皆既日食の日だ。
残念ながら日本からは見れないけれど、北米などでは見れるとのことで世界的なイベントになる。
アメリカの企業で、皆既日食に合わせて製品発表会を開くなんてニュースもあった。
日本は、その名のごとく、太陽の国だ。
世界から見て、地域的にもっとも東に位置することから、太陽の昇る国とされてきたこともある。
環太平洋に住む他の原住民と同じく、太陽信仰を根に持っているということもある。
日本が歴史上初めて登場したと言われる魏志倭人伝に出てくる女王の名は卑弥呼。太陽の巫女だ。
そして、今でも、神道における最高の神様は、天照大神だ。
日本最古の歴史書、古事記に、太陽の神、アマテラスは登場する。
アマテラスの神話の中で、天岩戸(アマノイワト)の話がある。
歴史学者は、この神話を皆既日食の現象のことを書いているのでは?と言う人がいる。
古代人たちがいつも見上げていて、信仰深い、太陽が昼間に真っ暗になる様をどう感じたか・・・。
それを、太陽神が天にある岩の戸に隠れたのだと解釈したのではないかと言う説だ。
実際に、魏志倭人伝の時代に、日本で観測できる皆既日食がどの地域であったのか調べている人もいる。
邪馬台国は、恐らく、その地域にあるはずだという説に元づいての推測だ。
古事記では天岩戸に隠れたアマテラスをどうやって、岩から出てもらったのか書かれている。
説得しても、怒っても、お願いしても、どうしても、アマテラスが出てくれなくなったのだ。
そこにウズメという名の醜い女が、私が出しますと現れる。
ウズメは、裸になって、踊り狂う。
それを見ていた神たちは思わず、大笑いしてしまう。
すると、その笑い声が気になったアマテラスが自分から岩をそっと開けるというような物語だ。
このウズメの踊りを、古事記では、ワザヲキと書いている。
漢字では「俳優」と書いて、ワザヲキと読む。(イサラギと聞いたこともある)
なんと、日本最古の本に、すでに俳優が登場しているのだ。
娼婦と俳優は、人類最古の商売だなんて聞く。
これに巫女が加わっているのも聞いたりする。
実は、芝居、芸、というものは、古来から必要とされたものだった。
その後、俳優が演じるものは、様々に変化していく。
文字が浸透していない時代には歴史を伝え、政治を伝え、時事を伝えた。
歴史を伝えるために、神話化していった物語も山のようにある。
これは何も日本だけではなくて、有名なトロイの木馬だって、歴史でありながらギリシャ神話になって行ったのだ。
中国の三国志は、いつの間にか歴史から、妖術使いなども登場するスペクタクルファンタジーに変化した。
芝居は人の生活に根差した重要な情報源の一つだったのだ。
それなのに、面白いなぁと思うのは、日本最初の芸能が、コメディだっていうことだ。
皆が笑うと、太陽が出てくるなんて、なんて、ロマンティックなんだろう。
それも、美人女優でもモデルでもなくて、醜い女性が・・・なんて、すごくドラマティックだ。
ウズメは今も日本の芸能の神様になったし、天岩戸のお祭りでは今も踊る。
いつも輝く太陽が、隠れていく。
ただの自然現象かもしれないけれど。
暗い空の下で、大爆笑するなんて、古来の日本人が考えたんだから。
俳優であるおいらは、そんなことに思いを馳せて。
ウズメさんに、ちょっとだけ、お願いをするのだ。
連綿と続く日本の歴史で、あなた様が最初の女優ですよ。俳優ですよ。
おいらは、その末端の末端にいますよ。
太陽が興味を持つような。
そんな、芝居を、おいらもしたいですよ。
そんなふうに。
おいらも、笑わせておくれ。ウズメさん。
のちの、オタフクさん。オカメさん。
続きを読む