ヴェネツィア国際映画祭のラインナップが生中継で発表された。
日本からはコンペティション部門に是枝監督。
アウトオブコンペティションになんと、坂本龍一さんのドキュメンタリーが。
そして、クロージングには我らが北野武監督が選ばれた。
この3人が集まるのか・・・と溜息。
本当にすごい場所に肉薄していたんだなぁ。
今からスロット数が増えて、追加発表とかされたらいいのに。
そしたら、3人の誰かが監督とニアミスするかもしれないのになぁ。
この3人には是非セブンガールズを観て欲しいなぁと思った。
いや、観て欲しい人はたくさんたくさんいるのだけれど。
坂本龍一さんのドキュメンタリーは、タイトルがそのまま「Ryuichi Sakamoto:coda」。
読み上げられた瞬間、びくっとしちゃった。
いきなりそれまでイタリア語だったのに、リュウイチなんて言われたから腰が抜けるかと思った。
何をどうしたって、エントリーもしていないのだから、呼ばれるわけがないのに。
海外のナマリでの、リュウイチって、やけに生々しくて、何度も呼ばれた記憶があるから重なってしまった。
そのドキュメンタリーの存在は、なんとなく知っていたけれど、想定すらしていなかったから。
そういえば、カンヌの発表で、デビッド・リンチの名前が呼ばれたときも、びくっとしたのを思い出した。
全世界生中継で発表されるのだから、やはりすごいなぁと思いつつも。
同時に、なんというか、少し自信が出てきた。
小劇場で芝居をやってるおいらたちが、こんな場所に近づいただけでもとんでもないじゃないか。
生中継の会場はとても大きく、スクリーンがあり、たくさんの記者が集まっていた。
きっと、全世界の映画関係者が注目していたんだと思う。
そういう祭典の別部門とは言え、最終審査に行ったって、胸を張れることだ。
もちろん、落選したら宣伝にもならないし、結果的に知名度だって1mmも上がらないと理解しているけれど。
だからこの自信はむしろ、おいらたちの頭の中だけの自信なのだけれど。
しかし、皆、どうしているんだろう?
実際に、今も「SEVEN GIRLS」という作品を観た人は関係者ばかりだ。
それも、スクリーンで観た人なんか、かなり限られている。
もちろん、おいらの知らないところで、マーケットや審査の中で観ている人がいるのだけれど。
実際に完全な外部の人の評価というのを未だまったく知らないで進んでいるのだ。
まず観ていただかないと、なんの意味もないけれど。
自分たちが良いものだと信じて進むしかないのだ。
竹中直人さんが初監督をした「無能の人」という映画があるのだけれど。
この作品は、おいらたちがエントリーしたヴェネツィアの国際評論家週間に選ばれた。
選ばれただけじゃなくて、受賞もしたのだけれど。
当時、関係者試写でも、評価がとても低かったらしい。
それが、ヴェエネツィアに選ばれて、受賞した途端に、評価が良くなったという。
まだ、世界の映画賞に日本映画を持っていくのが珍しい時代だったから、海外の評価というのは今よりも神ががってたのかもしれない。
なんというか、とてもそれはわかる。
それぐらい、評価って難しいものなのだと思う。
実際、おいらも、自分の尊敬する人が、面白いっていう映画は、なんだか気になってしまうし評価してしまう。
自分が好きな人が、隣で泣いている映画は、なかなか否定できない。
評価って自分の中から出てくるようで、実際には自分の外部からの影響もとても強い証拠だ。
だから「海外で高い評価を受け・・・」なんて宣伝文をよく見かけるのだと思う。
一見映画とは関係なさそうな人の短評が、そのまま宣伝文になるのも同じことだ。
あのロックスターが絶賛!なんて、どこか興味をひいてしまう。
おいらたちは、作り手や演じ手なわけで。
そのおいらたちが、いくら面白い、すごい作品だ!と言い続けても、きっとそういう説得力は生まれない。
直接の関係者たちが文字通り自画自賛しているだけになってしまうからだ。
おいらは、腹の底から、この映画はすごいぞと思っているけれど、それは中々伝わることじゃない。
だからこそ、関係者でもない第三者からの評価というのが気になって仕方がない。
皆、試写会やプレミア上映まで、それはわからないままなのかな?
舞台公演なんか幕が開くまでわからないんだけれどさ。
それにしても、どうしているんだろうって考えてしまう。
実際、北野武監督を最初に見出したのは、海外だよなぁって思う。
日本国内は、海外での高い評価のあとに、評価し始めたイメージだ。
誰かの評価が始めて聴こえてくるその日まで。
きっと、自分の中の自信だけで進む。
そういう意味では、あの場所に肉薄したことは、数少ない、けれど大きな自信になった。
今、形ある第三者の評価って、コレしかないけれど。
そのコレが、なんとも世界規模で想像を超えるような大きなイベントだというのだから。
そう思うだけで、少し震えてきてしまう。
そういうことを積み重ねていくしかない。