30年を超える久々の大寒波らしい。
つい先日関東では大雪と大騒ぎだったのに。
日本全国で見たら、むしろ、大雪はリアルタイムで続いている。
実際、今、家の外は氷点下らしい。
体感温度が、風の影響で氷点下はみたことがあるけれど、実際に気温となると・・・。
水道管の破裂とか、路面の凍結。想像できないことが起きそうで怖い。
歩いていて怖いのは、自分が転ぶことよりも、バイクや自転車が突然転ぶことだ。
いつ、車体が滑って来てもおかしくないな・・・と、何度か思ったことがある。
明けて、朝には、平成に入って最低気温を記録しそうだとのことだ。
大雪のビジュアル、噴火の映像、骨身に染みる寒気。
溜息が出る。
その溜息も白い。
冬は厳しいのだった。
文明社会に生きていてさえ、春が待ち遠しいのに。
貧しかった時代の冬はどれほど厳しかっただろう。
子供の頃、校庭にあった水道の蛇口をひねっても、凍り付いて出なかった。
そんなことを、ふと、思い出した。
あの後、おいらは、蛇口を元に戻したんだろうか?
隙間風もなく、炬燵があって、エアコンがあって、毛布がある。
そんな、おいらたちが、終戦直後の物のない時代を演じることなんて本当の意味で出来るのだろうか?
そんなことを何度も何度も考えた。
男たちが抱いた劣等感、女たちの生命感。
そういうものを、肉体感覚で現実として生きることは出来ただろうか?
その一つ一つが空気になって、映像に残るのだから。
2月や3月の東京大空襲は、異常な寒さだったらしい。
焼夷弾で火が上がったから、雪が雨に変わった。
それにしたって、冷たい雨が降っていたんだろう。
冷たい防空壕の中で、頭巾を付けて、肩を寄せ合って、白い息を吐いていた。
そういう時間を過ごして、あの暑い夏の日の終戦を迎えたのだから。
いつも以上に自然は厳しく、季節を生々しく感じたのじゃないだろうか?
映画を製作した。
いつか、夢だと思っていたのに。
現実になった。
現実になったからこそ、また、新しい風景を夢見ている。
その夢も、現実にしていく。
絶対にやる。
耳がちぎれそうになるほど、痛い。
せめて、風は吹かないでおくれ。
縮こまりそうな手を出して、丸くなる背中を伸ばして。
固まりそうな表情を、もう一度、くしゃくしゃにする。
吹くなら吹け!向かい風でも構わない。
さて、次回公演の詳細を集めないと。
そろそろ宣伝の準備だ。
やることをやるのだ。
世界の端っこの、ほんの何人かの集団で、肩を寄せ合いながら。
それは、まるで、いつかの防空壕の中のようだ。
世界の真ん中を睨みつけてやれ。
今は、雌伏の時だ。
春の準備を始めよう。
白い息が、消える。