2018年02月10日

肯定が生み出すもの

インターネットでの情報の広がり方のスピードの違いを感じている。
1つ報道が出ると、当然、肯定と否定の両方の意見が出て、それは平等なのだけれど。
どうも、否定的意見の方が圧倒的に広がるスピードが速くて、あっという間に覆いつくす。
何か問題があって、それに対しての否定という場合もあるのだけれど。
時々、行為そのものではなくて、その人の生き方のようなものへの否定まで出てくるのが見苦しい。
例えば政治のことを意見するなら理解できなくもないけれど、呼び捨てにするような書き込みは、観ていて気持ち悪い。
例えば大相撲の問題で意見するならまだ理解できるけれど、人間性に触れるようなことを見ると厭になる。
その辺の井戸端会議だったら問題ないけれど、人が観ているネットでも、そういうことがある。

理由はたった一つで、言葉の力関係なのだと思う。
肯定の言葉と、否定の言葉では、圧倒的に否定の言葉の方が強い。
厳しい意見の方が、過激になりやすいし、エキセントリックになる。
肯定の言葉は、基本的に修飾語の連続になりやすいし、流れやすい。
例え方も、当然、過激になっていくから、タイトルやラベリングもしやすくなる。
ニュースサイトでもSNSでも、興味がわくキャッチィな言葉ほどクリックされる。
アクセス数の数は、そのまま評価基準なのだから、自然と、ニュースサイトも否定的意見が増えていく。
何かを褒めたり、肯定する記事も面白いんだけれど、数字の面で不利になっていく。

これまで文春がネタを提供して、タレントを一斉攻撃していたユーザーが。
ミュージシャンの引退会見を契機に、文春そのものを一斉攻撃した時にも感じた。
つまりは、攻撃対象さえあればいいのかもしれない。
そこに過激な表現、エキセントリックな要素を付け加えられるのであれば。
SNSだって、例えばこのBLOGだって、自分の意見として書いているつもりでも。
実は、全体の中で、相対化されながら、どうやって読んでもらうか考えて書いているはずで。
だとすれば、そういう空気や流れは、全体に大きな影響を与えている。
とにかくフォロワーの数、いいねの数、アクセス数、数字が生み出す共同幻想だ。

物語が持つ力は、肯定の力だ。
例えば、レオンという作品の主人公は殺し屋だ。
報道に乗れば、この主人公を肯定する記事など、雀の涙ほどしか出ないはずだ。
けれど、この映画を観ると、自然と彼を肯定している自分に気付く。
人を殺し続けているのに、小さな観葉植物に小さな愛情を傾けていることだとか。
少女を心配したり、少女に愛情を持ち始めていくこと。
殺し屋の本質を考えれば、肯定できる要素などほとんどないはずなのに。
物語を通してしまうと、不思議と感情移入をしてしまうようになる。
織田信長だって、実際には残虐非道な作戦を実施したリアリストだ。
けれど、ドラマや映画を通して観れば、一人の青年として、感情移入してしまう。

演じる役者も、肯定の力を使って、演じている。
自分が何者かになる時に、その登場人物を否定したまま演じることはとても難しいことだ。
例え純粋な悪だとしても、それを理解できないか、彼の自然を見つけられないか、考える。
圧倒的に肯定するところからしか、演じ始めることが出来ない。
いや、出来なくはないけれど、少なくても、その方がより深く演じることが出来る。
そもそも、その書かれた登場人物を作家は、肯定している。
どんなに悪役として書いていても、心のどこかで肯定しているはずだ。

物語が肯定の力で出来ていて、それを創る人たちが肯定の力で創っていて。
実は更に、もう一つ、大きな大きな肯定の力が働いている。
それは、作品を支えてくださるお客様の肯定の力だ。
たった一人の拍手の音が、たった一人の面白かったという一言が、たった一人のツイートが。
実は、作品を強く強く支えてくれている。
ましてや、セブンガールズは、クラウドファンディングという多くの人の力で実現された企画で。
制作前から、たくさんの肯定の力が、この作品には向けられている。
娼婦を描いた作品だけれど、そこには肯定が溢れている。

否定的な意見が次から次へと新しい記事を生んで、増殖するような時代だけれど。
きっと、物語は、そういう時代だからこそ、とっても大事なものなのだと思う。
そのスピードや広がり方には勝てない部分はあるけれど。
使い捨ての、インスタントな否定的意見とは違って、肯定は心に残っていく。
なぜならば、どんな意見も、いずれ自分に跳ね返ってくるからだ。
否定が跳ね返ってくれば、苦しいばかりだ。
肯定は、いずれ、自分に返ってきた時に、大きな力になる。

きっと、この作品の肯定の力も。
否定の力に比べれば、圧倒的にスピードが遅いものなのだろう。
それでも、じわじわと、侵食していくかのように。
世界を肯定してほしいと、願っている。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 16:27| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする