前日までの舞台の疲労、その後の撤収作業の疲労が残る中、無理に起きる。
腰に鈍痛があるけれど、荷を纏めて、編集に向かった。
前日、監督と約束した10時を目指して。
到着して、すぐにセッティングを開始する。
久々の3画面編集。
PCにモニターを二つ、コントローラー系の接続。
そして、今回は、カラコレ済みの映像での編集だから外付けのHDDも接続した。
編集ソフトを立ち上げて、それぞれのハードウェアが正常に動作しているかチェックしていく。
問題がない。
監督が10時を「目指す」と言っていたから、まあ、10時には来ないかもと思いつつ・・・。
本日中に編集をある程度済まさないと、スケジュール的に厳しくなる。
何が厳しいかと言えば、おいらが勝手に背負っているつもりの皆の願いのようなものが厳しくなる。
だから、今日という日は非常に重要度の高い日のはずだ。
到着までに、プロデューサーにメールで必要事項の確認をもしておく。
目指すでも、10時には到着すると思い込んでいたら。
二度寝したとの連絡。
そして11時半過ぎに到着。
間に合わない可能性を考えれば有り得ない時間だった。
再編集には、〆切が設定されているからだ。
・・・とは言え、事情は分かっている。
舞台の打ち上げ、何時まで参加してたんですか?と確認すると、なんと4時までだったらしい。
編集に遅刻したり間に合わなかったらお前らのせいだ!って言ったんだあ、なんて笑ってる。
役者は、打ち上げで、当然、演出家の話を聞きたいから、しょうがないことなのだ。
まぁ、そんなことだろうなぁって思っていた。
自分も役者だからよくわかる。
それに集団生活が長いから、それの終わりは中々別れづらくもなるのだ。
おいらだって、打ち上げに後ろ髪をひかれたぐらいだから、演出家なんて、きっと、もっとのはずだ。
思わず、おいらも笑ってしまった。
もちろん、重要度は二人とも理解している。
プライオリティを忘れたわけじゃない。
だから、到着してすぐに再編集が開始された。
監督がメモっておいたざっくりな編集ポイントをおいらに出来る範囲での最高速で編集していく。
すでに編集が終わっている映画を海外プロモーション用に、ウェイトダウンしていく。
いわゆるディレクターズカット版とプロデユーサーカット版のようなものだ。
作品のテンポが変わったり、印象が変わる部分は後回しにして、出来る箇所から。
最初の編集点が一通り終わった時点で、必要と言われたウェイトダウンの50%に満たなかった。
作業が出来る時間的に間に合うか間に合わないかギリギリのライン。
そして、すでに、監督が事前に考えておいた箇所は、全て、手を入れている状態。
つまり、そこから先は決まっていないのだから、クリエイティブな作業に転換していく。
あそこのシーンをもっとダイエットできるはずだ。
ここのシーンを、ちょっとだけニュアンス変更しないか。
そういう提案まで必要になって行く作業。
こんな時、監督との共通言語があることの大事さを思う。
あのシーンのアレは、ここに繋がるから、あえてこうしてみませんか?などなど。
物語の理解度と、共通言語があるからこそのスピード感で作業を進められる。
20年間、作品について、あーだこーだと話し続けてきたことは、すでに貯蓄された財産なのだ。
それでいこう!
それしかない!
いや、そこは大事にしたいかな?
やめておきましょうよ。
ここの流れは完璧ですよ。
あ、音の途中だから、切るなら、ちょっとずらしたいです!
などなど。
頭の中が久々にシュワシュワとしてくる。
舞台のセリフをもう、忘れちゃっても良い。
この作業のために、脳内をどんどん映像に集中させていけばよい。
途中、プロデューサーと電話確認したり、いっぷくしたりしながら。
監督の脳内とどんどんシンクロしていく。
監督の用事があるからその終わりの時間の間際に。
目標としていたウェイトダウンに到達した。
もうアイデアが出ない・・・というお手上げ状態に何度かなったけれど。
なんとか辿り着いた。
殆ど、奇跡なんじゃないかと思えるほどのダイエットに成功したはずだ。
監督と別れ、食事をとってから帰宅。
編集ポイントの整理をしようと思っていたのに、ノックダウン。
一気に連日の疲れがおいらを襲った。
よほど深く眠っていたのか、深夜に起きると頭がすっきりしている。
編集ポイントの整理を端から確認していって、問題点がないか調べていく。
コマ落ち、コマずれ、その全てを修正して、外が白み始めてきた今、ようやくデータの書き出しに入った。
表示されているデータ書き出し作業の時間は、なんと8時間・・・。
今日の所は、書き出されたデータにエラーが出ないことを祈って、布団に入るしかない。
納品の〆切は近い。