小屋入り二日目。
朝一で小屋入りして、劇場内の整理、美術の残り、音響の搬入などなど。
一通り終えて、アクションのチェック。
そして、場当たり確認がはじまる。
いわゆるテクニカルチェック。
照明の切り替わり、音響効果の入るタイミングと、ゲージ。
芝居の稽古というよりも、そういった効果の確認が中心になる。
舞台には暗転がある。
映画でもブラックアウトがあるし、編集で暗転は出来るけれど。
必要性がないから、暗転はむしろ映像の世界では、効果の一つだ。
けれど、舞台の暗転は、必要だからある。
転換であったり、場面であったり。
まったくなにも見せないという時間帯だ。
暗転するから、当然、お客様も全員が暗闇に入ることになる。
舞台上では、実はその暗転中で、大道具が動いていたり、役者がスタンバイしていたりする。
おいらはこの暗転というのが好きで、客席にいると、逆に一体感を感じる。
何も見えないから、視覚を奪われて、別の感覚が立ち上がるようなあの感覚。
そういえば、子供の頃は真っ暗な押し入れに忍び込んで、そんな感覚を楽しんでいたようにも思う。
明るい舞台上には裏がある。
闇の中に導線があって、楽屋があって、そこで静かに出番を待っている。
それまでとは違う風景、違う環境。
明けて今日。
いよいよ開幕。
初日公演。
その前にゲネプロと呼ばれる、まったく本番と同じ芝居を、やる。
やることはまだまだ残っている。
同時進行であらゆることが進んでいく。
帰宅時、音楽の吉田トオルさんと合流。
舞台の話、映画の話を続ける。
帰り際に、頑張って!・・・色々と。なんて。
そう、色々なことを、やるのだ。
抱えきれないほど、荷物を抱えて。
・・・と、ここまで書けば、大変そうだと思えるかもしれない。
でも、いや、大変は大変なことがたくさんあるけれど。
それを一瞬で溶かすような瞬間が待っている。
それは、お客様がそこにいることだ。
舞台俳優だけが知ることのできる、あの拍手。
それが待っているのだから、何も大変でも何でもないのだ。
さて。
まずは初日準備をしてから家を出よう。
いよいよ始まる。