2017年12月21日

人間力

いよいよ今年も残るところわずか。
年末年始の映画が封切して、連続ドラマは最終回を迎えていく。
テレビ番組も特番がどんどん増えてきた。
今期観ていたドラマも、残す所「陸王」だけしか残っていない。
その陸王も、今週末には最終回を迎える。
あ、相棒はもちろん2クールだけれど。

陸王を観ていて、驚くのは、あまりにも他業種の人が俳優をやっていることだ。
お笑い芸人だけでも何人出ているだろう?
芸人、落語家、歌舞伎役者、ミュージシャン、若手、新人、果ては、エッセイストまで俳優として出演している。
最近になって、元スポーツ選手まで重要な役どころで登場したもんだからひっくり返った。
ここまで幅広いキャスティングというのも珍しい。
自分がキャスティングするなら・・・と想像すれば、絶対にありえない選択肢だ。

それでも、しっかりと破綻なく、演じているのには多分理由がある。
当然、出演者の皆様がしっかりと取り組んでいるというのもあるのだけれど、それだけではないと思う。
真剣に取り組むと一口に言えば簡単だけれど、その真剣にも、質があるからだ。
陸王では、目の前に、役所広司さんがいる。
この人と芝居をしなくてはいけない。
そして、この人の芝居を観たり、背中を見たりできる環境下にある。
それだけで、何もなく真剣に芝居に向かう何倍ものポテンシャルを発揮できていると思う。
・・というか、そう思えるだけのシーンが山ほどある。
そして、その全ての異業種俳優と役所広司さんの絡みが用意されている。
相手役をしなくてはいけないし、すれば、確実に受け取れるものがあるはずだ。
それは、もう、観ているだけでも、伝わってくる。

テレビドラマでは通常、主演が座長になるのだという。
当然、俳優によって、その座長としての役割は大きく変化するだろうと思う。
背中で見せるタイプ、陽気に盛り上げるタイプ、周りに支えられるタイプ、様々なはずだ。
実際の役所さんがどのような形で主演としてそこにいるのかはわからないけれど。
その姿は、周りを発奮させる何かを持っているのだけは間違いがない。
俳優として生きている人だけではない環境で破綻なく芝居が成立するというのは簡単なことじゃないはずだ。
それぞれが当然、爪痕を残したいだろうし、自分の元々持っているものを出したいとだって思うはずなのに。
シンプルに作品に向かっているというのは、監督やスタッフ陣だけの理由とは思えない。
やはり、その中心にいる人の持つ力は、作品に大きく影響するのだなぁという証拠だ。

バイプレーヤーは、作品にアクセントを加える仕事をしなくちゃいけない。
それはそれで、重要で、難しいことだ。
物語の全てを把握して、全体の空気を把握して、その中でベストなアクセントを選択するのだから。
だから、もちろん、主演だけが大変なわけではない。
それでも、なんというか、演技だけではなくて、座組としてのポジションの重要性というのもあると思う。
バイプレーヤーだけど、あの人が現場に来ると、ちょっと活気が出る・・・。
そういう役者だってきっといると思うのだ。

陸王では、なんと、あの寺尾聡さんがバイプレーヤーに徹している。
まさに、徹しているという言葉が一番しっくりくる。
ルビーの指輪でミュージシャン出身と思っている人も時々見かけるけれど。
演劇界においては、まさにその演劇の中心地で育った俳優だ。
(・・・宇野重吉さんにどんどん似てきていて、びっくりする)
当然、主演作品だって、いくつもやっているし、舞台では座長を何度もやっているはずだ。
その寺尾さんが、座組の中でも非常に重要な場所に立っていることもすぐにわかる。
何かサポートをしているとは思わないけれど、役所さんと軽く話をしているだけで、空気が出来るはずだ。

そんなことを考えていたら、なんと芝居の持つ奥深さの面白さかと、楽しくなった。
実際の演技の深さ。座組の中での共演者との関係性。
良い作品は、それが生まれる環境でしか生まれない。
デジタルだろうが、フィルムだろうが、空気は常にそこに映るのだ。

役者は人間力だと、何度も何度も教わった。
何度も教わっただけじゃなくて、何度も感じた。
不倫しようが、銀座のクラブで豪遊しようが、ゴールデン街で暴れようが、芝居には関係がない。
結果的に、その俳優の持つ人間力が深く、大きくなるのであれば、それが収穫になっていく。
そういう役者を今まで何人も観てきた。
つまらない人間は、つまらない役者にしかなれないよ。
そんな言葉も、身に染みるように感じる。

異業種であろうと。
そこに、強い人間力を感じれば。
当然、影響を受けるはずだ。
それがとってもとってもよくわかるドラマが陸王なんだと思う。
原作の持つ力ももちろんあるし、スタッフワークから生まれる力があるのもわかったうえで。
やっぱり、役所広司さんの持つ人間力が、あのドラマの中心に常にあるとおいらは感じている。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 04:17| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする