ドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロ
バスドラムよりも低い音が高い空でコダマしていた。
夕立ちというには早い時間。
見上げた空は立ちどころに暗闇になってゆく。
昨日見上げた青すぎる青の空は曇天に覆われていった。
落ちてきた雨粒は粒なんてものじゃなかったし、ましてや、涙になんか例えようがなかった。
ぼたぼたと、重い水の塊が、空から落ちて、跳ねた。
風はうなり、アスファルトはあっという間に黒に塗られた。
瞬間。稲光。
ストロボ効果で、まるで、世界が切り取られたかのようなストップモーション。
少し遅れて、世界を引きちぎるような轟音が、もう一度世界を動かし始めた。
遠雷が聴こえた時にはもう遅いよ。
雷様は、すぐそこまで来ているんだ。
おへそを隠したって無駄だよ。
建物の中で、外の様子を眺めてる。
本当は傘もささずに飛び出して、走り回りたいのに。
他人事にしてたまるか。
自分の体で、その雨を受けて、雷鳴を聞いて、雷光を観たいんだ。
感じたいんだ。
だって、知ってるんだ。
あっという間に真っ暗になったように。
あっという間に雨が降ったように。
あっという間に、この雲が去っていくことを。
あっという間に、人生なんか終わっちゃうことを。
ほら、もう晴れちまった。
耳を澄ませ。
アンテナを立てろ。
どこかで遠雷が鳴っているかもしれないよ。
そうしたら、勇気を出して、飛び出せ。
飛び出さなきゃわからないことがあるはずさ。
その一歩を。
その一歩を、おいらは、いつまでだって、出し続けたい。
そこがどんな地獄でもいい。
そこが豪雨の中でもいい。
つらかろうが、苦しかろうが、しったこっちゃねえやい。
雨ニモ負ケズ 風ニモ負ケズ?
そうじゃねぇな。
負けるのなんか、怖くない。
どこかで一矢報いてやるんだ。
鳴ってないか?遠雷。
遠くの暗い雲を睨んだ。