2017年10月05日

動画の時代

子供の頃、入門書というのを何冊か持っていた。
繰り返し読むから、大抵はボロボロになって、ページが零れ落ちたりした。
将棋入門とか、野球入門とか、子供用になんでもかんでも売っていた。
意外にちゃんとしていて、イラストでの解説とか、プロの先生の紹介とかもあった。
お金持ちのおうちの子じゃないから、何冊も持っていたわけじゃないけれど。
とにかく、人から聞くか、本を読むしか、教わるすべがなかった。
当然、読解力がなければ理解できないし、間違えて覚えてしまうことも多々あったはずだ。

昔のドラマや映画でよくある、父と子のキャッチボールも、そういう意味だ。
結局、身近にいる大人に教わるしかなかった。
球の投げ方も捕り方も、素人の父親に聞くしかなかったんだよ。
今も、時々、息子とキャッチボールをするのが夢だなんてセリフが出てくるけれどさ。
あれは、もう実は現実感のないセリフだ。
公演の殆どで、キャッチボールなんかは禁止だし、父親に教わる方が数が少ない。

Youtubeで、検索して、バッティングでも送球でも捕球でも勉強しちゃう。
本に書かれている文章を読み砕いたり、イラストを見て、わかろうとしたりする時代じゃない。
動画で、わかりやすく説明してくれるのだから。
入門書にはなかったような変化球の投げ方だって、すぐに出てくる。

時々テレビでも、選手が子供に教えるというような企画もあったけれど。
そもそも、それも録画なんかする機械が家庭にはなかった。
だから、たった一回の放送を目を皿のようにしてみたりした。
子供同士の将棋をやっていた時に、NHKの将棋番組を見て、チンプンカンプンだったこともある。
見逃したら、もう二度と見れなかったんだから。

それが中学生ぐらいになって、ようやくVHSが一般化してきた。
それまでがそれまでだったから色々なものを録画したな。
テープメディアだったから、早送りして頭出しして、映像を確認した。
VHSには3倍モードと言うのがあって、120分のテープで、6時間録画できた。
貧乏性だから重ね録画とかも何度もしたし。
壊れても自分で開けて、磁気ヘッドの掃除とかまでやったなぁ。

レーザーディスク、DVD、ハードディスク、Blu-ray。
メディアがどんどん変化しながら、画質は向上して、頭出しなんか必要なくなった。
レンタルビデオ店があるから、うわさでしか聞かなかった映像も確認できるようになった。
邦画名監督コーナーのレンタルビデオを端から毎日借りて帰ったこともあった。
DVDの購入となると、とっても勇気が必要だった。

それが、今は、検索。
ストリーミング。
なんと映画作品でさえ、それで観ることが出来る時代になっている。
それどころか、テレビがなくても、PCがなくても、手元の小さな端末で観れてしまう。
録画して蒐集した映像も、あちこちに落ちている。

動画の時代だ。

王貞治の野球入門も。
大山康晴の将棋入門も。
もうきっと、どこかに行ってしまった。
難しい所は結局とばしちゃって、ちゃんと読めてないんだろうなぁ。
どこかにあるなら、今こそ、読んでみたいなぁ。

でもね。
自分の中ではお父さんに教わったことが全てで。
自分の中では本から学んだことが世界で。
それはそれで、なんだか大事なことなんだよなぁ。

とは言え、今の小学生は違う。
帰宅してすぐにパソコンに向かって、ずっとYoutubeを観てるなんて、普通のことなんだそうだ。
親のスマホで、映像を撮影して、勝手に自分でアップロードしてたなんて話もあるんだって。
そういう子たちが、これから、どんどん大人になっていく。
そういう中でも、おいらたちは、芝居をちゃんと考えなくちゃいけない。
動画がすぐ手に入る世代が普通になった時に、感性がにぶっているようじゃ、つまらない。

その時に。
あのボロボロになった入門書の良さも、ちゃんと伝えられるような俳優であればいいなぁ。

晴れてよかった。
今宵の中秋の名月は見事すぎた。
あの月だけは、子供の頃から何一つ変わらない。
posted by セブンガールズ映画化実行委員長 at 02:58| Comment(0) | プロモーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする