郵便物の受け取りもあるから早めに稽古場に。
スタッフさんが来る準備をしておく。
床を仮想舞台にして、椅子を用意して、台本の準備。セットのモデルの準備。
それぞれが自主稽古を始める。
衣装に着替える役者もいる。
班によっては、全体でのセリフ合わせも。動きの確認も。
自分の班はもうジタバタしない。
先週までで、充分に準備してあるから、あとは心の問題。
各班の通し稽古が順番に始まる。
ストップウォッチで尺を出しながら、きちんと観る。
通しで観れる機会は、他の班はどちらも初めて。
通して観てはじめて見えるものや、わかることが出てくる。
全体の中で、弱い部分、強い部分も見えてくる。
なるほど。
自分の班は最後。
人の班の稽古を観ていると緊張感が増えて行ったのだけれど。
ある時点で、それも抜けていった。
まぁ、なるようになるし、準備はしてある。
ややこしい、細かい演出も、稽古でしか獲得できなかったものも、ある。
それをいつもより良く見せようと思ったって、それは難しい。
いつもの稽古通りにやる。
ここまでくれば、まぁ、それだけだな・・・という感覚。
配った台本を見ながら、時々台本から目を離して芝居を観るスタッフさん。
自分の班の後半で、音楽のトオルさんも照明の河上さんも、台本から目を離しているのを観る。
じぃっと、芝居や表情を観ている。
それだけで、充分な満足。
魅力的な役者の表情が出ているシーンだったから、より嬉しい。
通しが終わって、軽くミーティング。
音楽について、照明について。
基本的にはお任せだけれど、まるで何もないわけでもない。
基本的には、こんな感じでというのだけお願いしてみる。
けれど、そのお願いの範囲を超えても、越えなくても良い。
すでに信頼しているスタッフワークなのだから。
そのまま5月公演のDMを製作。
手を動かしながらの、ミーティング。
久々に大勢集まると、まぁ、とても賑やかだ。
ミーティングで伝えるべきことは伝わっていたのか。
ちょっとわからないけれど、まぁ、仕方がない。
やけに急いでいるメンバーがいると思ったら、DM作業を早めに終わらせたくて仕方がない様子。
気付けば、ミーティングそっちのけで、掃除まで始めている。
スタッフさんが待っているから、酒席に行きたいのかと、笑ってしまう。
早めに切り上げて、飲み屋に。
作品について、スタッフさんに確認したいことを聞いておく。
もうこの辺は伝わらなくてもいいやと思っていたことも、ずばずばと見抜かれている。
ああ、こういう細かい部分まで伝わっているのか・・・と安心する。
もちろん、怖いのは怖い。
吉田トオルさんが、作品のテーマそのものを下敷きに、音楽の話を始める。
わあ、わあ、わあ。と心の中がざわつく。
テーマなんて伝えていないのに、もうそれが当たり前に出てくる。
そう、この感覚は、そういえばショートフィルムの「オクリビ」以来かもしれない。
自分で書いた作品に音を付けてもらうのなんて、それ以来なのだから。
演出で、こうなると嬉しいと言ってあったラスト。
その演出を聞いていたかのような、照明の河上さんの一言。
これも、嬉しかった。
まぁ、それで一安心とはならないのだけれど。
長く付き合っている、スタッフさんの洞察力。
完全なお客様の視点とはやっぱり違う。
お客様の感想は、きっと、また別のものになるのだから。
それでも、だいぶ、大きな力を頂いた。
まだ少し怖い部分はあるから、おごらないで済むと考えればいいか。
飲みの席に現れた飛び入りゲストとの話。
まるっきり、20周年そのものの馬鹿話だった。
それも盛り上がって、気付けばいつもよりも長く長く飲んでいた。
帰りの電車で、急速に眠くなって目を閉じた。
目を閉じた瞬間から、今日演じた役者の自分が出てきた。
自分の芝居をそういえばまともに振り返っていなかったと気付く。
寝ているのか起きているのかわからない半覚醒の中。
ゆっくりと、相手役の、あの目を思い出していた。