海の向こうで誰かが死んだってさ。
その人生に、その生きざまに、そのあっけなさに脱力する。
生きることの無意味さや虚しさが、ひゅるると風のように吹く。
いつかすれ違ったあいつが死んだってさ。
その瞬間を思い出して、その笑顔を思い出して。
そいつの顔を思い出して、そいつの声を思い出して。
憧れていたあの人が死んだってさ。
目標だったのに。もっともっと観ていたかったのに。
抽斗を開けて、集めてきた宝物を取り出す。
青春を共にした仲間が死んだってさ。
とっくに喪っていたはずの時間の喪失があからさまになって。
自分を構成するいくつものことが、あの日々にあったと気付いて。
涙が自然と零れ落ちて。
血を分けた家族が死んだってさ。
生まれてから今日までの全ての人生にあなたがいたことに感謝して。
当たり前の日常が変化してしまうことに戸惑って。
隙を見せれば、泣いてしまう弱い自分に気付いて。
愛している人が死んだってさ。
あなたは私の全てで。あなたのいない世界に取り残される残酷さに耐えられなくて。
世界が終わりを迎えるような、たった一歩先すら見えなくなって。
泣き疲れて、眠ることだけが、救いになって。
自分もいつか死ぬんだってさ。
誰かが泣いてくれるかな?
誰かが覚えていてくれるかな?
なんにもなくなっちゃうのかな?
たった一人の人生が、たくさんの思いを生んで。
距離の違いも、関係の深さもあるけれど。
でも多分、思いには序列なんかない。
あいつも、こいつも、自分も、同じように悲しい。
心が切り刻まれるようなやつもいれば、心に風が吹くやつもいるけれど。
涙の量にも違いはあるけれど。
やっぱり、同じように切ない。
同じように、どうしょうもないのさ。
序列なんかないけれど。
右の奴も左の奴も。
言葉を交わさなくても、目を合わせただけでも。
胸にいるあなたを思っているってわかったから。
ラストの曲で、たったの4小節だけだけど、あなたのソロパートを用意したよ。
最初のライブでゲストで出たあなたが弾いたところさ。
右の奴も左の奴も聞こえていたはずさ。
あなたのギターが。
君のギターが聴こえても、君はどこにもいやしない。
たぶんそれは、「ありがとう」
悲しいことも、涙も、全部。
それを乗り越えて、小さく笑って。
「ありがとう」だけが残って。
誰も気づかないうちに世界を覆うんだ。
そうやって、少しずつ世界は良くなっていく。
それだけが今は大事さ。
映画も音楽も舞台も全部。
「ありがとう」を広げるためにやってんだい。
雨はいつやむのかな?
秋雨に予定を聞くなんて、野暮だなあ。