる状況で初めて、音込みの演出が入ることもあった。
音楽に親しんでいない俳優にとっては、とても大変な作業だったと思う。
クライマックスで、感情的な状態で、頭の中でカウントを4つ数えてからセリフにして!と小屋入りしてから言われる。
音楽やダンスに馴染みのある俳優にとっては、なんのことないことだけれど、そうじゃない俳優は慌てる。
それが2小節待ってから、走り出して!なんて言われると、もうチンプンカンプンになる。
そういう全てが、曲が届いたその次の稽古から、試すことが出来るようになる。
通し稽古を音響さんに見てもらう時も、うまくならないことが多かったのを解消できる。
映画セブンガールズも、うちの舞台も、音楽は大きな特徴の一つ。
それが、実際に本番の劇場入りするまで、感覚的にしかわからなかったのだから。
まぁ、もちろん、劇場のような圧倒的な音量やスピーカーで練習するのは難しいけれど。
とりあえず、今、やれることはやったから、
これでいい。
仮の音源で、稽古場でオペレーションの練習は出来なくはないけれど。
関係ない音が鳴っていたら、役者も演じづらいだろうし。
かと言って、ヘッドフォンつけて、勝手に練習するのも、それほど面白くないから。
あのシーンやあのシーンのオペレーションは、練習して本番に挑みたいから。
練習できる日までは、なんとなく、触ったりを繰り返しておこう。